思うこと 第20話
リーダーのあるべき資質 −その4−
私は週刊誌の日経ビジネスをかなり以前からとっている。3年間まとめて契約すると3万円あまりという安価なことにつられて、ということもなかったわけではないが、それよりもふだん医学関係の書物を読むことが多いため、つい専門バカになりそうで、異分野の情報も仕入れたいという気持ちが強かったように思う。しかし、毎週送ってくるその雑誌を、ほとんど読む暇がなく、よほど目に付くタイトルしか目を通す暇がないのが実情であるが、ただ一つだけ必ず目を通すページがある。それは、「有訓無訓」という決まって1ページしかないコラムで、毎号企業のトップ(CEO)の訓話が載る。昨日届いた本誌のこの欄は、テルモのCEOの和地 孝氏が書いておられた。テルモにメーンバンクだった富士銀行(現みずほ銀行)から常務として赴任されたのが1989年。当時の社長は30年近くトップに君臨し、体温計専業メーカーだったテルモを日本初の使い捨て注射器の製造から輸液剤やカテーテルまで手がける医療機器メーカーに脱皮させた功労者。しかし、長期のワンマン経営で、役員や社員は何か失敗したり目標を達成できなかったりすると即クビの状況の中で、指示されたこと以外は何もしないという社風がしみつき、90年以降は赤字決算が続き、企業が瀕死の状況となった中で95年にその社長が急逝し、その後を継いで和地氏がトップとなった。和地氏が企業を再生するために真っ先に着手したのが「企業風土改革」であったという。 萎縮した気持ちで守りの気風が蔓延した状況を改革するために、社員が1人しかいない小さな事業所から営業所や支店をすべて訪れ、「失敗を恐れず、挑戦してほしい。何もしなければ、バランスシートはマイナスにしかならない。」と説いて回ったという。結局、テルモは、蘇り、今日の活況を取り戻した。和地氏は最後にこう結んでいる、「社員が挑戦し続けられる環境をいかに担保していくか、それがトップの大切な役割と意識しています」、と。 私は、このコラムを、「出る杭を打たない」という井形先生の教え( http://www5f.biglobe.ne.jp/~osame/shiba/5-tekizai-tekisho/5-tekizai-tekisho.html )と、pM型>Pm型 論( http://www5f.biglobe.ne.jp/~osame/omoukoto/ri-da-noshishitsu-2.htm ) を思い起こしながら感銘深く読ませていただいた。