思うこと 第151話 2006年10月25日 記
パプア・ニューギニア、ソロモン巡回診療報告ーその4ー
マラリアセンター視察
今朝、国立中央病院視察の後に行ったのが、マラリアセンター(下図)
このセンターは日本の資金で建設されたものである(下図)
ここで、私達はマラリアについて多くを学んだ。
どの蚊でもマラリア原虫を持っているわけではなく、下図の蚊だけが持っていて、
この蚊のうち0.01%が原虫を持っているとのことであった。この蚊は夕暮れ時と明け方の薄暗い時が最も出現するとのことで、日中は出てこないとのこと。下図が原虫のサイクルである。
このセンターはWHOの協力センターにもなっており、統計はかなりしっかりしたシステムがかくりつしていた。2005年のソロモン国の人口が
485,639人に対し顕微鏡で確定診断された一年間の患者総数が 76,762人とのこと。多くの診療所には顕微鏡がないため、発病者の約60%ぐらいしか顕微鏡で確定診断されていないので、年間の発病者は約13万人と推定されるとのこと。50万人に満たない人口で年13万人の発症ということは、何と、毎年4人に1人発症していることになる。ただ、マラリアは風邪みたいなもので、発症してもあまり深刻には受け止めないとのこと。その背景には治療法の進歩があり、約10年前ごろにそれまで行われていたクロロキン単剤療法に25%ほどの耐性が出来、以後、クロロキンとファンシダールの併用療法が行われるようになってからは、耐性ゼロとなっているとのこと。以前使われていたキニーネはどうしているのかと聞いたところ、『キニーネはいまでもいい薬剤であるが、将来、現在の併用療法に耐性が出た時に使うために今は使わない方針』とのことであった。
このセンターでは、3年コースのカレッジ(下図)をもち、ここの卒業生は就職に引く手あまたとのことであった。
このようなセンターが日本の資金提供で設立された事は、意義ある出来事であったと思った。