思うこと 第14話 平成16年5月13日 記
日本古来の芸の奥義「守離破」
日本武道・日本芸道の奥義として語り継がれている「守離破」は医学の道にも通ずると思う。私にこの「守離破」の奥義について教えてくださったのは、かねて私が尊敬していた剣道の達人の方であった。剣道の道は、まず「師の指導を守り学ぶこと」すなわち「守」、次に「師の教えを守り修行を重ねる中でその教えから発展的に離れてゆく、あるいは師のもとを離れ武者修行を行うなかで自分独自のものを得る」すなわち「離」、そして最後に「師の教えを超える境地を開く」すなわち「破」、の「守離破」の奥義ということであった。同じように、弓道でも、茶道でも、「守」、「離」、「破」の3段階を踏む事が求められている。書道における「守離破」も、まず先生のお手本で稽古をする、すなわち「守」、ただし稽古の間に独自なものを作り出す努力をする、すなわち「離」、そして独自の世界を完成する、すなわち「破」、の3段階。日本画でも、同じである。音楽でも、例えば世界的な和太鼓打ちの林哲彦が「ボレロー守離破」というタイトルの曲のCDを出しているように、この世界の修行にもにも「守離破」が重んじられている。医学の修行の道も、「守離破」の姿勢は大切であると思う。まず医学部を卒業後しばらくは先輩医師からの教えに従い修行し、そのうち出張や留学などを通じ次第にそれぞれの持ち味を出し、そのうち、ある分野においては師を超えた活躍をするようになる。教え子が「守離破」を達成してゆく姿をみることは、本当に大きな楽しみである。私も多くの若者が私を超えて活躍する姿を見る幸せを幾度味あわせてもらったことか知れない。
「守離破」追記 平成16年5月21日 記
「守離破」を語るときに最も重要なことを書き忘れていたので、追記する。
それは「努力なしに守離破なし」である。力の限り、血の出るような努力・修行があってこそ「離」が生まれ、「破」に到達する。
言うまでもないことではあるが、あえて追記した。