個人的出来事    第93話     2007年8月12日 記
チベット日本画スケッチ旅行−3〜7日目−その7−
納木錯(ナムツォ)への日帰りの旅


8月1日に林芝に着いてから、8月6日に北京へ移動するまでの5泊6日のチベットでの足跡を下の地図に示す。

林芝からラサまでのドライブは12時間の感動の旅であったが、8月5日の納木錯(ナムツォ)湖への日帰り往復のドライブもまた、それに匹敵する長時間の感動の旅であった。ラサからの往復に使った青蔵公路(国道)は青蔵鉄道(天空列車)と平行して走っている。

この本は、私にとってはタイミングよく今回の旅行の直前の2007年6月30日に株式会社集英社インターナショナルから第一刷が出されたので、出発前に購入し、旅の途中で読んだ。この本を読むと、次にチベットに来る時にはぜひこの列車で来たいという気にさせる、とてもよく出来た本である。チベットに関してはナンバーワンの写真家・長岡洋幸氏とナンバーワンのフリーライター・長田幸康氏の合作である。
この表紙絵の上段の写真の、列車の背景の山脈こそはニンチェン・タンラ山脈で、右端の峰こそが、この日、私達が最も見たいと思っていた7162mのニンチェン・タンラ峰である。 そして、私達は、何と、幸運にもこのニンチェン・タンラ峰の頂上までくっきりと見ることが出来た。(下に、上段の本からの写真と並べて、下段に私が撮った写真を示す。)

我々の走った青蔵公路(国道)と青蔵鉄道(天空列車)とは平行して走っているため、幸運にも、この列車が我々の前を横切る瞬間に出くわし、

あと、スピードをあげて、しばらくは並んで走りることが出来た(下写真)。


私は、当初、この列車に乗ると高山病になるのでは、と心配した。何故かと言うと、下にこの本の36〜37ページの列車の走行地図を示すが、

西寧(シーニン)からラサまでの28時間余りの乗車区間のうち、玉珠峰駅から羊八井駅までの、全区間の半分程が海抜4000メートル以上で、途中、5068メーターの地点を通過するからである。しかしこの本を読んで私の不安は解消した。驚くほど高山病対策が完璧になされていたのである! 標高5000メートルでは酸素濃度は平地の約半分。いかなる人でも酸素なしでは高山病から免れまい。だが、なんと、天空列車はカナダの航空メーカー、ボンバルディア社の技術が用いられ、高地を走る時は飛行機のように常に与圧されているのである! しかも、この酸素濃度が平地の約8割に保たれていて、ラサに着くまでに高地に体が慣れるという配慮までなされている。万一、酸素がもう少しほしいと感じた人には、ボタン一つで酸素供給装置が作動し、自由に酸素を吸入できるようになっている。これだと、完璧で、何の心配も要らないといえる。
この本には、天空列車の窓からの景色が満載されているが、今回の旅行では見ることの出来なかった景色も多く、ぜひ、いつの日か、私もこの列車に乗りたいと思うことであった。
さて、天空列車の話はここまでにして、ラサ〜納木錯(ナムツォ)湖日帰り往復のドライブで出会った幾つかの出来事と風景の紹介をしよう。
まずは、究極ともいえるスピード違反取締り、

おおよそ100〜150 km おきにこの様な交通定点チェックポイントがあり、ここでは全ての自動車は検問を受けねばならず、

何時、何分にその定点を通過したということを書き込まれ、次の定点でも書き込まれ、距離から平均スピードが割り出され、それが最高スピードをオーバーしていれば罰金を払わねばならない、というシステムである。日本の高速道路に例えれば、高速入り口で時間がスタンプされ、出口での時間から平均スピードが割り出されると言う、大変なシステムである。途中、スピードを出しすぎたと思った場合、検問所が近づくと道路わきに停まって、時間調整をすることも幾度かあった。
もっとも、牛や、馬や、ヤクの群れで通路をはばまれることも、チベット旅行ではよく経験したことであった。

さて、例によって、途中の景色を堪能しながら進み、ここと思うところでは車を止めてもらって、撮影や簡単なスケッチを加えた。何枚かの写真をお見せしよう。
私が、この日見た峰で最も美しいと思ったのは、

この峰で、周囲の風景(下写真)も風情があり、

絵になる風景と感じた。

周囲の山肌や、

のどかな麦畑越しの景色もなかなかのものであった。
さて、目的地の納木錯(ナムツォ)湖には、国道から90度左に曲がり、

ランチェン峠(5132 m) に」向けて登ってゆくのであるが、曲がってすぐより、下写真の様な建物が結構点在していて、

この中に、人は住んでない雰囲気であったため、不思議に思ってこれは何の建物かと訊ねたところ、放牧民と動物達はが冬過ごすための建物とのこと。
ここより、峠までの間に多くの放牧民テントに出会ったので(下写真)、

なるほどと、納得したのであった。
さて、いよいよ、ランチェン峠(5132 m) に着き、そこからはじめて、納木錯(ナムツォ)湖を目にした。

この湖こそは、世界で最も高いところ(湖面は海抜4700メートル)にある湖である。

峠を境に、風景が広々とした感じに一変し、

羊の群れにニュージランドでみた景色を思い出すことであった。
この広場越しのニンチェン・タンラ山脈(下写真)も、

納木錯(ナムツォ)湖越しのこの山脈(下写真)も、

絶景であった。
『あつものに懲りてなますを吹く』の諺どおりの私のこの峠と湖畔での携帯ボンベから酸素吸入しながらの撮影風景(下写真)をお見せして、今日の話の締めとする。』