個人的出来事 第31話        2006年2月18日 記ああ

オーロラを求めてーその9−

アラスカ8日目


 今日、2月18日はフェアバンクスの最終日。 オーロラ観察は十二分に目的を達したので、予約してあった今夜10時から明日の朝3時までの恒例のオーロラツアーはキャンセルし、最後の一日を家内のお供をしてショッピングを楽しんだり、また、ゆったりとホテルでくつろぐことにした。

 これまでの毎日の出来事の記載は、オーロラ観測が終わるのに翌日の午前2〜3時頃までかかったので、当然のことながら旅行記録の記載日は一日ずれて翌日の記載日となってきた。しかし、今夜はオーロラ観察はしないと決め、時間にゆとりができたため、今朝はゆっくりと、時間をかけて昨日の記録を書くことが出来た。
 窓から外を覗くと、凍ったチェナ河の上を車だけでなくスノウモビルも走っている。
 家内のお出かけの準備にがすむまで、まだ時間がかかりそうなので、それまでのひと時、頭に浮かんだ「思うこと」を徒然なるままに書くことにする。(ショッピングなどの記録は、帰ってから、後ほど書く予定)

  私は、今回の旅行で、インターネットのありがたみを、骨身にしみて感じさせてもらった。最初のチェナ温泉での4泊の間、ネットの繋がる環境でなかったので、5日目フェアバンクスのこのホテルに着いて、一日中、無料で、高速ランが使い放題で繋がる事を知って、とっても嬉しかった。 
(もっとも、チェナでは、ネットが繋がらない環境が幸いして、オーロラに集中出来、また、本当の意味での休暇を楽しめたのも事実であるがーーーー。) ともあれ、ネットが繋がって、HPにチェナでのオーロラ旅行の記録をアップし、しかも、メールもネットを通してコンピューターに繋がったので、多くの友人・知人から旅行記を読んだよ、とのメールをいただいた。 旅先から旅行記を発信でき、それに対するメールまでもらえるなんて、本当に感動であった。私の教え子の一人からは、『納先生、今、一連のアラスカ便りを読み(鑑賞し!)終えたところです。「いつか、オーロラを見に行く機会があるといいなぁ・・・」と思いながら「行っても見れるとは限らないらしいよ」という友人の言葉に気をくじかれていたところでした。やはり、納先生は、運命の女神を引き寄せる力があるのですね。素晴らしい写真を見せて頂き、有難うございました。詳しい解説には、本当に臨場感がありました。』との、嬉しいメールをいただいた。 ぜひ、見に行ってほしいと思う。 ただ、幾つか、コメントしよう。イエローナイフにせよ、フェアバンクスにせよ、ぜひ滞在日を三日間ではなく四日間またはそれ以上に組んでほしい。今回の旅行中、何人かの日本人旅行者で、二泊〜三泊の日程で来て、オーロラが見れなかったとこぼしていた人に出会った(もっとも、その人が見れなかったというその日でさえも、私達は粘り勝ちで見たのであったが!)。それから、最近JALが、成田からフェアバンクスへの直行オーロラ・ツアー便を出している。もちろん、この便だと私達が経験したような2回の乗り換えなしで、しかも、より短時間でフェアバンクスまでこれるので、オーロラ鑑賞がこれまでよりも身近になったことになる。しかし、いいことばかりではないようで、この旅行をお手伝いした方から直接聞いたのだが、去年12月末発の直行便は、もちろん300席以上のジャンボ機が満席で(一昨年のJALのオーロラ・ツアー・フェアバンクス便は3便、いずれも満席、昨年〜今年にかけては7便とも全て、これから来る便も含め予約で満席。来期はJALはこれを10便に増やす予定とのこと。実は、私もこの直行便のことを知り、申し込もうとしたのだが、すでに予約で満席になっており、最初からあきらめたいきさつがある)、 便利だからと思って、何も知らされていないお客さんたちはこのツアーに殺到して、わくわくしながら到着してきたとのこと。しかし、フェアバンクスの空港は、ジャンボ機は着陸は出来るが、入管の設備が300人もの人数の入管手続きに対応できるようには、まだなっていないとのこと。国内便で、そしてもっと小型のジェット機で到着するお客さんが殆どを占めているからと思われるが、入管の窓口が4つしかないとのことでである。しかも、この年末便の時は、係官のクリスマス・年末休暇のため、3つの窓口しか係官がいなくて、入管手続きが終了するのに3時間かかったという。例のテロ以来、米国では入国に際してカメラでの顔写真と指紋検査が加わっているので、ことさら時間がかかるのである。もしも、窓口が4つとも開いている時期でも、計算上は2時間15分もかかることになる。年末便の場合、お客さん達が『この入国の手続きでとても疲れた』と言っていたとのことであった。これに加え、私達がお世話になったオーロラ鑑賞ロッジでも、私達の場合4〜6人で実にゆったりと過ごせたが、ここにも、ものすごい人数が押し寄せ、トイレも順番まちの列が出来たという。JAL(または旅行会社)の方も、『このような状況が待っているので、時間の節約をとるか、それともゆったりとした旅を選択するか、よく考えてお選びください』と、あらかじめ説明しておけば、直行便を選んだお客さん方も、それなりの心構えで来るので、腹もたたないだろうと思う。このような説明責任を果たすことは、私達医療の現場においても、極めて大切なこととして励行されていることである。 それから、もう一つ、知っておいた方がいいことがある。例えばJTBの場合、添乗員が最初から最後まで同乗するツアーと、添乗員はつかず、乗り換えや、最終到着場所からホテルまでを日本語をしゃべれる現地の方が担当するツアーの2種類がある。前者の方が、安心感からか、より人気が高いようであった。事実、家内も、出来れば前者をと強く希望した。しかし、決められたスケジュール通りに大勢で行動することは、私は好きでなかったし、出発の日が決められていてること、さらに何より確かフェアバンクス近辺の滞在は最長4泊までしか組まれていなかったため、私は不安がる家内に『納 光弘という最高の添乗員が、しかも付きっ切りで行くのだから、なんの心配もないよ。』と、やや強引に説得して、後者を選んだのだった。これは、大正解だった。 「個人的出来事 第28話」でも話したように、JTBに委託されて我々の面倒をみてくれたアメリカパシフィックツアーズ社(HP http://www.aptoursalaska.com/ )の方々は、完璧な対応をしてくださった。 現地に長く住んでいる日本人の方々がスタッフとして働いているため、現地の情報に精通しており、恐らく、前者の日本からの添乗員よりは現地情報に詳しい可能性が強い。ともあれ、私がもしも再びアラスカを訪れる場合、迷わず後者を選ぶことはまちがいない。
 教え子からのメールで、もうひとつ嬉しい言葉があった。それは、『納先生は、運命の女神を引き寄せる力があるのですね。』の言葉である。さすが、教え子!よく分かっている。 思うこと第40話で紹介したが、“野球の神様”元巨人軍監督の川上哲治氏が、日本シリーズでの9連覇をなしとげたことに関してのインタビューに答えてのひと言、「9連覇を成し得たのは、運がよかったことも確かだが、運だけで達成できるものではない。 “運”の漢字は“運ぶ”とも読めるが、“運”は“運んでくる”ものです。 “勝つ”ことに執念を燃やし、練習、研究、対策の限りを尽くしたからこそ9連覇を成し得たのであって、努力で勝利を“運んできた”のです。」 私の今回のオーロラ観察の成果にも、少しばかり共通するところがあるかもしれない。 ひょとしたら、私の趣味は、ゴルフでもなく、日本画でもなく、“目的に向かって努力すること”なのかもしれない。

 
さて、ここまで書いたところで、家内の“お出かけ”の準備が出来たようである。“お出かけ”の成果は後で書くことにする。
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 今、帰り着いたので、成果?を披露しよう! 昼食の時間だったので、まず行ったのが、昨日アメリカパシフィックツアーズ社の方がトナカイの肉のシチュウがおいしい店と勧めてくれたレストラン、The Pump House。

 私は英語がうまいとは思っていないが、必ず通じると思っていた。私には、手振り身振りの特技があり、その助けで必ず通じてきた。 しかし、今回は通じなかった。 ウエイトレスに“Tonakai Stew please” と言ったが、彼女は不思議そうな顔をしていた。 そこで私の奥の手の特技で、トナカイの角の形を両手で耳の上に作り、もう一度“Tonakai Stew please” と言った。彼女は、“Oh, moose Stew ! Sorry we don't have it.” と言った。 どうやら、私の両手の格好がムースに見えたらしい。 私は、ひょっとしたら、トナカイは英語ではなかったかもしれないと思い直し、メニューを見た。しかし、メニューにはそれらしきものがなかった。ひょっとしたら夕食にしか出ないかもしれないと思い、夕食のメニューを持ってきてもらった。

シチューの文字があるのは“Raindeer Stew”だけであった。なるほど、トナカイは英語では“Raindeer”なのか、と、またひとつ学んだと嬉しくなった。それを注文したところ、昼飯にはこれは出せないと言う。折角、raindeerの肉を食いに来たのだから、何とか出来ないかと言ったら、トナカイ肉のソーセージのサンドイッチなら昼食で出せるとのこと、それを食べて、「トナカイを食べた」と自分に納得させた。
食事中にトイレに行く途中、壁にムース(下写真の左)と、トナカイ(下写真の右)
“と思われる”剥製が飾ってあった。


私は先ほどのウエイトレスを呼び、「左がムースで右がRaindeerですね?」と聞いたところ、「左はムースだが、右はCaribouで、Raindeerではありません」と、「お前はアホか」というふうな顔で答えてくれた。
後で本で調べた結論は、Caribouは野生の“ツンドラトナカイ”でRaindeer”はエスキモーにより食用として長年飼いならされた品種であった。縄文人がイノシシを食用に飼いならして“ブタ”が生まれたのと同じこと、と納得したのであった。
ちなみに、第28話で紹介したトナカイこと、“Raindeer”の写真を再掲する。


 さて、次に行ったのが、これまたアメリカパシフィックツアーズ社の方が「お土産にはサーモンが喜ばれ、私も日本に帰るときのおみやげは決まってこれにしています。スーパーマーケットにも売ってますが、おいしくありません。サンタズ・スモーク・ハウスがおいしい最高の肉を売ってます。真空パックしてあって、日本にもって帰っても大丈夫です。」との薦めに従い、やや遠かったがタクシーで向かった。

写真右奥にはかりの上に私が注文したサーモンが乗っているように、計り売りのシステムであった。ここの店員はまるで愛想がなかったが、右手前の台の上に置いてあるように、みごとなサーモンで、お土産にはもったいないので、自分で食べようと思ったのであった。

 最後にタクシーで向かったのが、Alaska Raw Fur Co.という毛皮屋さんで、実にいろいろの毛皮であふれていた。

黒のミンクの毛皮が3,500ドルで、値段を見るなりその場を離れた。
我々夫婦が最も気に入ったのが、下の写真の黒い小熊の人形であった。

触ると、とてもなめらかで、初めての感触だった。店員に何の毛皮か尋ねたところ、ビーバーの毛とのこと。値札の89ドルの文字を見て、我々は顔を見合わせたじろいだが、2歳になる初孫の顔が浮かび、買ってしまった! 

 ホテルに帰り、のんびりとした時間を、ゆったりと過ごさせてもらい、いい一日であった。
ああ