変容
このCDには金属を原材料としてオウブが創生した3つのライヴ演奏が収められている。
Metalを用いたLiveだから METALIVE なのだが、同時に異化を意味する META の意味を込めて名づけた。
音響により金属をどこまで異化できるか、という挑戦。
しかしその異化は金属の本質を暴露する作業なのである。
金属は音というメディアの中で次々に変容し、やがてはその本質に帰結する。
そんなライヴの記録が、ここにある。
CDのジャケットと盤面を飾るイラストレーションは、怪獣画の第一人者・開田裕治に依頼した。
もしオウブの音響を画像化するなら、どんなものが立ち現れるのか?
そんな好奇心を発端に、自由なイマジネーションで描いて下さいとお願いした。
「変容、あるいは怪物化する都市を描いてみた」と彼は言う。
「かねてから描いてみたかったテーマだ」とも。
私は金属獣のような風貌の怪物が描かれるのではないかと予想していた。
だが、遥かに良い方に期待は裏切られた。
岩石化あるいは怪物化した脳なんてものを想わせる物体がまるで雲のように、あるいは想念のように浮遊する。
隠喩的な2つのビルの、右側の頂点にかかる浮遊物体の一部は記憶を司る脳部位のような形をしている。
都市の記憶が物理的な変容に耐え切れず、分かれ行く情景なのだろうか?
しかし想念の雲と物理的都市は、絶対に切り離すことのできない互いを映し合う鏡同士のように対峙する。
預言書の一頁にでもあるかのようなこの光景は、
実際に開田が西新宿で撮影した像をベースとして構築されたものだという。
想念と物性が完全に分かたれた時、都市は「変質」する。
都市の記憶を自由に遊ばせる、想念の雲。
それが都市という容れ物に寄り添う限り、しかし都市は「変質」するのではなく「変容」を続けて行く。
オウブの演奏において、金属からの抽出音は変容を経つつ金属の本質に帰化する。
開田は自らが都市に注ぐ眼差しをもって、それを画像化した。
避けることはできない変容と、変容することにより受け継がれて行く本質への想い。
京都への想いと重なるそんなものがこのCDを満たしているのだと、私は想う。
ちなみに、開田と中嶋は京都市立芸術大学の先輩と後輩にあたる。
そのことを、最後に記しておこう。
[ 2005年3月6日・脱稿]