文学の部屋

これまでに読んだ文学作品を紹介しています。


土を喰ふ日々 水上 勉

幼いときに禅寺に預けられた水上勉はそこで精進料理を覚えたという。
急な来客で、もてなす材料が無いとき老僧は「畑に聞いて材料を見つけよ」
と言ったそうである。 このような体験から四季を通じて旬の野菜のもっとも
良い食べ方を身に付けた自分の食生活を土を食う日々と比喩している。




海嶺  三浦綾子

天保三年の十一月、音吉ら11人を乗せた宝順丸は米や陶器などを
江戸に運ぶ途中、嵐のため遭難した。数ヶ月にもわたる漂流の間に
乗組員のほとんどは命を落としたが、音吉を初め3人が生き残りアメリカ
に漂着。 その後現地で助けられたあと数奇な運命をたどることに
なった彼らを脚色豊かに書き下ろした大河小説である。



椎名 誠 シベリア追跡

井上靖の小説「おろしや国酔夢譚」によると伊勢の国
白子の船頭、大黒屋光太夫は今を去ること200年前に
漂流の果てにアリューシャン列島に流れ着いたとある。
この小説は著者がその足取りを辿るべく一路ロシアを
旅したときのドキュメンタリー小説である。 細密な歴史
検証と現地でのエピソードを軽妙なタッチで綴っている。



松崎敏弥 天皇陛下

激動の時代に在位された昭和天皇のお人柄を
そのお言葉からしのぶ内容である。
真に平和を愛し国民のためにと願い続けられた
天皇の素顔がここにある。



水上 勉 良寛

著者は良寛について少なからぬ関心を持っていたようだ。
曹洞宗の堕落をきらい越後の草庵で一生を終わった良寛と
臨済宗の寺院で得度したのち、脱落した自分の過去が結びつくの
だという。 良寛の優れた文学作品についての深い書き込み
は水上文学の面目躍如である。 この内容をこのような表現
しかできないことが嘆かわしい。



大庭みな子 オレゴン夢十夜

私は学生時代アメリカに行ったときオレゴン州立大学のStephen Kohl教授の
講義を受けたが、この小説はその一ヵ月後に教授と再会した大庭みな子が
オレゴンでの出来事を日記風に綴ったものである。 教授はその後来日した
とき知多半島に寄り、音吉たちのふるさとを訪ねた。



谷川俊太郎 手紙

谷川俊太郎の詩集である。 もう何も書く必要はない。



長尾誠夫 秀吉 秘峰の陰謀

国の東西を秀吉勢に囲まれた佐々成政は徳川に援軍を求めようと
駿府へ向かうため冬の立山に臨んだ。次々に供の者を失い、
自身も決死の覚悟でザラ峠を越えた。
悲運の戦国武将の運命をドキュメンタリータッチで書き下ろす。



廣田輝夫 飛騨の鬼神 両面すくなの正体

顔が二つある怪物が両面すくなである。
しかし、実際にはこんな怪物がいることは無いわけで
歴史研究科の著者が独自の検証により、この怪物が
応神天皇の皇子、額田大中彦ではないかとの仮説を
たて、謎に包まれた日本古代史に一石を投じている。



北大路魯山人 魯山人の料理王国

天才陶芸家であり、美食家であった著者が自ら主宰する
星岡茶寮経営中にに発行していた個人誌「星岡」に
掲載されていた内容を中心にして編集したものである。
稀有な美的感覚を持った彼は市販の食器が気に入らない
といって40半ばにして陶芸を始め、食器と料理の一体化を目指した。



Richard Fortey 著 垂水雄二 訳 三葉虫の謎

4億年前の地球に闊歩していた三葉虫は古生物のアイドル的
存在である。 硬い殻を持たなかった彼らの化石化はまれであるが
近年、化石が相次いで発見されている。 複雑な構造を持った彼らの
体は進化生物学の欠かせない研究材料で著者の精緻で愛情のこもった
検証により三葉虫の姿が明らかになっている。





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