_______ 店主のひとり言!_______


北海道は良かったな〜

 高校3年の2学期の授業中に友達から『この本読んでん!面白いよ〜』と差し出された
 【佐々木 譲】の【振り返れば地平線】という本。 
 17歳という多感な時期に読んだばっかりに、かなりの衝撃を受けた本かな。
 人生の転機の一つと言ってもよい本でしょうな。
 本の内容は、【モンテッサ】という喫茶店を通じて学生の頃知り合った男2人が、社会人
 になって、北海道の開陽台という360度見渡せるような丘で、満月を魚に酒を飲む目的
 にツーリングに行くのだが、途中女性ライダーも交えながら様々なハプニングが起こると
 いう、少々ハードボイルドっぽいところもある感じの本でしたかな。

             
        写真からして憧れたこの表紙     家を出発して山口県の9号線にての朝焼け 

 それから頭の中は北海道とバイク一色の毎日、大学も決まりバイトをしまくる日々が続き
 念願のSRX400も購入し、大学生になっても授業中は北海道に行く為に買う物リストとか
 をノートに書き、購入したら消し込んでいくという楽しい日々。
 7月の夏休みに入るといよいよ出発の日が近づく。 ドキドキワクワクの日々やったな〜

 初日は朝3時ごろから出発して京都の日本海側の舞鶴港を目指しての初のロングラン。
 本州の9号線をひたすら北へ走り、途中あまりの眠たさに歩道に寝転んだりしてたら、お
 ばさんに『だいじょうぶですか?』と起こされ、何とか夕方にはフェリー乗り場に到着。

 『でかい船やな〜!これで北海道に行けるったい!』1日半かけて小樽港までの船旅は
 退屈だろうと思ってたけど、フェリーの中は同じ思いのライダーが何十人といて情報交換
 やら酒盛りやらであっという間に小樽港へ到着。
 50台近くのバイクがフェリーの中から出て行く様は壮観やったな〜
 初めての北海道に上陸した感想は『でかい!道が広い!空気が違う!』何かここは日本
 じゃないみたいというのが第一印象かな。
 一回目の北海道は7日間の滞在予定で、とりあえず岬めぐりと開陽台が目的。
 泊まりはすべてキャンプと自炊の貧乏ツーリングだけど、それが一番楽しい。
 納豆とご飯にさんまの缶詰が付けば、そりゃもうご馳走のひとつやったね。
 キャンプ場には毎日何十台というライダーがやって来て、毎晩見知らぬ人との交流がある
 んですね。 皆さん人生の先輩なので、ここで色々と学んだ事は多かった気がするね。

             
       どか〜んと真っ直ぐな北海道らしい道        キャンプ場の風景

 次に行く時は絶対オフロードで!という気持ちから次の年にはセローで林道と温泉を求め
 て2回目の北海道ツーリング。
 このツーリングが一番濃かったかな。ありとあらゆる林道をつなぎ山奥にあるような無料の
 露天風呂などを探して入り、山登りやキャンプ場の連泊もありで当初2週間ほどの予定も
 大幅にオーバーして一ヶ月ちょっとの滞在になってしまった、と言うのも北海道から本州も
 ゆっくりツーリングしながら帰ったのも理由の一つやけど。

              
       大雪山の黒岳にキャンプ場の仲間と登山    屈斜路湖近くの無料露天風呂

                  
           たしか阿寒湖近くの林道          トムラウシ温泉へ続く50Kほどの林道

 北海道は広いだけに、色んな表情があって楽しい。だだっ広い平野あり、大雪山や知床
 みたいな奥深い山もあり、『舟歌』でも歌いたくなるような漁港や岬あり、礼文島や利尻島
 もありで、夏だと気候もいいのでどこに行っても、気分もハイテンション気味になってくる。

 林道つないでの走行は気をつけないといけないのは、あまりにも長い林道だったりするの
 でガス欠に注意して計算しながら走らないといけないのと、あとは熊との遭遇だな。 
 幸い実際に遭遇はした事はないけど、一度羅臼山に登山してる時に物凄く強烈な獣の
 匂いがしてきて、その時2人で登っていたのだが2人とも顔を見合わせ、怖くて沈黙はして
 たけど心の中では『出た!!間違いない!』と感じた経験はある。
 たぶんかなり近くにはいたんだろう。 あれはえらい怖かったな〜
 その後、持っていた鈴とシェラカップをガンガン鳴らしながら登った。
 でも一度くらいは野生のヒグマを見てみたい気がするね^^

              
         富良野近くのジャガイモ畑かな?    知床のカムイワッカの滝つぼの温泉

 2回目の北海道から2年後、バイクにのぼせて大学を中退までしてしまった親不孝なあたし
 は3回目の北海道に行く訳でして、このツーリングは『この先どうしたらいいのか』と迷ってい
 るプー太郎真っ最中の青年が、自分探しに旅に出かけたような感じでして^^;
 でもこの頃エンデューロレースに夢中だったのでレースのトレーニングという目標は何となく
 あったかな。 バイクもDT200Rの混合ガソリン仕様とかで行ってたし。

 お金もあまり持ってなかったので、向こうでバイトも探した。冬のスケソウダラに使うでかい
 漁船のペンキ塗りという中々楽しい仕事で、毎日羅臼キャンプ場の張りっぱなしのテントから
 『行って来ま〜す』と通って3ヶ月ほど働いた。 食事もついてた仕事だったから、お金使う事
 もなく、風呂は【熊の湯】という無料の非常に熱い温泉に入っていた。
 仕事が休みの日は、羅臼から中標津の開陽台の【ハイジの家】という喫茶店まで林道をつな
 いで何度も通ってた。  その喫茶店のおかあさんがとってもいい方でね〜
 結局家を出る時は10万も持ってなかったんだけど、帰りは50万ほど貯めて帰ってくるという
 まるで出稼ぎしに行ったような旅やったな。
 まあでも、その資金で新しいレース用のバイクを購入する事になって、後のオーストラリアの
 ラリーとかを走ることに繋がっていくんですけど。

              
         牧場にはカッコイイトラクターが    これはマツダのキャロルの草ヒロ状態

 それからしばらくは仕事の忙しさもあってツーリングはお預けだったんですが、33歳の時に
 10日ほど行った事があるんですけど、10月の中旬という事もあって寒すぎるのと天気にも
 あまり恵まれなくて、キャンプ場に行っても人も寂しげで15年前に行ったあの活気は見られ
 ずちょっと残念ではあったけど、落葉の時期でもあり黄昏に浸るにはもってこいの時期かな。

 今の自分は確実に、二十歳前後に行ったあの旅が財産になっていると思われるぞ。
 あの頃、よく大人の人に 『今のうちしかないよ!そんな旅に行けるのは』 と言われてて、
 『そんな事ないやろ〜俺は年とっても旅に行くよ!』とか思ってたけど、やっぱりその大人の
 方の言う通りやったね。 
 あの多感な時期にどんだけ遊んで、沢山学んでおくか、それが財産になっていくんやな。
 もしこれを見ている10代の方がいたら一言!
 『今のうちばい!いろんな所に旅できるのは!』  あ〜〜俺も年を重ねたって事やろ〜な。