A danger signal



響子と由枝は窓を探した。
「ディックとかスミスじゃないな、今のノック。」
「うん、私も違うと思う。」
窓があった。
ちょうど近くに大きな木がある。
下に人がいないかどうか確認したいが、窓からのぞきこむのは危険だ。
「危ないのはいつものことよね。」
響子が窓の鍵を開けながら、呪文のようにつぶやく。
「高所恐怖症じゃないよな?」
「電柱なら上の方まで上れる!」
それから響子と由枝は向かい合った。
「最初はグー、じゃんけんぽい!」
響子がチョキ、由枝がパー。
由枝は体を少し外に出した。
大きな幹を狙って飛び移る。
ばさ
やや大きめの音がして、由枝は無事幹につかまった。
そして、驚くべきスピードで木を下りていく。
由枝が無事ということは下は大丈夫、ということだ。
響子も由枝のマネをした。
ばささっ
由枝ほどうまくはいかなかったが、何とか大きな枝につかまる。
木を思いっきり揺らしながら降りる。
木から下りると二人は街の中心に向かった。

 街の中心は相変わらず祭りのようだった。
「またね。」
「ああ。」
由枝と響子は二手に別れた。
これだけ人がいれば捕まりにくいであろう。
二人の考えは当たったようだ。
お互いに迷子という状態だが、切羽詰まってこれ以上理論的なことは考えられない。
色々な人にぶつかり、すみませんと何回も謝りながら街を駆ける。
いきなり響子は腕をつかまれた。
万事休す。
後は思いっきり蹴り飛ばすしかない。
「待て!俺だ!」
そう言われて、頭上を見るとディックの顔が見えた。
「ディック!?」
ディックは何か買い物をしていたらしく、紙に包まれたものを持っていた。
「どうかしたのか!?」
「どうかしたのじゃないわよ!怪しいやつが部屋に来たのよ!」
ディックはすぐにわかったらしく、響子の腕をつかんで早足で歩く。
響子は小走りだ。
「スミスのやつも市場に来ているはずだ。由枝も探さないと!」
由枝ちゃんも市場をめちゃくちゃに動いているはずだから簡単に見つかるかな。
響子はそう思ったが案外あっさり由枝は見つかった。
スミスに引きずられている。
「どうなってる!」
スミスは厳しい顔で一枚の紙を見せた。
紙には国家反逆罪と書かれていて、さらに響子と由枝に酷似した似顔絵が描かれており、数字が並んでいる。
「どうもイージェリンも危ないらしいのよ!」
「そうだろうな、二人とも指名手配犯になってる。」
げっ!
響子と由枝の顔色が悪い方面に変わる。
「とにかく、城に行ってみないと何が何だかわからないんだ!」
「わかった、今度はここに来た時の半分くらい行くぞ、何か布を巻いて顔を隠せ!」
スミスが荷物の中から薄い布を二枚出した。
「持つものはスミスだよな。」
「ほざけ。お前も自分の荷物くらい整理しろ。」
ディックとスミスが軽口を叩いている間に、女の子二人は布で顔を隠す。
それを確認してから、四人は歩きだした。
END





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*atogaki*
由枝はもしかしたら昔やんちゃだったのかもしれません。
響子はたぶんやんちゃとかではないと思いますが。
大変なことになってきました。
書ききれるかな、全力でがんばってみます。