A sudden summons



ウリュウまでの道のりは長かった。
ディックもスミスも大してお金を持っているわけではないので、むやみに有料の交通機関を利用できない。
そこで徒歩、ということになったが、道が整備されているということだけが好材料だった。
つまり、ウリュウまでやたらと遠い。
「いつまで歩くの?」
響子が前を歩く男性二人組に聞くと、二人とも呆れたようだった。
「何回目だ、その質問。お前の国じゃ全然歩かなかったのか?」
「鉄道と地下鉄があるもん、ここまでは歩かないわ。地下鉄二駅分くらい歩いてる気がする。」
由枝もつらそうだった。
「いや、鉄道一駅分かもしれない。」
「いいさ、ウリュウには安宿もあるから、二部屋とってこいつら転がしとけばいいだろ。」
スミスがすっぱりと言う。
そして、結局は徒歩。
イージェリンのことも考えながら歩いているが、いい案は思い浮かばない。
「一応言っとくが、ウリュウは交易の街だ、はぐれるなよ、再会できないだろうから。」
ディックが振り返る。
自分の切った髪が満足なのかちらりと響子の髪を見る。
「交易、ってことはけっこう何でもあるってことよね?」
響子が足を引きずりながら、尋ねる。
「確かにウン千億の宝石から、売れもしないみやげ物まで何でもあるな。」
「宿も安宿から高官が使うような宿まである。」
平然と歩いているディックとスミスが答える。
「何か打開策を見つけられるかな。」
それはわからない。
誰も答えることができない質問。
四人はひたすら歩いて行った。

 確かにウリュウはすごい街だった。
街全体が祭りのようだ。
「はぐれるなよ。」
ディックが響子の手首をつかむ。
由枝も好奇心あふるる目で歩いているため、スミスが手首をつかんでいる。
香辛料やら香水の匂いがごちゃごちゃになっている街は何でもありそうだった。
「王都からも近いからな、変なこと言うなよ。」
「言いたくないけど、こっちではわたしは常識知らずだから、よろしくね。」

 宿はあっさり決まった。
ディックとスミスがよく利用する宿らしい。
顔が利くため、安くしてもらえるようだ。
二人部屋を二部屋にしてもらったらしい。
響子に鍵が渡される。
響子と由枝は部屋に入って少々驚いた。
安宿と言っていたが、掃除が行きとどいていてベッドも古いだけで整えられている。
なぜかダブルベッドだ。
ばさ
響子がベッドに倒れこむ。
由枝も続く。
「あー、疲れた。お金と鉄道って大切ね。」
「ないとやっていけないな。」
「イージェリンのこと、何かいいこと思いついた?」
響子が目をつぶって言う。
「いいや、何も。こんなときに役に立たないなんて、受験勉強が泣くな。」
由枝も目をつぶっている。
響子はふらふら部屋のカギを閉めて、またベッドに倒れこむ。
寝息が部屋に静かに浸透していった。
「聞こえますか、キョウコ、ユエ。」
誰だっけ、この声。
知っているような知らないような。
「聞こえているのですね?わたくしを城外に連れ出して下さい。」
城外に。
って!
響子と由枝は跳ね起きた。
「今のイージェリンじゃないか!?」
「やっぱそうよね!何があったの!」
コンコンコン
部屋の扉を叩く、不吉な音がした。
END





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*atogaki*
ウリュウに着いていきなりです。
何でもあるから何を起こすか、書いてる方もわかりません。
登場人物って勝手に動くものなんですね。