An extra:An ex-genius



金髪碧眼の男性がとある部屋の近くの壁に寄り掛かって立っていた。
「ディック、一言言いたかったんだろ?言えたか?」
廊下を歩いてきた黒い髪に赤い目の、長身の青年に声をかける。
「言い方を間違えたかもしれない。響子のやつ涙ぐんでた。お前に任せりゃよかったな。」
「お前な、気になる女には丁寧に話すもんだ。」
「スミス、俺はそこまで口がうまくない。お前の口でも借りたい。」
ディックはため息をついた。
「おいおい、元上級外交官が何を言う。口が武器。」
ややうつむきかげんのディックの髪をスミスがくしゃくしゃといじる。
「お互い、国をかけて話し合ったこともある仲だろ。おれもお前も天才と呼ばれてた。」
「懐かしい。お互い上級外交官でいることが嫌になって、タイミングそろえて辞表を出したな。」
二人はクスクス笑った。
その時の二人はまるで子供のようだった。
「ろくに就職先が決まらなくて傭兵になった。もう昔取った杵柄ってやつでさ。」
スミスが笑うとディックも笑う。
「そうそう、外交官でも武術の試験があったから、それにすがってやってきた。」
「ほー、聞いたぞ。」
若い女性の声で、男性は振り向いた。

 そこには黒い髪を伸ばした少女と肩くらいまでの少女がいた。
「途中から聞いちゃった。上級外交官かー、それは考えたことなかったなー。」
目を少し腫らした少女がいたずらっぽく、青年たちを見る。
「私たちの国では外交官は貴族のようなもので入れる人間は決まってるんだ。」
髪の短い少女がまじめに発言する。
「えー、どこから聞くべきか。いつから聞いてた?」
スミスが尋ねると、少女たちはにやっと笑う。
「「国をかけて話し合ったことも」くらいから。」
ディックはホッとしたようだった。
「それで仲がいいんだ。親友っていいよね。」
響子が笑う。
よかった、立ち直れたみたいだ。
ディックは心底安心した。
響子は由枝の首に腕を回す。
「わたし達も親友に近いわよ。同じ所から来たし。」
「そうだな、じゃ親友といこうか。」
子供っぽいのか大人っぽいのかよくわからない少女たちは笑っている。
しばらく、楽しい話をしてから若い四人組は解散した。
END





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*atogaki*
実はディックやスミスもできるやつであることが判明。
さて、口周りのいい人を書けるかどうか、がんばります。
響子も由枝も達者なところあるから、気は合いそう。