The talking-to from a surprising person



占領した別荘にイージェリン達の軍が入った。。
その中の二人部屋の寝室で。
「そうか、響子は浮気相手の男の子供で自分も殺されかけたのか。」
由枝は響子の話を聞いていた。
「さんざん嫌がらせされたもの。で、東大に行って見返そう、って思って。」
「そうか。」
由枝は大きくうなずいた。
「すまないが響子の気持ちは私にはわからない。どう言えばいいのかも正直わからない。よかったら、私の動機でも聞くか?」
「あっ、知りたい知りたい!」
響子がいきなり元気になる。
「うちの母はケンブリッジ大卒だ。」
すらっと由枝が話す。
響子の目が点になる。
「父も同じ。従兄弟とかもマサチューセッツ工科大とか有名どころが並ぶ。」
「ふええ、すごい一家だね。一族、って言うべき?」
「兄も姉も東大卒、学部は違うが。」
由枝がさびしそうな顔をした。
「母は聡明な人だったそうだ。」
「え?なんで過去形なの?」
「若年性の痴ほう症なんだ。もう子供のことなんか思い出せない。」
響子はじっと由枝の顔を見た。
「だから、育ての親は兄と姉みたいなものだ。五歳以上年が離れているから余計に。」
「でも、お父さんはどうしたの?普通、お父さんが面倒みない?」
響子が不思議そうに首をかしげる。
「父は、大企業の代表取締役だ。子供の面倒まで見る暇はない。」
「大企業ってどこ?」
「父にそれを言うのは止められている。誘拐などのリスクが大きくなるからな。父が代表取締役だとまともに言ったのは響子が初めてだ。」
「びっくりした!由枝ちゃんってお嬢様なんだ。それにしても、由枝ちゃんってお姉さんみたい。」
由枝は苦笑いした。
「実際に弟もいる。もっとも、おとなしいやつだからあまり困ることはないな。」
「いいな、うちの従兄弟なんか不良に片足突っ込んで、わたしに偉そうな態度をとるわよ。もっともケンカならわたしが勝つけど。」
二人で笑う。
「イージェリンがそろそろ起きてくるかな。」
コンコンコン
ドアからその音が聞こえた。
「はーあーいー!」
「ディックだ。すまないが響子と二人にしてくれないか。」
「わかった。」
「え?」
由枝はあっさりドアを開けディックと入れ違いに部屋の外に行く。
ディックと二人っきりになる。
「なあ、お前、最高学府に行くって言ってたよな?」
ディックは立ったまま話をし出す。
「それでどうするんだ?」
「それでって?」
「卒業後。」
「もちろんエリート官僚に」
「無理だ。」
ディックは断言した。
「高官の身辺調査は厳しい。お前の身分は微妙なところなんだ、エリートは無理だ。」
「何よ、見てきたみたいに。」
「体験したさ。」
ディックの発言に響子はこれ以上になく目を見張った。
「俺はお前みたいな過去もないから、一次はあっさり通った。」
「で、二次で落ちたの?」
「落ちてたらこんなとこにこないさ。全部合格、見事高官になった。」
「えええええ!!あんたが!?」
「ああ。ただ高官になったところでどうしようもない、思い知った。」
響子はディックをまじまじと隙間がないほど見た。
「しかも、一族郎党俺の給料にたかってきやがった。俺が受け取った給料は昼飯と夕飯代かつかつ、あとはみんなにとられた。」
「もしかして、ディック、それで高官やめたの?」
「そうだ。上司の権力争いと俺の給料をぶんどるやつらにうんざりして。」
響子は黙った。
「よく考えろ。何が自分の最良の道なのか。俺が言いたかったのはそれだけだ。」
ディックは部屋を出て行った。
響子はあぜんとしたまま部屋に残された。
END





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*atogaki*
人生の枠から外れかかった人が増えてきたような。
というより、枠から外れさせられた人かな。
説教くさい回ですみません。