ある春の日の深夜。
少年一人と三人の青年が居酒屋で食事をしていた。
「ちょっと、フリスク、何か今日お酒飲むペース速くない?」
少年がもっとも大柄な青年に話しかける。
「いんやあ、そーんなに飲んでねぇ。アーク、お前こそジュースの飲みすぎじゃないのか?」
やや女性的な顔の青年は眉をひそめた。
「あー、酔ってるな。ディトナ、お前も送ってやるからそろそろ帰るか。」
そう言われて残る一人の青年は無表情に頷いた。
「フリードリヒ、僕も頼める?明日から三日間中間テストでね。」
「構わないが、明日テストがあるのに今日よく来たな。」
「ディトナの誕生日だもん。中学校に入って初めてのテストだけど大丈夫でしょ、多分。」
「おー、そんらに自身があるのか。」
「はい、酔っ払いはさっさと帰ろうね。」
こんな話をしてから、四人はフリードリヒの車に乗った。
そして今。
車が二台しか通っていない高速にて。
衝撃的な音がして、自動車の後部座席の窓ガラスにひびが入った。
「フリードリヒ、後ろからやばいのが一台来てる!」
アークが言うと、フリードリヒは青ざめた。
せっかくの新車が台無しになろうとしているのだ。
当然の反応だろう。
「拳銃か!警察に連絡できないか?」
後部座席の右側に座っているディトナが無表情に窓を開けながら、人ごとのように言う。
「ナンバーは隠してる。でもあの車は見覚えがある。狙われているのは多分私。」
ディトナは懐から拳銃を出し、窓から少し身を乗り出して撃ち返す。
「おい!警察呼べなくなるだろ!ああ、くそっ、新車だぞ!」
フリードリヒが嘆いている間に、アークも隠し持っていた拳銃を取り出した。
サイレンサーなどのアクセサリは付いていないが、10歳の誕生日に手に入れた思い出の一品だ。
「フリードリヒ、安全運転よろしく!」
そう言ってから、窓を開ける。
ディトナは弾が切れたらしく、また弾を銃に込めている。
「何が安全だ!今の状況でどうしたら安全運転になるんだ!」
「向こうから撃ってくる弾がタイヤに当たらないように、って意味だよ。」
自動車のスピードが100km/時を超えていることをこっそり確認して、アークは言った。
そして、こちらも窓から少し身を乗り出して撃つ。
「そういえば、フリスクは?」
早くも弾が切れたので、アークがフリードリヒにたずねる。
フリードリヒはそういえば、と助手席に座った大学の友人を見た。
フリスクは頭を上下に動かしながら寝ているようだった。
安らかな寝息が聞こえてくる。
「くそ、慌ててるのはオレだけか!」
言いながら、フリードリヒは車のハンドルを大きく動かした。
軽いGがかかり、車が別の車線に入る。
「ナイス!フリードリヒ!」
キキキキィ
甲高い音がした。
どうやらディトナが相手の車のタイヤを撃ちぬくことに成功したらしい。
後はまくだけだ。
「それにしても深夜で人がいなくてよかったね。」
「全くだ。おい、フリスク、起きろ!」
起きろと言われても、フリスクは安らかな寝息をたてていた。
数日後の昼間、アークは中学校の校舎内を歩いていた。
小学校の頃からいつも成績はトップだったので、今さら大きく成績は下がらないと思うが、念のためだ。
1年1組の教室の外の壁には1位から100位までの生徒の名が載っていた。
アークは自分の名前が1位のスペースに書かれているのを見て、息をついた。
テスト前日がちょっとハードだったが、点はとれている。
これで誰にも文句は言われまい。
アークは迷いながら自分のクラスに戻っていった。
END
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*atogaki*
久しぶりに書いたので、文体が変わっちゃっておもしろくないかも。
苦情はいくらでも承ります。
なぜかB-DASHを聞いていて思いついた一品です。
大学生最後の日に書いた小説になるんだよな・・・感慨深いかも。