古い恩人



そういえば。
「フリスクって秋生まれだっけ。誕生日プレゼント用意しなきゃ。」
アークが数学の勉強をしている間にいきなり言い出した。
広い和風建築の家の持ち主がアークだ。
「あれ、そうだっけ?オレ様もしょっちゅうあの人の料理食ってるからな。オレ様も準備しなきゃ。」
赤毛の少年がのる。
他に座っていた友人たちも騒ぎ出す。
「秋生まれなだったのね。私もお料理しょっちゅう出してもらってるから何か差し上げなくちゃ。」
「あの人にはさんざん世話になってるしな。オレこ小遣いじゃ5000円が限度だな。」
そこでアークが考えながら言った。
「僕は50000円くらいかな。」
そこに座っていた全員が驚いた様子だった。
「え?そ、そんなに?」
「言いたかないけど、かなりお世話になった上、今でもお世話になってるから。」
アークはちょっと思い出していた。

 アークがまだ5歳くらいの頃。
アークはたまにしか帰ってこない母が大好きだった。
添い寝をしてくれるのが一番好きだった。
あまりうまいものではなかったが、母の料理も好きだった。
なのに、警察が大勢やってきて、アークは混乱した。
母との思い出の品々を段ボール箱に詰める警察官に抵抗した。
そこに現れたのがフリスクだ。
そのときにはフリスクとは顔をあわせたことが何回もあるし、友達だと思っていた。
その頃から腕力の強かったフリスクが5歳のアークを抱いて、警察のいない部屋に連れて行った。
「お母さんはもうしばらくは絶対に帰ってこない。」
フリスクが言うと、アークは泣き出す。
「俺がしばらくこっちに泊まるから、お母さんじゃないけど我慢してくれ。」
その日から、フリスクはアークの家にいた。
今思えばホモ臭いが、添い寝までしてくれた。
不器用な男の声で子守唄を歌ってくれた。
さらに、フリスクは中学校の帰りにすぐアークの住む邸宅に来てくれたらしく、さあご飯作るからな、などと言っておいしい料理を作ってくれた。
時々、フリードリヒも来るようになった。
フリードリヒはアークを見て、寂しそうな顔をしていると思ったらしい。
二人が同級生を誘ってマージャンやらポーカーを子供のアークに教えた。
その頃からポーカーに異常に強かったアークは彼らによく頭を撫でられていた。
今なら考えられないことだが。
三ヵ月後。
フリスクが特注したらしい、やや大きめのテディベアとオールドバージョンの本をくれた。
そして、怖くなったらクマさんに抱きつけ、楽しくないときは本を読んで、俺は帰るから。
そう言ってフリスクはアークの家にいるうちに溜まってしまった品の数々を持って帰った。
オールドバージョンの本は、ペーパーナイフがないと読めない本だった。
ナイフで、閉じたページをべりべりはがしながら読むと、不思議と心がわくわくした。
その本はいまだにとって置いてある。
光の当たらない本棚に。
怖いときや寂しい時はテディベアを抱きしめた。
実の母より優しかったという記憶がある。

 アークは思い出のページを閉じた。
「僕は今度デパートで探してこようかな。プレゼント。」
「オレ様も混ぜてくれ。大した金は出せねえし、アークと共同にしたいからな。」
「あ、それ、私も混ぜて。」
結局、100000円近い金が動きフリスクへのプレゼントは・・・・・・・・・何になったかは内緒だ。
フリスクと過ごしているときにおねしょをした回数といっしょに。
END




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*atogaki*
かわいい雛鳥のようなアークが出ました。
面倒見のいいフリスクまで登場。
ありえないような話でぶっとんだかもしれませんが、それはそれで。
この段階のアークかわいいな。