誰の手料理なら?


現在、21時30分。
塾の全ての講座が終わる時間だ。
黒い髪で濃い茶色の目をした少年は溜め息をついた。
数学と英語は大人に負けないくらいできる自信がある。
しかし、国語、特に古典になると話は変わる。
「あー・・・・・・」
空気を吐いて、少年は机に突っ伏した。
もうすぐ迎えに来てくれるはずだ。
「アーク、帰ろうぜ!」
横に淡い金髪の少女を連れた、赤毛の少年が黒い髪の少年に話しかけた。
「ダグ、リオン、待ってたよ。」
アークがそう言った。
「お前のとこはどれだけ宿題でた?」
ダグラスが明るい声で尋ねた。
「古典・・・・しかも漢詩がいっぱい。」
アークはうんざりと言った。
古代の中国の詩なんてどうでもいいじゃないか。
そんなものより現代の中国語をやればいじゃないかと毎回思う。
「あれ、ダグ眼鏡変えた?」
ダグラスはフフン、と得意げだ。
眼鏡のフレームはスポーツカーを見ているような赤、しかもチェック模様が入っていた。
ダグラスが赤毛だからか、よく似合っている。
「誕生日に買ってもらったんだぜ。いいだろ、スポーツカーみたいで。」
「ダグったら・・・・。」
淡い金髪の少女が呆れ顔になった。
「嬉しいのはわかるけど、やたら自慢してない?」
「リオン、なんて事を言うんだ!」
いきなりダグラスは胸を張った。
「フレームだけで90300円したんだぜ。」
「マジ!?」
「ホントに!?」
リオンも値段は知らなかったらしく声を上げた。
そこにアリストもやってきた。
「アリスト!ダグがフレームだけで90300円もする眼鏡買ったんだって!」
アークが言うと、ダグラスは軽くアークの頭をこついた。
「俺様が自慢するところだろ!」
「う、ごめん。」
そんなことを言っているとアリストが笑う。
「気をつけろよ、強盗にその10万以上もする眼鏡とられないようにな。」
ちぇっと言って、ダグラスは黙った。
「一応聞くけど、うち寄ってく?」
「あー、俺様は人にめちゃめちゃ勉強させといて夜食一つ作ってくれないババアに勉強してる様を見せ付けつけるために帰る。」
「じゃあ、私も帰ろうかな。」
ブーブーブー
アークの携帯電話のバイブレーションが鳴った。
「あれ?フリスクからだ。」
そう言うと三人の顔色が変わった。
「ええと・・・・「俺んとこ権力持ちのやかましいジジイが来てるからそっちに避難していいか?代わりに夜食と朝飯作ってやるから。」だって。」
ダグラスがつばをごくりと飲み込んだ。
「やっぱ、アークの家に行く!フリスク兄貴の手料理すげえうまいからっ!」
リオンも上品に微笑んだ。
「私も行くわ。ダグラスが行くなら。」
アリストも大きく頷いた。
「俺も行く。他のヤツにもメールで知らせるぜ。」
こうして、その夜のアークの家は10人以上の人間が集まり、わいわいと勉強会が始まるのであった。
ダグラスの眼鏡自慢も続いたことはしっかり明記しておきたい。
END




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*atogaki*
眼鏡屋からのダイレクトメールで思いついた話です。
もちろんフレームだけで90300円する眼鏡も実在します、はがきに載ってたなかで一番高かったです。
あっこれ欲しいと思った眼鏡は86100円でした。
詳しくはwww.obj.co.jpでどうぞ。