ナグラレレバダレデモイタインダヨ



失う日 近く感じるあの頃



 黒い少年は迷惑そうに布袋を持っていた。
一方、銀髪の少年は楽しそうに布袋を持っている。
「あのさ、デュリー、何でこんなに買い物する必要があったの?」
デュリーは楽しそうに答える。
「なんでって、新しいマシンを作るためだ、当たり前だろ?」
黒い髪の少年はため息をついた。
「で、今度は何作るのさ?」
「アーク、聞いて驚け、懐中電灯だ。」
「驚けないよ。ありそうな話だし。」
アークは肩をすくめた。
そんなこんなで楽しげな会話はしばらく続いた。

 ちょうど警察署の前に来たとき。
警察の制服を着た警察官が何人かこちらに近付いてきた。
制服はきれいで警察の給料のよさを思い知る。
「ちょっと待て、このガキ。その袋の中を見せてみろ。」
別に断る事情もないのでアークとデュリーは袋の中身を見せた。
ばらばらと素人目には何がなんだかわからないものが大量に出てくる。
「あとは、お前!」
警察官はアークを人差し指で指した。
「武器をよこせ。」
アークはひやっとした。
「持ってませんよ。」
とにかく否定する。
ここは逃げ切るしかない。
デュリーが注目を浴びて、アークがその隙に魔法でアジトに帰ればいい。
さっそく、アークがデュリーにアイコンタクトでそういおうとすると、腹を蹴られた。
がばがばの服を無理矢理脱がされる。
「ほうら、持ってるじゃねえか。しかも、暗殺道具まで。」
そう言って警官の一人がアークの腹を蹴った。
いくら兄に戦い方を教わっていようと無駄だった。
デュリーも蹴られる。
アークがデュリーをかばおうとすると、警察官がアークのしりを蹴った。
更に顔面も蹴られる。
魔法を使うまもなく蹴り飛ばされる。
アークはデュリーをかばおうと必死だった。
デュリーにちょっとでも近付こうとすると蹴られる。
その後はあまり覚えていない。
全身を強く殴られて意識がもうろうとしてしまったようだ。
アークはただただ殴られるデュリーの姿だけを覚えていた。

 目に光が当たる。
何だろう、わからない。
目を開けるとアークはアジトとは違う場所にいることに気付いた。
「アーク!大丈夫か!?」
ダグラスが青い顔をして、言った。
「そ・・なことより、デュリーは・・・?」
アークは少し体の角度を変えた。
少年くらいの大きさのものの上に白い布がかぶせられている。
その意味は明確だった。
「ま・・もれなかった。」
兄がにらむようにデュリーの遺体と思しきものをにらみつけていた。
「ごめん・・なさい。僕・・出てくから・・。」
「アークの責任じゃないわ!」
リオンも蒼白な顔で言う。
「オレたちは・・・まだ子供だから何もできないこともあるんだ・・・・。」
アリストも目を伏せ気味にして言った。
そこに白衣を着た無免許医らしき人物がきた。
「お前さんも複雑骨折に打撲がひどいんだ。休みなさい。」
「でも・・デュリー・・が。」
「かわいそうに・・・・ここに来た時にはもう死んでおった。」
腫れ上がったアークの目から涙が流れた。
「僕が・・・しっかりしていれば・・こんなことには・・・。」
「確かにそうだな。」
兄が口を開いた。
「「れば」な。世界中どこを探しても「れば」の世界などない。今は養生してそれから反省しろ。」
子供たちは、全員涙を流し始めた。
もう、帰ってこないんだ。
あの声も、考えも、楽しそうに機械を作る姿ももうないのだ。
医師が複雑な目つきで兄を見た。
兄はこっそり歯軋りしているようだった。

 後日。
アークがいんちき病院から退院したときには、ダグラスたちがデュリーの遺体は前のアジトの土に埋めたそうだ。
力不足。
甘かった。
もっと早く手を打つべきだった。
アークは前にも増して勉強するようになった。
今まで大して興味を見せなかった数学や理化学、国語も勉強するようになり、兄との特訓も厳しくやるようになった。
魔法学も理論をいくつも考え出しているらしい。
それが「反省」なのかどうか。
知るものは誰もいない。
結論はどこにもないのだから。
END




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*atogaki*
暗い話になりました。
デュリーのこともっと書けばよかったかも、と少し思う。
アークががむしゃらになりだすのはこれからです。
ついでに言うと・・・・まだ悲劇がある予定です。
多分コレ読むとわかると思うけど。
向こうから見たこっちというお題は、向こうから見たらガキの一人や二人死んだってどうでもいいという意味で。