脱出日記 遠く感じるあのこと



天空大陸上のスラムのある場所。
そこに青年一人と三人の子供がいた。
「私が先導する。しんがりは任せたぞ、アーク!」
青年が言うと、そんなこと言うまでもない、と言わんばかりに頷く。
青年が脱出口に消える。
二人の子供もそこに消える。
「おい!やろうども!ブレスレットがいるぜ!チャンスだ!」
自分に賞金がかかっていることぐらい知っている。
ブレスレットと呼ばれた少年が脱出口に入る。
それを追って男たちが何人か突撃した。
ばしゅッ
嫌な音がした。
突撃した男たちのうちの何人かが細かく切り刻まれる。
「鉄糸だ!誰か切れるやつはいねぇえか!」
まさか本当に鉄糸で本当に細切れになる人物がいたとは。
ブレスレットは思った。
鉄糸はあくまでも通り抜け禁止程度のものであって敵を殺す道具ではない、と教わった覚えがあるのだが。
見とれてもいられない。
ブレスレットも仲間の後を追って逃げる。
手袋をしないで鉄糸で少し手先を切ったが、この程度ならどうってことない。
ぱあん
拳銃を撃つ音がした。
やっぱり突破してきたか。
ブレスレットは即魔術を発効させた。
これでもう弾は当たらない。
・・・・やはり、彼らを生かしておくのは危ない。
ブレスレットは立ち止まった。
追跡してきた男たちが色めき立つ。
「行け!首をもぎ取れ!」
リーダーらしき男が叫ぶ。
首をもぎ取られるのは嫌なので、ブレスレットは深呼吸した。
「氷の爪!」
そして叫ぶ。
リーダーもろともブレスレット以外のものが凍てついた。
さ、みんなに追いつかなきゃ。
ブレスレットは走り去った。

 今度のアジトは天井が付いているだけで壁のない、まさしく雨を防ぐだけのものだった。
「まったく、冗談じゃない、ブレスレットなんて呼ばれるなんて。」
ブレスレットはかろうじて残っていた床に座って、言った。
赤毛の少年はブレスレットの右手首を見る。
「・・・・そんだけの数、右手につけてれば間違いなく特徴になるぞ。」
「でもこれ、外せないから。」
見せたくない、誰にも。
消すことができないしろものを。
「問題はさ、いつの間にか兄さんより僕のほうが賞金首としての価格が上がってるってとこなんだけど。」
「そりゃあ、いつもお前がしんがりだから目立つから、じゃねえか?」
「まあ、追ってくる者は消し去ることにはしてるけど。」
「そこら辺が賞金首らしい発想だな。」
ブレスレットはため息をついた。
「兄さんの方が強いのに、何で僕だけ評価があがるのさ!」
少年の無駄な言葉は太陽の光に吸い込まれていった。
END




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*atogaki*
ごめんなさい!アークの特徴書くの今まで忘れてました!
アークはブレスレットや包帯なんかで右手首を隠しているという設定です。
白昼堂々殺し合いです。
やっぱりアークがとどめさすのが賞金UPの原因だと思うのですが・・・・。
大変ですね、生きていくって。