ニンゲンヲワカツノハ、セイカ、シ
天空大陸上のスラム。
黒い髪の少年は短針銃を目の前の聖職者らしき人間に向けていた。
そして、その聖職者らしき人物も銃を構えていた。
暑苦しいほどの静寂。
男が口を開いた。
「君はなぜ人を殺すのか?」
少年は機械のような瞳で黙って男を見ていた。
「そうだ、我々の仲間にならないか!?神こそが我らをお救いくださる!」
苦しげに男は言う。
それでも、機械のような目の少年の表情は全く変わらない。
「君も人を殺したりしないで暮らしたいでしょう?」
少年はやはり表情を変えなかった。
ただひたすら聖職者を見つめている。
「どうだい?君も仲間に」
「冗談の下手な人ですね。」
初めて少年が口を開いた。
冷たい口調で、今までの全ての口説き文句があっという間にあせていく。
「人間を殺すのは好きじゃないけど、今の状況じゃ文句は言えない。」
少年は北風のようにしゃべる。
「僕は自分で生きていきます。仲間など必要としません。」
応えるだけマシなのかどうか。
少年は人間味の薄い雰囲気で口を開く。
「それに、人間を分けるパターンは一つしかありません。生きるか、死ぬか。」
交渉決裂。
少年と聖職者は動かなかった。
どうすれば相手を殺せるのか。
どれだけ動き、撃てばいいのか。
彼らの論理がしんとした空間に響く。
だん。
聖職者の体が胸の位置から裂ける。
少年は右頬に血の赤い線が付着した。
「あーあ、やっぱり威力が強すぎるね。」
少年はリラックスした様子で、死んだ男の首を風呂敷に包んだ。
「神は、死の奥底にあり。」
少年は部屋を出る直前につぶやく。
死体しかない空間。
少年は最寄りの賞金首と金の交換所に向かった。
END
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*atogaki*
ぐろいアーク第二弾。自分でも書いててアークが一番悪人じゃないか?と思ったし。
幼い頃のアークはどこか一直線で怖いような気がします。
これが削られて、あの明るいアークになるのかと思うと人生わかりませんね。