幸セッテ、何デスカ? ヨカッタラ教エテクダサイ
天空大陸上のスラム街にある一軒の酒場。
そこでかなり幼く見える少年はカウンターでミルクを飲んでいた。
「で、だ。新しいのが増えそうな気配だ。」
酒場のマスターらしき人物が少年に話しかけた。
「政界の混乱もここまでくるとはね。僕も予想しなかった。」
幼い声で少年も返す。
「ほう、もう知っていたか。さすが、賞金首を追ううちに賞金首になった人間のセリフだな。」
少年はミルクを一口飲んだ。
「ふん。僕だってやられるもんか。」
幼い顔には月食のときの月のような自信がみなぎっていた。
マスターは楽しげに笑った。
「で、このリスト、もらっていいわけ?」
「いいぞ、好きにしな。」
そう言われると、少年は賞金首のリストを丁寧にたたんでポケットに入れ酒場を出た。
少年は迷っていた。
政界の人物なので全員弱そうな顔をしているが警備のほどはどうだろう。
少なくとも二大家には手を出してはいけない。
これ以上政界が荒れると財界の歯車も壊れ、こちらも乗り切れないような事態になりかねない。
「ああ、そういえば。」
少年は一人つぶやいた。
依頼を受けたのだが、まだ殺していない人間がいた。
政界の豪華な賞金首に気をとられ、忘れるところだった。
少年はゆっくりと歩く。
崩壊して鉄筋だけが見える建物が続く。
どこの通りだか忘れたが歩いていればそのうち着くだろう。
ほうら、見つけた。
出入り口と思しきところに看板も何もない。
見張りに拳銃を持った二人の男がいた。
激しい音がして一人の男の胴体がぶちきれ、建物に穴が開く。
もう一人の男が少年の存在に気付き発砲しようとしたが、少年の方が速かった。
男の眉間に弾がめり込む。
少年は穴の方から建物の内部に侵入した。
そこは幼い子供しか通れないような狭い通路、おそらく排気口だった。
少年はそこを上り始めた。
訓練なら一回だけやったことがある。
今日は実戦の日だ。
「必ず、目の前に光が見えます。ただ今だけは混沌の渦に巻き込まれているだけなのです。」
男が何やらしゃべっている。
光り?馬鹿な。
底辺から光が見えるわけがない。
天空大陸という箱のそこにある者たち。
それが自分たちだ。
少年は短針銃で壁をぶち抜いた。
コンクリートのみで作られていたのか、壁はあっさり倒壊。
一部の天井が落ちた。
数十人の人間がこちらを見ている。
そして、騒ぎ出す。
ステージの段上になっているところにいる男だけは冷静だった。
「ブレスレットさんですね?」
それを聞いてますます混乱が広がったらしく集まっていた人々は恐慌状態になっている。
「あなたにも光があります。どれだけ血にまみれようと決してけがれない光が。あなたはただ光を見ることができないのです。」
「・・・・サングラスでもあれば見えるかもね。」
ブレスレットの表情は皮肉と疑いに彩られていた。
「光は誰にでも、必ずあります。探すことなど必要ない。あなた自身が光放つ存在なのですから。」
「じゃあ、一応聞いておこうか。僕は幸せになれる?」
「必ずなることができます。」
次の瞬間。
男性の心臓部に大胆に拳銃による一撃が放たれた。
手術して鉄板でも入れられていたら、と心配したが杞憂だったようだ。
死んだ男の言うことには、自分は「幸せ」になることができるらしい。
この業界に入って短いが、よくわからない。
シアワセ・・・・それはもう壊れて二度と戻らないはずだ。
考えながらもブレスレットは動いていた。
持っているいくつかの手榴弾を集まっていた人々に投げつける。
そして、立ち去る。
よくあることだ。
ブレスレットは暗くも明るくもない表情で走る。
教えてもらわないとわからない。
「幸せ」とはどういった状況のことを指し示すのか。
そもそも、それは何なのか。
さて、次はどこの政治家殺そうか。
考えを切り替えて、ブレスレットは闇に消えていった。
END
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*atogaki*
昔はアークも尖ってたんですね。
自信満々だし、そういうところが子供っぽいかな。
とりあえず、全シリアスです。