希望聖




天空大陸上の都市ティカーノ。
その一角にある酒場から三人の青年と一人の少年が出てきた。
「アーク、お前、よくオレンジジュース十杯も飲んでトイレいきたくならねぇな。」
大柄な青年が少々赤らんだ顔で、黒い髪の少年に言う。
「フリスクこそ、結構強い酒飲んでたじゃん。よく言うよ。」
「オレはたいしたものは飲んでいない。」
美青年が言う。
「あ、フリードリヒってそういえばアルコールに弱いよね。」
「だから、菓子類でもアルコールが使われているものは苦手なのだ。」
「私も結構飲んだ。」
「そういえば、ディトナ知らないうちに静かに飲んでたよね。アレだけ気配もなく飲める人いないって。」
緑色の髪の青年が赤らんだ顔で歩いている。
四人は大学寮に向かっていた。
今日は大学寮のアークの部屋に泊まる予定なのだ。
「やっぱいいねー、試験全突破祝宴は。」
アークはそう言ってから空を見た。
星が無数に流れている。
「あれ?今日、流星群の日だっけ?」
他の三人も顔を上げる。
「星が・・・流れている。」
放心したようにフリードリヒがつぶやく。
「すげえな。まず、道の真ん中から外れようぜ。」
フリスクは他の三人を道の端に移動させた。
「ええと、願い事を三回唱えるんだ、と聞いてはいるけど。」
「よし、早速俺も心の中で三回唱えるぜ。」
「オレもだ。酔った頭が回れば。」
それから三人は星を見つめながら黙っていた。
星が次から次へと大量に流れている。
おそらく、流星群を見ている全員の願いをのせて。
アークはあえて何も祈らなかった。
祈ることなど、ない。
猫の手も借りたいほど忙しくても、アークは祈らないだろう。
人生の最後、あの流星に乗って死者の国へ行きたい気はするが、それだけだ。
贅沢など言っていられない。
「よし、行くか!」
フリスクが勢いよく言った。
「願うだけ願ったしな。」
「お前のことだ。星の数だけ祈りを捧げたのだろう?」
「いや、俺の願いはそんなにないぜ。そっちこそ祈ったんじゃないのか?」
「うるさい!」
「猫の手も借りたい・・・・。」
「そういう願い事って叶わないと思うけど。」
流星群ではしゃぎながらアークたちは大学寮へ向かった。
時々空を見つめながら。
たくさんの祈りが交錯する夜。
冷めた目でアークは星々を見た。
天も地も願いことを聞いてくれるほど、暇はない。
幸運は自分のちからで呼び寄せてみせる。
他の面子にばれないようにアークはニイっと笑った。
END




back



*atogaki*
雨といっても星の雨です。
短いのですが、中身が妙に濃いような気がするのはなぜでしょうか。
キラ○キ見て書いただろ、と言われるかもしれませんがその通りです。
天空大陸はより空に近いから星がよく見えそう。