真・怪奇スポット




 天空大陸上の都市ティカーノ。
そこにあるアーガスティン国立大学寮の一室で男4人が談笑していた。
「おっ、ディトナ何買ってきたんだ?」
大柄な青年が言うと、無表情な青年は紙袋から本を出した。
「怪奇スポット21選」と表紙に書かれている。
「あれ?ディトナってそういうのに興味あるの?」
黒い髪の少年が尋ねると、ディトナは少年をじっと見た。
「アークも好きかな、と思って。」
アークは少し考え込んだ。
それから答える。
「いや、あんまり。現実の方がっぽど怖いから。」
そう言われて、ディトナは言葉に詰まった。
少年は幼いころから危険にさらされながら生きてきた。
だから、いろいろなものを見てきたのだろう。
幼い目で。
「お、グレイヤボードも載ってるな。」
人の雑誌を勝手に見ていた大柄な青年が言った。
グレイヤボードくらいここにいる人間全員が知っていた。
「ああ、死体置き場か。老若男女、貧富に関わらず死体はあそこに行くからか。」
美青年が応じる。
「フリードリヒとどっちが先に怖くなって逃げ出すか、なんてこともやったもんな。」
フリードリヒが呆れたように大柄な青年を見た。
「フリスク。あんなところで薪を集めてきて燃やそう、寒いから、なんて言い出す人間は少ないぞ。」
「フリスクらしい微笑ましいエピソードだね。」
アークがにやにやと言う。
「ふーん、久しぶりだし夜中に行ってみるか。」
フリスクが提案すると、満場一致で行くことになった。
ここで断りきれたら男じゃない。
そんな雰囲気もあった。

 馬車を使ってそこに行ってみると、静かだった。
「おー、やっぱ恐怖感をそそるよな。」
フリスクが平然としている。
「死体が怖いようじゃ戦闘応用学科なんて入れないよ。」
アークがすたすたと死体を埋めるための巨大な穴に近付く。
そして、穴のふちで立ち止まる。
「この穴がいっぱいになる日が」
そこでアークの声が途絶えた。
「アーク?」
フリスクが近寄るとアークが必死で右足を引こうとしていた。
アークの近くにある髪の毛だけ残っている骸骨がアークの右足をつかんでいる。
しゃれこうべの口の部分が何やらかんかんと動いていた。
ざわざわ
音がする。
死者たちが動き出す音が。
「くそっ、白銀の炎よ、焼き尽くせ!」
アークが自分の足をつかんでいる骸骨を純白で高温の炎で焼き尽くす。
アークの足の部分は巻き込んで自分の足まで焼き尽くす恐れがあるので使えない。
「逃げろ!」
フリスクがアークを肩に担いで叫んだ。
ディトナとフリードリヒも走る。
ぺたぺた
死体が本格的に動き出したようだ。
様々な形態の死体がこちらに寄ってくる。
馬車を置いてきた地点まで行けば大丈夫だ。
そう信じて、馬車を待たせた地点に行くと。
馬車がない。
つまり、逃げられた。
ぺたぺた
かしゃかしゃ
音は確実に近付いてくる。
数からいって勝てる確率はほぼゼロ。
死体が勝つ率は18金並。
アーク以外の青年たちは、走った。
明るい都市に入ればおそらく死体は入れない。
持てる力全てを使い走る。
まるで長距離走のように。
三人は、やっと都市内に入れた。

 アークはため息をついた。
おそらく一番逃げ足が遅いであろう自分をフリスクが担いでくれたことに感謝はしている。
「オカルトってこういうものなの?」
右足首の骨を必死でひっぱり除去する。
「いや、普通は何もペナルティはないはずだ。幽霊が見えるくらいだろう。」
「じゃ、今日のは・・・?」
「黙っとこう。うそつきだと思われるぞ。」
「それが懸命だな。」
「わかった。話さない。」
4人はそれで同意して、アークの骨取りにかかった。
END




back



*atogaki*
何がスイッチだ!と思われているかもしれませんが、わたくし本人としてはスイッチなのです。
天空大陸の謎に一番近いのはアークですから。
墓がないのはそんな面積を取るものを作ったら居住地がなくなるからです。
余計なことを言い過ぎましたがこれで失礼。