趣向の変化



昔は真っ白な紙が好きだった。
4コマで毒を飲んで死ぬ人を描いたり、剣で串刺しにされた人間を描いたりしていた。
上手だったのか下手だったのか今となってはもうわからないが、とにかくいろいろ描いた。
施設のきれいなステンドグラスや母も描いたりしたか。

 それが今や。
「ああああああ、まだこんなに枚数があるううううううう。」
天空大陸上の都市ティカーノのアーガスティン大学寮の一室で少年は叫んでいた。
「オレは今はじめたばかりだ。それを思えば大した枚数ではない。」
美青年がうつろな目で資料を見つめていた。
コピーされた書類が友人の手から手に回っている。
「それじゃ、資料を見ても何のことだかさっぱりわからん俺はどうするんだ?あー、十回は読んだぞこの資料。」
大柄な青年がため息をつく。
「ちょっと、それわかんないって大問題だよ!今年発表された元素対立表だよ!」
「それって何だっけ?」
大柄な青年が首を傾げると、美青年も呆れたようにため息をつく。
「いいか、フリスク、元素の対立の基礎は地水風火だ。いくらバカでもここまでは、わかるな?」
フリスクが頷く。
「その中にも・・例えば・・・そうだな、水道水を蒸留水にする属性や雲を作って雨を降らせる属性もある。そういうことだ。」
「サンキュー、フリードリヒ。」
そう言うとフリスクはもう一度図を見た。
「・・・・・・やっぱりだめだ・・・・アーク、助けてくれ。」
デスクトップ型のパソコンの前に座っている少年は冷たく言った。
「自分で何とかしてね。僕もまだ3枚書かないと終わらない。」
このパソコンの文書作成ソフトの白が何と目に刺さること。
白い部分が憎たらしい。
「ええと、新属性が8つに廃棄属性が14か。統合が多いね。」
アークが言うとフリードリヒも資料を見ながら返す。
「今年はよりシンプルに、というのが宣伝文句だったな。」
フリードリヒも資料を見たのか、レポート作成作業に入る。
フリスクはまだ元素対立表を必死で見ている。
「あー、あとで助けたげるからがんばって!」
アークが言い終わると同時にピンポーンという音がなった。
誰だか見当がつくので部屋のの入り口を開ける。
緑色の髪をした青年が無表情で、置いていかれた子犬のような雰囲気で立っていた。
まさか。
「アーク、ごめんなさい。元素対立表がどうしてもわからない。」
フリスク2号かい!
特待生なだけにこういうときはやたら頼られて嫌だ。
「フリスクもわかんないみたいだから、僕の分のレポート書き終わったら解説するからちょっと待ってね。」
「おっ、仲間。」
フリスクが言うと地の底をはうような声でフリードリヒが、
「くだらない仲間を呼んでいるな。オレは教えないぞ。レポートを書き始めたところだ。」
などと言っている。
「一応、フリードリヒに面倒をかけないように最善の努力をさせてもらうから大丈夫かもしれないよ。」
「要するに巻き込むつもりだということではないか!」
それぞれのレポートの白紙部分にたくさんの未来が詰まっている。
主に苦労しか詰まっていないが、小さな頃を思い出すと白紙にたくさんの未来が詰まっているような気がしたアークだった。
END






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*atogaki*
アークが親切な上詩人だ!
書いててびっくりしました、アークってこんな面もあるんだ。
それともときメモGSの影響でしょうか。
とりあえず化けの皮がはげないうちに失礼。