天空大陸上の都市ティカーノ。
そこにある大学寮の一室でパソコンの電源が入った。
「オハロー!今日も一日、楽しい日がはじまるぞぅ!みんなー、リミリミのためにが・ん・ば・ってネ!」
甲高い声がパソコンのオーディオから流れ出す。
部屋にあるベッドの掛け布団を押しのけて少年が立ち上がった。
ついさっき起きたという風情ではない。
「リミはね、今日ヮお勉強なんかしちゃおっかなー、なんて。えへっ、もちろんキミのこと」
黒い髪濃い茶色の目の少年は、すぐにコンピュータから流れ出す声を止めた。
寝坊防止のために、パソコンを自動で起動して、この声が流れるようにしたのは少年自身だった。
しかし、予想以上にくどかった。
外では雪が降っていた。
少年は着替え始めた。
もちろん武器も付け替えておく。
手入れもしなくてはならないが、後回しだ。
少年は着替え終わるとインスタントコーヒーをいれた。
ネットワーク上のニュースを確認しつつ朝食を食べる。
この習慣はダグラスやリオンに教えてもらったものだ。
今ではこれをしないと気持ち悪くてしょうがない。
ネットワークを通じて、証券会社にいくつかの銘柄の株を売り買いする指示を出しておく。
もう少し金が貯まったら、金貨に換えておいたほうがよいだろう。
コンピュータの画面には少年の株の売り買いの履歴が表示されている。
名前欄にはアークさま、とある。
いまのところ、5ジェネラル以上の株取引の失敗はしていない。
才能でもあるのかもしれない。
あまりゆっくりしている時間はなかった。
ニュースを全て見終わると、アークは瞬間移動の魔法を発効させた。
着いたのは商店街の一角。
さまざまな洋服や帽子、バッグなどが売られている。
まだ店は開店していなかったが、もう人が並んでいる。
アークもその列に加わる。
ティカーノ市では移民祭の後に、バーゲンがはじまることが多い。
今日はバーゲンに参加するために寝坊はできなかったのだ。
ちなみに雪は起きた頃より激しくなっている。
手がかじかんでバーゲンでロクなものをとれないと着る服がないので、両手をこすり合わせて待つ。
そのうち、人が増えてきた。
朝の10時に近くなるころには店をぐるりと周る程度の長さの列が出来上がっていた。
店員らしき人がちらちらと外を見ている。
店の入り口が開いた。
アークはまっすぐに進んだ。
もちろん、駆け足で。
目の前に値引き30パーセントという札が見える。
アークは目の前のワゴンから少しでもよさそうな服をとっていく。
後ろから押されたり、横に流されたりしつつ、服をとる。
いくらか服を取ると、アークはワゴンの前から離れた。
もう一度、よく服を見直す。
いらない服をワゴンに戻して、会計を済ませるとアークは外に出た。
今日はちょっと商店街を見ていくつもりだ。
いろいろな店で年末セールを行っている。
大きな荷物を持ってふらふらと歩いていると声をかけられた。
「アーク、ここにいたか!」
アークも、アーク以外の人間もその声の発生源を見た。
黒い高級な馬車が止まっていた。
その横にいる人間の髪は赤茶色、ややキツめのまなざし。
「エーデルも来たんだ。やっぱりバーゲン目当て?」
アークは普通のことを言った。
「ふん、そんなことに興味はない!」
エーデルは顔を赤くして言った。
「あっちの通りのグルックスアシュリーとかいい服あるよ。」
「うるさい!」
アークが服を薦めるとエーデルは握りこぶしを振り回した。
「別にいいけどさ。それより何か用?」
「そうだ!ボクと勝負しろ!」
アークはちょっと嫌な予感がした。
「・・・何の?」
「ボクのうちの雪かきを早くできた方が勝ちだ!」
「やだよ、僕にメリットないじゃん。使用人にやらせなよ。」
「だったら、寮の雪かきで勝負しろ!」
はい?
「え?いや、やりたくないし」
「寮の雪かきなら、はした金がもらえるだろっ!メリットがあるはずだ!」
そう言うとエーデルはアークの腕をつかんだ。
「僕には一日中、株をチェックするという仕事が」
「やると言うまで離さない!」
アークはため息をついた。
「わかったよ、やるから離して。」
エーデルの目が輝いた。
「よし、馬車に乗れ、連れて行ってやる。」
アークは馬車に乗せられた。
その後、雪かきは一日中続いたという。
END
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*atogaki*
きんこ芋食べながらこれ打ってます、歯につまります。
何とも微妙なところで終わる話。
でもこれ以上は長くできない気もするし・・・う〜ん、ひょっとしたらまた一部打ち直すかも・・。