二度はない



天空大陸上の都市ティカーノ。
その大学の一角に少年はいた。
少年はいたって気楽そうになべに具を入れていた。
「アーク、おい。」
アークはフリスクに声をかけられた。
「何?」
「何じゃないだろ、今、何入れた?」
「ジャガイモ」
フリスクはため息をついた。
「あのな、カレー作るときは、なべにジャガイモを一個まるまるそのまま入れないもんなんだ。」
「あ、そうなの?」
アークはさいばしでさっとジャガイモをなべから出した。
フリスクの嫌な予感はちゃくちゃくと育っていた。

 そもそも、なぜアークがカレーを作ることになったかというと。
大学の授業で行軍中に料理を作る機会もあるだろうということで、授業でやることになった。
いくつかのグループに分かれて、今日は各班の最後に残った者が料理を作っている。
アークは調理を全くしなかったが、授業なので仕方なく作っている。
先ほどのジャガイモも毒のある芽の部分だけはとってあった。
それくらいはわかるらしい。
半分に切ったジャガイモと計りに乗せれば同じ重さになりそうな半分づつのニンジンがなべに入れられる。
「ジャガイモは半分じゃなくて六等分まず水にさらせ、ニンジンもそれぐらいだ。」
「あ、そうなの?」
そこに特別講師がやってくる。
「フリスクくん、料理している人にアドバイスを与えるのはやめなさい。」
やめたら何を食べさせられるかわからない。
「しかし」
「いいですね。」
結局講師に黙らされてしまった。
アークは着々とカレーを作っていく。
一応まだまともな野菜を入れて、炒める。
そしてその段階でなぜかカレーの板全部をそのまま入れる(本当は半分)。
たまねぎを忘れていたようで、今からたまねぎの皮をむいている。
たまねぎもまるまる2個入れる、根っこ付だ。
もちろん、あくなどとらない。
飯だけは別人が作っているが、同じ班の者全員が恐ろしいものを見るようにカレー候補を見ていた。
最終段階まで忘れていたようで、かなり煮てから肉を入れる。
一応混ぜてはいるが肉のかたまりとたまねぎが大きすぎるためあまり功をそうしていない模様。
水を入れすぎてカレーうどん状態なのも重要なチェックポイントだ。
怒られるのを覚悟で言う。
「水入れすぎだ。」
「フリスク君、減点1。」
「そういえばそうだね。」
アークがなにやら呪文を唱え出した。
水は減った。
そのせいか、ただでさえ大きく見えたたまねぎやらその他諸々がでかく見える。
アークの昔の仲間が料理をさせなかった理由はよくわかった。
どろどろの黒っぽいカレーが出来上がった。
アークは各自にカレーを盛っていたが、全員顔色が青かった。
フリスクはたまねぎのかたまりがあたった。
仕方ない。
フリスクはスプーンでたまねぎを無理矢理ちぎって食べた。
何も言いたくないほどまずい。
異常なまでに濃いカレーと水分がにじみ出るたまねぎ。
本気で泣きたくなった。
同じ班の他の人間も半泣きで食べていた。
平然と食べているのはアークだけだ。
「お前、まずいという自覚はあるのか?」
フリスクが聞くと、アークは頷いた。
「で、食べれるのか?」
アークは食べながら頷いた。
二度とコイツに料理をさせてはいけない。
そう思いつつ、フリスクはカレーらしきものを食べて半泣きになりながら思った。
END





back



*atogaki*
おまちかねのアークの料理です。
おおざっぱというか・・・何かどう表現すればいいのかわからないですね。
リーズのアトリエ一ヶ月延期記念ということで。