天空大陸上の都市ティカーノ。
そこにある国立アーガスティン大学のホールの一つに同じ服装の学生たちが集まっていた。
もう、時間だ。
黒い髪の少年は緊張のあまりつばを飲んだ。
「アーク、大丈夫か?」
彼の横にいた大柄な青年が尋ねる。
「ああ、うん。何とかなるでしょ。ね、ディトナ。」
アークが話しかけると、深い緑色の髪の少年が頷く。
「フリードリヒが一番危ないと思う。」
ディトナが棒読み口調で断言した。
実際、フリードリヒは変に拳を握り、手を震わせている。
「フリードリヒ、別に帝が見学するってだけなんだから、マイペースに行けばいいよ。」
「フリードリヒ、無茶すんな。俺たちだっているんだ。」
そうこう言っているうちにベルが鳴った。
じりりりりりりり
学生たちが一気に静まる。
「おほん、今日は他学科で作成に失敗した凶悪な合成獣と戦ってもらう。アーガス帝様がおみえになっているからといって無理をしないように。」
ホールのドアの一つが開いた。
頭部だけがやたらと多い猫っぽい合成獣がアークに向かって走ってくる。
シャー
しかも10匹くらい一緒にかかってくる。
アークは口を動かした。
魔法を発効させる。
猫っぽいものたちは氷の中に閉じ込められオブジェのようになった。
多分死んでいるだろう。
「フリスク!肩、借りるよ!」
アークは走ってからフリスクの肩に一瞬お邪魔して空中に浮いていた変に円形で足が生えている生き物を一刀両断にする。
かなりの高さまで飛んだので一旦ホールの床に転がってから、フリードリヒの手助けに向かう。
フリードリヒは両足両腕が傘になっている合成獣と戦っていた。
彼の肩からは血が出ている。
それでも剣を握るフリードリヒは鋭い目で合成獣を見ていた。
フリードリヒと合成獣がにらみ合っている場に平然と乗り込む。
それに押されてフリードリヒも走る。
二人で切りかかると傘のおばけは悲鳴も上げず倒れた。
そこに赤い靴だけの合成獣が走りこんでくる。
フリードリヒはあっさりとそれを切り捨てた。
赤い液体に、靴は変化した。
油断していたらしいフリードリヒの足に絡まる。
フリードリヒは切りつけたが、液体の身には何の影響もない。
アークが助けに入ろうとすると、それを拒絶するようにフリードリヒは叫んだ。
「忌まれしものよ、大気に帰れ!」
赤い液体が浄化され消える。
この調子で、様々な合成獣と戦った。
敵に個性がありすぎて、学生たちはぐったりした様子でホールを出て行った。
アーガス帝は低く笑った。
「ど、どうなさいましたか?」
戦闘授業の担当の教授はうろたえた。
「何でもない。ただ、逸材を見つけただけだ。」
「い、逸材?」
「・・・・あの少年だ。アレは使い物になる。」
教授には意味不明の微笑をしている。
「さあ、行こうか。」
アーガス帝はコートを翻した。
END
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*atogaki*
MMさまのリクエスト「華麗なる饗宴」で書いてみました。
とりあえずアークを動かしまくってみました。
華麗なのかどうかは謎、お前は綾里供子か!?
MMさまのみ転載可です。