普通or赤点+α



とある学校の寮のデラックスルーム。
小学生から脱しきれない容姿の女の子が2人ソファに座っていた。
どうしてこうなるのか。
原因もわかっているのだが、それを取り除くのはほぼ不可能と言っていいだろう。
「英語以外、見事に間違いだらけね。」
愛菜がため息をついた。
舞もため息をつきたかったが、教えてもらっている立場上抑える。
「貴重なテスト前の時間を割いてもらっているのに、すみません。」
「舞、一応聞くけどそろばんとか計算に関する習い事ってしたことあるかしら?」
「覚えていません、ごめんなさい。」
記憶喪失状態でもそろばんなどの技術は生きるのだろうか。
愛菜にテスト前の貴重な時間をもらって勉強しているのに、どう頑張っても間違いだらけ。
ひたすら謝るしかない。
「そんなことはどうでもいいわね。舞、ここにはこの数値を代入する、ここまではわかっているわね?」
「はい。」
「ただの計算ミスね。数学の対策はちょっとした原理を覚えるだけだから、ゆっくり冷静になることね。」
「はい。」
愛菜は自分がノイローゼになるまで勉強してきただけに、勉強のコツのようなものを身につけているようだった。
「一応、これで全科目教えたつもりだけど、もう少し教えた方がいいかしら?」
「すみません、社会の歴史の年号がわかりません。」
「わかったから、ね?泣きそうな顔しないの。年号のごろ合わせはノートに書いておくからじっくり覚えること。」
愛菜はぽんぽんと舞の頭を軽くたたいた。
「この歳の勉強なんて覚えた者勝ちなんだから大丈夫よ。」
そこが大丈夫ではないところなのだが、口が裂けても言えない。
愛菜さんってすごい。
舞は自分の勉強を一旦隅において思った。
なんだかんだ言いつつ愛菜は勉強が好きなのかもしれない。
「舞、ここで赤点とると大変よ。七夕があるんだから。」
え?
今初めて知った。
「七夕、ですか。」
「テストが終わったら、すぐ赤井くんに聞くといいわ。私には段取りはわからないから。」
舞の気合いもちょっと増えた。
テスト直後、赤点の始末だけやればいいというわけではない。
七夕のイベントまであるのだ。
乏しい暗記能力を駆使してがんばるしかない。
ここに来てやっと慣れてきたところなのだ。

 テスト最後のチャイムが鳴った。
舞は少々青ざめていた。
計算ミスに今頃気付いたり、年号を間違って書いたり、動物の細胞にはないものを間違えた。
赤点に片足を突っ込んだ気分だ。
それでも聞いておきたいことがある。
舞はC組に向かった。
凍はすぐに見つかった。
何やら難しい顔をしている。
「すいません、凍さん。」
凍が振り向く。
彼も青い顔をしているのは間違いではない。
「テスト直後にすみません、七夕について聞きたいんですけど。」
凍はm-pasoを取り出した。
「m-paso出せよ、七夕のデータ送るから。」
舞も慌ててm-pasoを出す。
データ通信で情報を受け取る。
「ありがとうございます。」
凍も点数が危ういらしい。
慣れると片手間でほいほいと出来るのだろうか。

 片手間でほいほいの線はあっという間に消え去った。
笹の販売は学校側が行う。
寮長がフロアの生徒全員が願い事を短冊に書いて笹にとりつけられる程度に笹を買う。
そして予備も含め短冊も買う。
もちろん、祭事の予算の振り分けも付いてくる。
ここで赤点をとっていると、赤点分の勉強と七夕のイベントの準備の両方をこなさなければならない。
大丈夫かな、愛菜さんに勉強を丁寧に教えてもらったから。
舞は七夕のお祭りデータを見ながら、眠りに落ちていった。
END





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*atogaki*
勉強してもダメな教科はダメですよね。
中学校の先生に高校のころ数学で0点とったという方がいましたが、
自分も家庭教師の先生に一から十まで教わってやっと赤点以上だったので同情。
地方の模試で数学4点とったことあるし。