どうしよう。
舞は参考書に目を落としつつ、全く違うことを考えていた。
「舞、どうしたのかしら?この問題、わからない?」
言われて視線を上げる。
勉強に関しては心強い友人がため息をついていた。
「この問題じゃなくて、別の問題がわからないのかしら。」
愛菜はため息をついて参考書を閉じる。
「す、すみません。せっかく見てもらっているのに。」
「悩みの内容はだいたい想像がつくけれど、今のあなたには解決方法は思いつかないでしょうね。」
もう黙るしかなかった。
ロボットが複数体出てきたらどうするか。
今のままでは確実に、クイーンとして役に立てない。
「西洋と中国は考えが違うわね。」
はい?
「西洋では強い者が王になる。強さとカリスマ、これが武器。ただし中国はちょっと違うの。」
舞は凍を思い出していた。
強い者が王になる、それは凍のことのように思えた。
実際、彼はロボットに襲われた時、舞よりよほど強さを発揮している。
「中国はちょっと違う面がある。確かに強さも多少は必要ね。ただ、中国の有名な伝承なんかを見ると違うものが鍵になる。」
「鍵、ですか。」
「不思議な魅力、案外これが重要とされるのよ。覚えておいて。あなたは1人じゃない。」
愛菜は舞の肩を軽く叩いた。
そして、部屋から出ていく。
言われた意味がわからず、舞の頭は再びロボットに埋め尽くされた。
洋子はふっわふわ―マカロン―などと小声で歌っていた。
「おい恥ずかしいからそれ歌うなよ。」
嫌そうに凍が洋子を見る。
菓子売り場にはぎっしりと人がいた。
「いいじゃない、あんたの手伝いもしてるのよ?舞の好みはなんだろ〜。」
「教えろって。教わったら帰る。」
「ちゃ〜んと教えるって、最後に。」
凍は洋子の分の菓子も持たされ、ため息をつく。
自分へのホワイトデーのプレゼントの菓子はだいたい買った。
あとは。
舞の分だけ。
で、仕方がなく洋子に相談したところ、このように荷物持ちをさせられている。
「もうそろそろいいかな。」
凍にとっては天からの声に聞こえた。
「今年のホワイトデーは、偶然休みよね。」
「何だよいきなり。」
「解答、舞の好きなものはふっわふわのチーズケーキです。」
ふわふわのチーズケーキ?
凍は想像しようとしてみたが、うまく想像できなかった。
チーズケーキに関心がなかったので、「ふわふわ」というのがわからない。
「ふわふわ?」
「もう一回お菓子をあらってみることね。じゃ、私は帰るわ、ばっはは〜い。ホワイトデーの特別訓練でまた会いましょう。」
洋子は自分の分の荷物をちゃっかり持って、軽やかなステップで帰ってゆく。
凍は途方に暮れた。
ふわふわのチーズケーキ。
どうしよう。
END
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*atogaki*
ホワイトデーが書けるかどうかは怪しいですが、途中経過を書いてみました。
関心がない食べ物ってどんなものか想像がつかないですよね。
こんなところでもダ○スイーツがあるようです。