別にチョコレート用意しなくてよかったかも。
舞はため息をついた。
そういう自分も義理チョコなのだが。
「針渡先輩。」
両手にチョコレートの入った袋を持った針渡に声をかける。
「おはよう、黄色のクイーンさん。」
「おはようございます。とても少ないですがこれどうぞ。」
舞は買っておいたチョコレートを渡す。
「ありがとう。少なかろうが君にチョコレートをもらえるなんて嬉しいよ。」
たぶんみんなに同じこと言っているのだろう。
そう思いつつ質問してみる。
「あの、先輩は特訓で何体かのロボットを一気に倒せますか?」
「できるよ。僕の能力はそういうことに相性がいいんだ。」
「すごいです!あの、どうやって?」
針渡は考え込んだ。
その間にも女の子が近づいてくる。
「たぶん、全然参考にならないからパス。早く行かないと遅刻するよ。」
遅刻するのは針渡先輩だけだと思う。
舞は再びため息をついて、まだまだチョコレートをもらっている針渡から離れた。
思いのほか、早めに学校に着いた。
凍がいないかチョコレートを持ってC組に行ってみる。
いた。
8人くらいで漫画を回し読みしている。
舞が教室の出入り口に行くと、凍は肩を叩かれていた。
凍は嬉しそうに出入口に来る。
「おはようございます。あの、これ、どうぞ。」
何となく気恥かしい。
凍はチョコレートのラッピングを見ただけで赤くなった。
「え?マジ?オレもらっていいのか?」
つられて舞も少し赤くなる。
「いつもお世話になっていますから。」
うわー。
凍が嬉しそうに息をはく。
「あの、不躾な話題で済みませんが、凍さんはロボットを何体か倒せますか?」
凍が一気に真剣な顔になる。
「できる。んっとなー狙うんだよ。」
「狙うんですか?」
「ああ、奴らのセンサーを狙って仕掛ける。オレらでいう目と耳の役割をしてるセンサーをな。」
ものすごくいい案を教えてもらった気がする。
ただ。
「仕掛けるって、何をなさるんですか?」
「いや、オレは殴りかかるか蹴り飛ばすだけだからな。無理だろ?」
確かに。
凍のように本格的にケンカを仕掛けるのは無理だ。
「ありがとうございます。参考になりました。」
「いや、役に立てなくて悪かった、チョコまでもらったのに。」
何故か二人とも礼をして教室に帰った。
放課後。
今日は特訓がなかったので、舞の部屋で友人同士チョコレートの交換。
その後、洋子とともよはソファに座ってテレビを見て、愛菜は英語の有名科学雑誌を読んでいた。
「あの、今特訓を受けているロボットのことなんですが。」
「ごめんなさい、私じゃ役に立たないわ。」
「わたしも。ロボットを直すことはできそうなんだけど。」
「わたしもダメね。」
「いえ、具体的な倒し方とかじゃなくて、センサーってどういう風に狙えばいいのかと。」
三人の手が止まった。
「確かに、センサーを壊してしまえばいいわね。」
「誰が言ったのかは知らないけどナイスアイデア。」
チョコレートを食べながらそれぞれが考えだす。
「う〜ん、何かで目くらましをすればいいんじゃない?」
「そっか、その時に不自然に動くところがセンサーよね。」
「顔とは限らないから、目くらましや舞の行動を不自然に見ているのがセンサーね。」
なるほど。
「ありがとう、一回試してみます。」
他にも、センサーがある位置をどう特定するか女の子なりに意見を出していく。
また、凍さんにも聞きなおしてみよう。
舞はそう思いつつ、女友達と話していた。
END
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*atogaki*
バレンタインらしくなったでしょうか?一応努力はしました。
針渡以外、中学3年のはずなのですが勉強してるのか、みんな。
試験があったら舞とか大変そうなのに。