チョコレート売り場は混雑していた。
どの生徒も自分の武器を持ったままチョコレートを探しているため、通路が狭くて仕方がない。
小柄でよかったかも。
舞は他の生徒のカバンを避けながら、チョコレートを探していた。
本命、というわけではないがいつもお世話になっている凍にあげるチョコ。
やはり色々お世話になっている洋子、ともよ、愛菜に渡すチョコ。
針渡に渡すチョコ。
これらを探している。
ロボットはクリスマスに出現したっきりで、その後は出ていない。
それでも寮長の立場の舞、凍、明は正月なしで特訓が続いている。
実はこのチョコを買ったら、また特訓に行かねばならない。
あ、いいもの発見。
舞は紙に包まれた漆器を手に取った。
中身のチョコレートもおいしそうだし、友人の多そうな凍にはいいかもしれない。
まずこれ。
どう見ても和菓子にしか見えないチョコレートは洋子にしよう、変わり種好きそうだし。
舞はその調子でチョコレートを選ぶ。
愛菜にはちょっとだけの高級チョコ、ともよにはミニチュアのケーキみたいなチョコ。
針渡は愛菜のものとちょっと似ている高級チョコ、2粒入り。
レジでお金を払うと、舞は賑わっている店を出た。
こんなときでもバレンタインがあるのはこの学校のいいところだろう。
不安をちょっとでも和らげることができる。
バレンタインになるべく近い日にみんなに渡そう。
特訓が始まって1ヶ月、舞もそろそろ慣れてきた。
凍が倒したロボットを分析し、コピーしたものが教室内に立っている。
ついでに、講師も立っている。
この学校は生徒たちの能力上、講師が多い。
様々なちからを持つ生徒たち。
必然的に様々なちからを持つ講師が求められる。
「舞さん、チョコレートを持ってくるとは少し余裕ができましたか?」
講師の男性はその「余裕」を好ましいとも好ましくないとも思っていないようだった。
「がんばります。」
舞は机の上にカバンの類を置いた。
そしてカバンからやや大きめのメモ帳と鉛筆を出す。
すると講師がリモコンのようなものをロボットに向ける。
舞はロボットの突進を避け、メモ帳に棒のような人間を描く。
ただしそれはいつものペースではない。
メモ帳が黒い線で埋め尽くされるほど落書きを描く。
ロボットが棒のような人間に押されていく。
舞の手は止まらない。
メモ帳をめくって更に落書きを書き続ける。
ついに舞の描いた落書きがロボットの頭部に到達。
ロボットの首をひねる。
電気が飛び散る音がして、ロボットの頭部や腕部がねじり切られる。
「今日の分は合格です。しかし、ロボットが複数出た場合は何か案がありませんか?」
それが問題だった。
何とか一体は倒せるようになった。
しかし、何体もロボットが出てきたら自分の首がひねられるのは確実だ。
「あり、ません。」
今度みんなに聞いてみようかな。
いい知恵が出るかもしれない。
チョコ渡す時に聞いてみよう。
舞は教室を後にした。
END
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*atogaki*
寮長たちには暇だけはない正月だったようです。
ついでにバレンタイン当日までに次を書けるかどうかは怪しいです。
チョコの値段がわかっても言わないお約束。