出身銀河の歴史

とある銀河の地球とほぼ同じ環境の惑星では、科学文明が高度なレベルにまで発展していたが、
惑星の寿命までは高度な科学力があったとしても、僅かながらな延命処置が限界だった。
惑星の寿命が尽きるて滅びの日を迎える前に、別の惑星へ移住する宇宙船を建造する。
数十機の移住船が完成するも、移住船に乗りこめるのは総人口の10%のみであった。

惑星が滅びる前に移住船団は移住予定の惑星に向けて出発する。
移住予定の惑星には大地はあるものの、極寒の惑星で人の住める環境ではないので、
移住船団の出発前にテラフォーミング機構を搭載した無人船団を移住予定の惑星に送りこんでいる。
テラフォーミング船には白い船と黒い船の2種類がある。

白い船は惑星の大気や土壌などの環境を人の住める状態に作り変え制御する機能がある。
惑星に到着後は地中に埋まって惑星の改造と制御を行いう。
白い船の真上に建設する白の町を中心にして、徐々に外側に小さな町を建設していく。
小さい町にも、町周辺のみの環境を制御する装置が設置され、
惑星全体の環境整備の補助装置として機能する。

黒い船の中には建築資材と苛酷な環境でも活動可能な(*1)人工生命体を数百体ほど搭載している。
人工生命体は黒い船に搭載されている建築資材と惑星で採取した材料で、
移住船団の到着前に住居や生活線などの整備を行う。
惑星に到着後、塔の様にそびえ立ち人工生命体の制御塔として機能する。

*1:
形態は四足歩行や二足歩行、四本腕や2本腕など様々な種類がいる。
人間用の建設重機を扱える種類も存在する。

人間が住むのに最低限の環境が整った頃に移住船団が到着した。
移住前の惑星よりは原始的な生活となってしまうが、
惑星崩壊の危機を乗り越えて行きついた惑星は安住の地になる、はずであった。

惑星特有の大気と土壌の成分の両方の影響により人工生命体の亜種や変種が生まれる。
亜種や変種は元の個体よりも生命力や繁殖力に優れていて、
人工生命体が亜種と変種のみになるのにはさほど時間はかからなかった。
増え過ぎた人工生命体を制御しきれなくなり、黒の塔の制御機能の限界と性能低下により、
人工生命体の狂暴化により人間を襲うようになる。

狂暴化した人工生命体の亜種や変種は退治出来ない事も無いが、
数十頭から数百頭と群れをなして襲いかかってくるために、
為す術なく多くの町が壊滅や半壊してしまった。

襲いかかる人工生命体への対抗手段として、
人間の身体に凶悪化した人工生命の力を取り入れる苦肉の策も、
町への侵入を食い止めるので精一杯であった。
更なる対抗策として白の船に人工生命体の制御機能を追加して、
環境操作機能の出力低下と人工生命体を町から遠ざけるのみの部分制御として、
白の船のみで最低限の環境と生態系を操作する事に成功する。
だが、環境操作機能の出力低下により、白の町周辺のみの環境維持が限界であった。
小さな町にも環境整備装置はあるものの、白の町やその周辺を全てカバーするだけの機能は無く、
惑星全体の都市間だけではなく隣り町との行き来すら出来なくなり、町単位で孤立してしまった。

国や町同士の交流が無くなり数百年もの長い年月が経過し、
徐々に人々の生活環境が変わっていった。
数百年の間にあった事やそれ以前の歴史については、
失われた部分が多々あり、誤って伝えられた部分もあるので正確な歴史とは言い難い。

以下は惑星に数多くある白い町の1ヶ所の歴史にしか過ぎないが、
他の地域でも概ね同じような変化があったものと推測される。

人工生命体を変貌させた物質は後から来た人間にも作用し、
人間は自然環境の悪化に適応する様に、徐々にであるが(*2)寒さに強い体質に変化する。
この惑星特有の大気と土壌の成分をマナと呼称するようになる。

*2:
混血の人間(半獣人)は純粋の人間よりかは寒さに強いが、
悪化した自然環境の下で活動出来るだけの寒さ耐性は無かった。

モンスター(人工生命体)への対抗手段として生み出された混血の人間は、
世代を重ねるにつれて獣の血は薄れ、ほぼ純血の人間と変わらない外見となる。

また混血の人間のみに備わっていた力を、
一部の純血の人間も使える様になり、力の系統別に分類された。
自らの肉体を強化する力を打闘気、武器などにマナをまとわせて振るう力を斬闘気、
マナを衝撃波やエネルギー波にして飛ばす力を射闘気、この3つを闘気術に分類した。

マナを熱や冷気に変換して攻撃に使う術を黒魔法、回復や防御に使う術を白魔法、
大気中に存在する見えざる生物、精霊とマナの力を借りて使う術を精霊魔法、
見えざる生物を具現化し、召喚する術を召喚魔法、この4つを魔法術に分類した。
またその他の分類として、打闘気と黒魔法などの合わせ技が多数存在する。

科学文明は衰退してしまったが、僅かながら後世に科学技術が継承されていた。
近代になり発見された魔法術を近代魔法術とし、
古くからある科学技術は古代魔法術と分類された。

人間達は寒さへの耐性とモンスターと戦う術を身に着け、
町の外に探検に出る者達が現れ、冒険者と呼称するようになる。
冒険者は未開の地のを探検して多くの孤立した町、古代遺跡(発電所や研究所など)を発見。
一部の町の間では交流が再開される(他の町でも同じような歴史を辿っていた様である)。

冒険者達が古代遺跡などで発見、発掘した古代の記録書は古代魔法術師により解析され、
極一部であるがこの惑星と移住前の惑星の歴史を知る。
探検規模が広がり古代の記録書の数が増え、解析が進むにつれて、
白の町の真下にある白の船に黒の塔(船)の存在と機能を知る事になる。
モンスターは元々は人間の作り出した生物であり、人間の得た力とモンスターの力は同じであるが、
モンスターの頭脳であり制御装置である黒の塔の機能低下が狂暴化の原因と知る。

黒の塔の発見と古代魔法術師による塔の修理。黒の塔の制御限界に合わせて、
モンスターの制御を町には近づけさせず人を襲わないと部分的な制御とした。
白の船は本来の目的である惑星の自然環境の制御のみとして、
白の町を中心としてその周囲の環境を徐々に改善している。

モンスターの脅威はほぼ無くなり、自然環境も穏やかになり、
現在は別の白の町や黒の塔を探すのが冒険者の主な仕事である。