NHK党立花孝志党首、報道ステーション退席問題

 最近、テレビを見る時間は少なくなった。週末のゴールデンタイムなどはほとんどNetflixで配信されている映画やドラマを観ている。特にニュースや報道番組を見ることは皆無に近くなったが、木曜日、リモコンを動かしていたらNHK党の立花党首が報道ステーションの党首討論番組で発言を始めるところだった。他党の党首だったら、さっさとチャンネルと切り替えていたと思うが、彼が何を言うか興味があったので見ることにした。

 テーマは「国民の安全」どう守る?というものだった。画面に映し出された立花党首は「国民の皆様、テレビは核兵器に優る武器です。テレビは国民を洗脳する装置です。テレビは国民が知るべき真実を隠しています。本日、お昼過ぎテレビ朝日のプロデューサの方からお手紙を頂戴しました。このお手紙にはテーマから逸脱する発言は控えていただくようお願いいたします…」と発言すると怪訝な表情をしてワイプで左下に映っていた報道ステーションの大越キャスターは「はい」と小声で言った。

 さらに立花党首が「万が一そのような発言があった場合はしかるべく対応させていただく場合もあるとご承知おきくださいと…」と続けると、それに被せて大越キャスターは「その通りですね」と厳しい口調で発言する。立花党首が「これについて電話を差し上げたところスタジオから追い出されますといわれましたので、追い出される前に自ら退席しますので…」と続けると、さらに「立花党首、今の発言はおっしゃる通りテーマに沿ったものとは認められません。発言を止めてください」と続けた。

 この後も立花党首は話し続けたが、大越キャスターは「発言を止めていただきましょう」「主旨に乗っとった発言をしてください」「今は安全保障の話をしています。申し訳ありません、その発言は認められませんので、ここで打ち切らせていただきます」と一方的に発言を打ち切った。立花党首は「ありがとうございます」と自ら退席した。

 立花党首の発言打ち切り騒動はいきなりスタジオで起こったものではなく、その前段があった。テレビ討論の場で立花党首の発言にあったように事前に報道ステーションのプロデューサーからメールが来ていたのである。そこには党首討論でテーマから逸脱した発言は控えるようにという注意が書かれており、逸脱した場合はしかるべき対応を取るということもあると伝えていた。その後、そのメールの内容について立花党首と報道ステーションのプロデューサーの間で電話による擦り合わせが行われた。

 立花党首は事前に発言の内容を検閲するようなことに疑問を呈しながらも、どの程度なら許容範囲になるのかという確認をしたいという旨を伝えていた。具体的には冒頭に読み上げるメモを事前にみてもらい、承認をもらいたいと提案していた。この提案は「テレビ局が政治家の発言を事前にチェックするようなことはできない」という返答が折り返しあったようである。テレビ朝日から、メールを送られた党首は立花党首だけだったらしい。

 まず、最大の問題は大越キャスターが「その発言は認められません」と発言の途中で一方的に打ち切ってしまったことである。立花党首の発言が「安全保障」の内容から大きく逸脱していると判断した結果のように思われるが、実はそれほど逸脱したものではなかった。テレビは洗脳装置というのは今ではちょっと過大評価かなと思うけど、真実を放送しておらず、偏向しているのは確かである。編集作業により、主張を捻じ曲げたり、都合のいいように加工してしまうというのは日常茶飯事だ。テレビが恣意的な放送をすることは安全保障に関わると強弁できないことはない。

 実際に何を言い出すのだろうと怪訝な表情をしていた大越キャスターもこの辺りまでは発言を遮ってはいない。立花党首が「お手紙にはテーマから逸脱する発言は控えていただくようお願いいたします。万が一そのような発言があった場合はしかるべく対応させていただく場合もあるとご承知おきくださいと…」との発言が呼び水となり、大越キャスターが発言を遮るようになった。立花党首が自ら「テーマから逸脱」していることを匂わせて、大越キャスターを誘導したように思えた。

 テレビ朝日は「テーマを逸脱した場合は、しかるべく対応」とは伝えていたが、この「しかるべき対応」の中に退場が含まれていたのかどうかは疑問だ。立花党首によるとプロデューサーとの2回目の電話で「退場」を示唆されたという。ウソだとは思わないが、どのような文脈でいわれたかということが問題である。

 立花党首が「しかるべき対応」の中に退場も含まれているのかと訊き、そういうこともあるかもしれませんねと返した程度だったのではないかと思う。というのも、始めのプロデューサーとの電話はYouTubeにアップされており、その中でのプロデューサーの真綿で首を絞めるような話し方から、自ら過激な発言はしないように感じたからである。

 つまり、立花党首の策略にテレビ朝日と大越キャスターがまんまとはまってしまったのではないかと考えている。もとより、テレビの一回の発言時間が1分間に限られる討論番組にまともに出演するつもりはなかったのではないだろうか?大越キャスターから発言を遮られることを想定して、そうなった場合は自ら退席すること決めていたように思える。そうすることにより、言論弾圧というイメージをテレビ朝日に植え付け、ダメージを与えることができる。

 それにしても大越キャスターの対応はまずかった。ハナから立花党首に対してけんか腰の態度をとり、立花党首の発言をテーマから逸脱するものと断定し、一方的に発言を遮ってしまった。この態度では言論弾圧と批判されても、仕方ない。恐らく、立花党首が何を言い出すかわからないという先入観とプレッシャーにより、暴走してしまったのだろう。

 収録後、YouTubeでの立花党首はさかんに「怖かった」という発言をしていた。映像を見ている限りでは言葉とは裏腹にそんな感じは全くしなかったが、確かに「怖い」と発言されても仕方ない対応をテレビ朝日はとっていた。以前から、いろいろと問題の多いテレビだったが、コロナ禍でそれがさらに浮き彫りになった気がする。個人的には、もう必要ないものになった。特にニュースやワイドショウは。(2022.6.29)




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