煽る人、煽られる人

 或るブログを読んでいたら、明らかなウソが書かれていた。或る役所が出した通達を故意に変えて伝え、読者を煽る意図がみえみえだった。何故、故意かと判断したかというと、このブログは内容の無さを、センセーショナルなことを書いて埋めることが常態化しているからである。以前にも、誇張やウソの情報を堂々と載せて、読者の怒りを煽っていた。

 さらに巧妙なのは、目のつけどころである。意図的に変えて流したウソ情報は、新聞では二面か三面に小さく載るくらいのニュースバリュウのものだった。そのため、このブログで初めて知ったという読者が多かったようで、コメント欄は作者の意図通り、読者の怒りで埋め尽くされていった。

 しかし、いくら新聞の三面程度の話題性しかないニュースでも、ネットで検索すればすぐに探すことが出来る。僕はこのブログを読んで、いくらなんでもこんなことはないだろうと検索して、ブログに載せられている情報がウソであることがわかった。

 普通の常識があれば、誰でもおかしいと思える情報である。自分で真偽を調べることもせず、というより、はなからこの記事を疑うこともなく、安々と扇動されてしまう読者に怖さを感じる。中には役所に抗議の電話をかけると息巻いているものまで見受けられた。

 情報はどんなものでも頭から信じるのではなく、一度は疑ってみて、自分で調べるという姿勢が必要である。中には或る意図を持って意識的に流される情報もある。いろいろな角度から検証して、判断しなくてはならない。

 しかし、何といっても悪質なのは、このブログの作者である。彼が何故、このようなことを繰り返すのか、その理由は何となくわかる。アクセス数を増やしたいためだ。

 世の中の出来事というのは、そのほとんどが白でも黒でもなく、灰色なのである。消費税の増税も、原発再稼働も、灰色なのである。白に近い灰色もあれば、黒に近い灰色もあるが、灰色であることに変わりなく、それはその人の立場によって変わる。

 多くの人にとって、灰色というのはわかりづらい。そこで、これは白だとか黒だとか、はっきり断じてくれるものがあると、吸引されてしまう。このブログの作者は、それをやっているのである。灰色を黒だと決めつけて、極論を吐き続けることによって、人々の鬱憤を晴らし、人気を得ている。

 しかし、内容は政治家や官僚に対する罵詈雑言ばかりで、僕は読んでいて辛くなった。今の日本は政治家や官僚にはめちゃくちゃいってもかまわないという風潮になっているが、それはあまりに幼稚過ぎるように思う。少なくても、総理のことを‘ブタ野郎’などと揶揄するような下品な人間にはなりたくないものだ。

 さて、上記のウソにより、実際に役所に抗議の電話をかけてしまった人が複数いたようである。当然、役所では、事実と違うので、「それは誤報です」と実際に出した通達の内容を説明したらしいのだが、一度思い込んでしまったことは、なかなか間違っていたという認識にはならないようで、この電話をした人は疑心暗鬼の状態だという。

 さらに酷いのは、コメント欄にこの役所の主張を正しく載せた人に対して、「そんなに政府のことを信用するのだったら、他でやってくれ」とこのブログの作者が切れてしまったことだ。このコメントをした人は、何も政府を信用しているというわけではなく、ブログに書かれてことが間違っているということを指摘しただけだった。それに対して恫喝するようなコメントを付けるとは、人間性を疑ってしまう。

 これに対して、正しい情報を載せた人は、「すいませんでした」と謝ってしまった。これまた気持ち悪い光景である。このブログの中に言論の自由はないと思った。(2012.4.25)




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