尖閣諸島中国船衝突ビデオ流出

 尖閣諸島付近で起きた海上保安庁の巡視船と中国漁船の衝突事件を撮影したビデオがyoutubeに流出した。ビデオは六編に分けられており、合計の時間は四十四分だった。政府やマスコミは誰がyoutubeに投稿したのかということで躍起になっているようだけど、誰でも情報を発信でき、世論を喚起できるというネットの特性を強く感じた。

 このことを知ったとき、もうこのビデオは削除されてしまっているのではないかと思い、半分諦めてyoutubeにアクセスしてみたら、何と同じものがいくつもアップされている状態で、中にははっきりと‘拡散目的で転載アップロードしました’と断り書きのあるものもあった。一度、ネットに流出してしまえば、それはもう一部の人間の恣意の及ばないことを見せつけることになった。

 このビデオをネット流出に対する反応は概ね好意的のようである。現在ビデオの流出元と思われている海上保安庁に寄せられた電話やメールの八割は‘よくやった’というような肯定的なものだそうで、否定的なものは一割、残りの一割は質問だという。

 このような‘世論’を作ってしまったのは、政府の国民には納得しがたい今回の事件への対応のせいだろう。違法行為を行った中国人船長を‘外交的配慮’ということで釈放してしまい、それで中国側が感謝をするならともかく、帰国した船長を英雄扱いし、さらに貿易の禁輸や賠償だの無法とも思われるような要求をされ、国民の反中感情は高まっていた。そのツケが一気に噴出したような感がある。

 ビデオの流出も機密情報の漏洩という性格より、国民の知る権利を満たすための内部告発とする見方が優勢である。あれだけの無法を犯した中国人を何のお咎めもなく釈放したのに、今回ビデオをネットに投稿した日本人を捕まえるのかという意見は、感情的ではあるが、国民の心情を代弁しているように思う。

 このビデオを多くの国民が観ることになり、中国漁船がいかに酷い行為を行っていたかが白日のもとに晒された。もちろんこの映像は事実ではあっても、真実ではないのかもしれない。真実は、もっと過酷な可能性も高い。情報の透明化をさかんに叫んでいた民主党は、どう決着をつけるのだろうか?

 ネットは個人であっても国や企業の隠蔽された事実を暴くことができる一方、使い方を誤るととんでもない凶器にもなり得るように思う。情報を発信する人間のモラルが問われる一方、それを受け取る側も冷静に物事を判断する必要がある。とにかく、これによって事実の一端が見られたのは、悪いことではなかった。(2010.11.7)




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