朝青龍引退

 2月5日、横綱朝青龍が突然引退を表明した。初場所中に知人男性に暴力を振るったとされることが直接的な原因で、横綱審議委員会で引退勧告が出されることが確定的になったため、理事会で解雇の流れが加速し、数人の理事が朝青龍に‘引退’を迫ったことにより、最終的には本人が決断したようである。

 この報道を聞いて驚いたのと同時に大変残念な思いがした。まず、引退の引鉄となった暴行問題の真相が全く見えないことである。真相が全くわからないのにもかかわらず、連日のようにテレビでは相撲通のコメンテーターらしき人が‘解雇’を声高に主張しているというのも、全くおかしいことだった。

 マスコミからいろいろな情報が飛び交っていた。それらは表面上、真実を追求しているように見せかけてはいるが、実際はテレビだったら視聴率、新聞や雑誌だったら部数を伸ばすことが目的だったのだろう。売るためだけに、この問題を煽って火を大きくしていったように見えた。そしてそれにアンチ朝青龍の人々が乗っかっていき、いつしか‘引退して当然’というような‘世論’が形成されていった。

 これまでも朝青龍はいろいろと‘問題’を起こしてきた。しかし、それらもよく見て行けば、どれも別にどうということもないものばかりだ。「記者に暴言を吐いた」「ずる休みをして、モンゴルでサッカーをした」「土俵の上でガッツポーズ」等々、僕にすればどれも小さなことでどうでもいいことのように思える。

 今度のことも「場所中、深夜に深酒をするのはけしからん」という意見をテレビで聞いたが大きなお世話だと思う。朝青龍はプロなのだから、結果が全てである。酒の飲み過ぎで不甲斐ない成績になったのなら何を言われても仕方ないが、そうではないのだから文句を言われる筋合いはない。

 暴行問題の真相もわからないまま、マスコミのキャンペーンと一部のわけのわからない‘世論’によって朝青龍が引退に追い込まれてしまったことは残念であり、全く後味の悪い出来事だった。モンゴルで報道されている「朝青龍が日本人の記録を破る可能性が強くなったから引退させた」という見解が案外と真実なのかもしれない。(2010.2.6)




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