何が大切なのか

 中国人のリ・イン監督が10年間に渡り終戦記念日の靖国神社を撮影したドキュメンタリー映画「靖国 YASUKUNI」の上映中止が相次いだ。上映を予定していた東京の4映画館(新宿バトル9、銀座シネパトス、渋谷Q-AXシネマ、シネマート六本木)は全て上映を中止した。

 その理由は‘観客や近隣に迷惑のかかる恐れがあるため’である。上映を予定していた或る映画館には政治団体から上映中止を求める電話が入ったり、周辺で街宣車による抗議行動があったという。また、別の映画館では‘具体的な抗議や嫌がらせはない’が、‘万が一のことがあってはならない’として上映を中止したそうである。

 しかし、「言論や表現の自由」と「観客や近隣への迷惑」とどちらが重いかといわれれば、それは前者である。‘迷惑のかかる恐れがあるから’といって、言論や表現の自由を放棄してしまうようなことはあってはならない。このようなことは国際的にも、大変、恥ずかしいことである。一番大切なものは何なのか、真剣に考えてもらいたい。

 この決定をした映画館の責任者は面倒になることを恐れ、一番大切なものを捨ててしまった。事なかれ主義もここに極まったという感じだ。もっと気概というものを持って経営してもらいたいと思う。

 そんな中、大阪市の第七芸術劇場、京都市の京都シネマ、広島市の広島サロンシネマなどは予定通りに上映するという。第七芸術劇場の松村支配人は「これで全国で中止になったら、嫌がらせや抗議で取りやめできることになる。批判する人がいてもいいし、その通りと思う人がいてもいい。上映しなければ、論議にもならない」話している。

 東京から大阪まで映画を観に行くのはしんどい。何処か東京の映画館でも上映することを望みたい。(2008.4.4)




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