紅白歌合戦

 紅白歌合戦を観た。大晦日は実家に帰ったため、母の好みに押し切られてしまったこともあるが、いつも洋楽ばかり聴いているため、日本の歌をじっくりと聴いてみたいという気持ちもあった。

 久しぶりに見る日本人のアーティストたちはとても新鮮で、十分に楽しむことができたのだけど、かつて‘お化け’と呼ばれたこの番組は意外に世相を反映しているように思えた。

 白組の一番手は美川憲一さんであり、その応援の「どんだけー」の流行語でおなじみになったメイクアップアーティストのIKKOさんと振付師の真島茂樹さんが来た。この情景をみたとき美輪明宏さんが或るテレビ番組で話していたことが思い浮かんだ。

 美輪さんのデビューする頃1950年代前半は当然のことながらゲイは市民権を得ておらず、街中を歩いていると石を投げられたり、「化け物」と呼ばれたりしたそうだ。美輪さんのカミングアウトした理由は、そういった世間と闘うためだったという。それから60年近く経ち、今やゲイの人たちだけで一番組作れる時代になったと語っていた。

 紅白の舞台でゲイの人たち?3人の躍る光景を見て、テレビでも美輪さんの話を思い出して僕まで感慨深い気持ちになってしまった。この演出をしたNHKの担当者はどのような考えがあったのだろうか?ただ単に近年ブレークしたふたりを同質ということで起用しただけなのか、それとももっと深いメッセージを込めたのであろうか?

 性同一性障害の中村中さんが紅組として選ばれたことは微妙な問題にも光を積極的に当てていこうという意思が感じられたし、サブカルチャーの発信地となりつつある秋葉原を拠点してAKB48の選出は新しい動きを追っていく姿勢があったように思う。

 実質的なリストラを乗り越えた馬場俊英さんや還暦間近のすぎもとまさとさんの初出場に勇気づけられた人たちも多いのではないだろうか?

 昨年の紅白は見ていて恥ずかしくなるような応援合戦もなかったし、歌優先主義でとても楽しめた。何より舞台の華やかさがいい。(2008.1.5)




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