或る友達が別の友達に使い古したPCを譲ることにした。その時、彼が一番気を使ったのはエロの痕跡を如何に完璧に消すかということだった。保存されている動画や写真はもとより、IEのお気に入りや履歴など完璧に消去しておかないと、自分の趣味がわかってしまうというわけである。

　彼のようにエロだけでなく、PCで日記を書いている人、買った本やCDのリストをつけている人もいるだろうし、またメールによってどういう人と付き合いがあるか、そしてその深さまでわかってしまう。PCというのは長いこと使っていると、その人の趣味や性癖など頭の中の隠れた状況や交友関係まで反映するようになると思う。

　僕は競馬の収支をEXCELでつけているので、そのファイルを開かれるといくら散財しているかわかってしまうし、品行方正というわけでもないので、男性が好みそうなサイトも訪問するし、ネットで得た写真も豊富にあるし、友達からもらった動画集もある。さらに、HP用に文章を書いているので、もちろん多少は脚色をしたり、設定を変えたりしているが、どういったことを考え、何をしているかということも知られてしまうし、真剣にメルトモを探していた時期もあり、そんなメールが残っていたりする。

　Jさんといっしょに暮し始める時、まずいものは処分して、品行方正、健全なPCにしようと思った。さいわい、Jさんはペルー人であるから、それほど日本語の長い文章を積極的に読もうとはしないので助かるが、見て一発でわかるその手の写真や動画は処分をした。（といってもPCのハードディスクからCDに移しただけ）でも、結局PCを買い替えることになり、今は産まれたばかりの赤ん坊のように汚れない状態である。

　以前はよく訪れていたいくつかのサイトはお気に入りに入れず、Jさんが出かけていないときにGoogleで検索して見ている。JさんはIEの履歴までは調べないので、いかがわしいサイトを見ていたとしても、ばれることはないと思われる。

　一昔前ならベッドの下とか、押入れに隠していた類の本や日記や手紙までが、今はPCの中にある。一人暮らしをしているならともかく、誰かと同居している場合、気を使わないといけない。頭の中とPCの中は非常に近い状態になっている。頭の中は見えない、しかし、PCの中は見ようと思えば見られるのである。(2007.6.1)