HPを運営していることがばれてしまったら

 このサイトは基本的に、知り合いには誰にも知らせていない。それは友人・知人に知らせた場合、書きたいことが書けなくなるからだ。働いている会社の問題や職場の人間のこと、友人・知人のこと、または自分の内面を書いたりしているため、そういったことを読まれると思うと言いたいことも言えなくなるからだ。

 しかし、中には身の周りにいる人間に自分がHPを運営していることを知らせている人もいる。僕の周りにも3人いて、ただ単に知らせるというより、積極的に宣伝している。どんなサイトを運営しているのかというと、ひとりはジャングル・ドラムンベース中心の音楽関係のページで、ひとりは競馬の予想サイト、もうひとりは自分が飼っている小鳥をデジカメで撮ってそれを載せているだけといったまことにつまらないページだ。小鳥をデジカメで撮って、それをアップするだけではなく、「せめて文章でもつけたら」とアドバイスしたのだけど、「文章が書けない」といって聞いて貰えなかった。

 この人たちが堂々と自分のHPを友人・知人に公表できているのは、自分の趣味に関してのことだからである。したがって、彼らのページを友人・知人が読んだからといって、直接的に不快な思いをすることはないだろうし、人格を疑われるといったこともない(別な意味で人格を疑われることはあるかもしれないけど…)。しかし、自分とその周囲、さらに広げて社会に関して書く場合、それは個人的な日記のような意味合いになり、とても友人・知人、さらには親兄弟にも知られたくないような内容になることが多いように思う。

 しかし、知っている人には見られたくないが、知らない人には見てもらいたいのだ。これが人間の心理の面白いところで、できれば感想や意見も訊きたくなったりする。これはネット独特のものというよりは、人間が一般的に持っている種類のものだと思う。例えばSMクラブ。自分の周りの人間には知られたくないが、自分の欲求あるいは本性を解放したいという心理があるため成り立つ商売である。

 ここのところ流行りのネット心中なども、この心理によるところが大きいように思う。以前、自殺をしたいと思ったとか、自殺を図ったことがあるとかいうことは比較的話しやすいが、「今、自殺したいと思っている」ということは自分の身近にいる人間には、言いづらいし、言ったら最後、気持ち悪がって相手にされなくなったり、逆に酷く心配されて精神科に通院するように言われたりする。ネットの掲示板を利用すれば、同じような思いを持っている人間を探すのは困難ではないし、お互い知らない同士だから「深い」ところまで話せたりする。しかし、この「深い」というのは歪んでいて、友人同士の「深さ」とは全く違う種類のものだ。

 友人同士の深さというのは多岐に渡っている。その人の性格や長所・短所、趣味や特技、恋人・友人関係、さらに仕事などいろいろな面で相手のことを知っている。しかし、ネットで知り合った「自殺仲間」というのは、まさにSMクラブの女王様と客のように、相手の欲求だけ深く知っている。SMクラブであれば商売であるから客の欲求をうまくコントロールして行き過ぎるということはないのだろうが、ネット心中の場合は自分の欲求と相手の欲求が同じベクトルを持つため、それは一直線に突き進んでしまう。これはネット心中だけでなく、出会い系サイトなどでも同じである。ただ、目的が自殺かSEXかの違いだけだ。

 普通の人間関係では浅いところから広がりが出て、そしてそれに深さが加わっていく。それに対してネットは狭く深いところから始まる。そして大半はそのままで終わる。しかし、そこから広がりを持つことができたら…。これは現代の御伽噺かもしれない。

 話がだいぶ脱線してしまった。もし、このサイトが身近にいる人間にばれたら…?
「それは僕ではありません」と僕はしらを切り通すだろう。(2005.1.12)




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