リレー小説
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読みづらい登場人物名
前刀傑(さきとうすぐる) 垣内瑠香(かきうちるか) 京美紀(みやこみき)
畔柳赳夫(くろやなぎたけお) 保科梨花(ほしなりか)
2005年11月6日分 執筆者N島
前刀と京はしばらく歓談をした。
時刻は23時を指そうとしている。
「そろそろ帰ろう。」
前刀は、明日の仕事を考えてそう言った。
「えっ?私はまだ飲み足りないのですけれども。前刀さん御馳走してくれるといったのに・・・・」
悪戯っぽく微笑む京嬢に前刀はもう少し、話していたい心持にさせられたが、会社の顔とも言う受付嬢を二日酔いにするのも良くないだろう。
「顔の真っ赤で呂律の回らない受付嬢が明朝出来上がっていたら私が責任を問われてしまうよ。それに・・・年齢なのか私がもうもちそうにない。」
事実先ほどから、それほど飲んではいないつもりなのだが目が回る。
どうやら、酔っているらしい。
疲労が溜まっているのだろうか?
「それじゃあ仕方がないですね。帰りましょう。」
京は帰り支度を始めた。
前刀はコート掛けに掛っている自分のと京嬢のそれを取ると、京嬢にコートを渡し、自分のを羽織った。
蝶ネクタイをしたバーテンに声をかけ、会計を支払う。
なんだか、頭がくらくらする。
早めに帰宅した方が良さそうだ。
「今日はご馳走様でした。」
京は受付嬢の最大の武器とも言える満面の笑顔で礼を言った。
この笑顔を見るにしては安い飲み代だったな・・・
そんなことを思いながら、前刀は先に階段を下る。
その時・・・
丁度、下り階段の半ばで前刀は階段を踏み外した。
ドドドっと大きな音を立て、前刀の身体が階段を滑り落ちる。
「っ!!!」
声にならない叫びを上げて、腰を抑える。
しこたま腰を打ってしまった。
「前刀さんっ!!大丈夫ですかっ?」
信じられない物を見るように京は目を丸くして駆けつける。
「イタタタタ・・・・すっ少し童心に帰ろうと思ってね。滑り台は水平じゃないと危険だということを学んだよ。」
精一杯の強がりを言ってみるものの、鋭痛と鈍痛が交互に襲ってきてたまらない。
それにしても・・・・
何故、階段など踏み外したのだろう。
それほどアルコールを摂取したとは思えないのだが・・・
やはり、疲労の所為で酔いやすくなっているのだろう。
一瞬平衡感覚を失って・・・・
足を下ろした先にあるべきはずだと思ったところに・・・・
あるはずの感触がなかった。
それで踏み外したのだが・・・・
前刀はコートに付着した汚れを手で払うと、京と並んで駅へと向かった。
「それじゃあ、おやすみ。」
駅に着き前刀は手を上げると、改札を通った。
「おやすみなさい・・・」
京は手を振り切れんばかり振ると、前刀の姿が見えなくなるまで、そこで見送っていた。
続く・・・・