リレー小説

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読みづらい登場人物名

 前刀傑(さきとうすぐる) 垣内瑠香(かきうちるか) 京美紀(みやこみき) 
畔柳赳夫(くろやなぎたけお) 保科梨花(ほしなりか)


2005年5月10日分 執筆者N島

「飲んでいるか?」
前刀に声を掛けたのは高木だった。


いつのまにか前刀の隣に座っている。


前刀達のいる部屋は個室となっている。
掘りごたつのように座る席で、比較的移動をしやすい。


おそらく、気に入った者同士で会話ができるようにと高木が配慮したものだと思われる。


この高木が取った「アクア」という店の見所はなんといっても天井にあるだろう。
この店の天井はガラス張りになっており、ガラスの上は水槽となっているのだ。


魚が泳ぐ様子を眺めながら、酒を嗜むという非常に優雅な店である。
そして、その泳いでいる魚を捌いて料理として出すので、味の方の評判も良いらしい。


実際に出てくる魚料理はどれも満足がいった。


工事費や維持費を考えると、どのくらいコストがかかっているのであろうか。
仕事柄、どうしても費用対効果を考えてしまう。


そんな自分に気付き、前刀は腹の中で苦笑した。


先ほどから、前刀の頭上ではエイがゆらゆらと漂っている。
その白い腹がふわふわと揺れる様は、現在の前刀の思考のようだ。


前刀は隣に来たこの悪友につい先ほどの質問をぶつけてみた。


「なあ・・・もし、自分に余命が幾ばくもないとしたら・・・・どうする?」


質問をぶつけられた高木はキョトンとした表情で聞き返した。

「前刀、いきなり何をいいだすんだ?どうもこうも・・・・そんなこと考えたことすらないよ。」


「そうか・・・そうだよな、普通は。」


「なんだ前刀、折角美女が揃っているというのに、ソクラテスを気取るつもりかい?」
高木はからかうように言った。

その言葉に前刀は先ほどからの思考を中断した。


確かに・・・呆けたように思考をしていても仕方がない。
この悪友の顔を潰さない程度には、気を遣うべきだろう。


前刀は改めて、周囲を見渡した。
本日、集まった男性は前刀・高木を含めて3人。


もう一人は高木の会社の同僚で、四位智(しいさとし)という男だった。
先ほど受け取った名刺を見る限り、高木の後輩のようだ。


女性の方も同数だった。

高木の予約が7時半からだったため、まだそれほど時間が経っておらず、前刀は先ほど質問をぶつけた保科梨花(ほしなりか)以外の名前は認識していない。

いずれも、高木が言うように、化粧品会社の女性社員だけあって、町を歩けば10人中7〜8人は振り返るだろうと思われる容姿をしていた。


ただ・・・・


前刀は思う。


酷く希薄だ。


なんだろう・・・・例えば、マネキン人形のような・・・
無機質の美しさとでも言うのだろうか。

安全なレールの上で生きている。
そんな雰囲気がする。


それがいけないというつもりはない。


ただ・・・面白みが著しく欠けている。
なんだか、そんな気がした。


前刀は余計なことは考えまいと杯をグイっとあおった。


続・・・・