リレー小説

 次回


2005年2月13日分

珈琲から立ち上る湯気をなんとなく見ながら、前刀傑(さきとうすぐる)は思考を重ねていた。

前刀お気に入りの喫茶店さぼわーるの壁にかかるカレンダーは12月のそれだった。
お冷用のグラスをせわしなく拭くさぼわーるの店主を見ながら、山のように溜まっている自分の机の上の仕事を思い出した。

おそらく、今日も23時45分の最終電車に乗ることになるだろう。
そして明日も。

2004年は思えば、変化のない年だった。
このままずっと同じことを繰り返しながら年老いていくのだろうか

未来の自分を想像して、前刀は身震いをした。
本当にいいのか、それで。

急に焦燥にかられた前刀は、まだ熱い珈琲を一気に喉に流し込むと、コートを羽織った。

「マスター、お代はここに置いておきますね。」

平成16年と刻まれた新しい500円硬貨を机の端に置き、前刀は店を出た。
チリンと鈴が鳴り、ドアを後にする。

「ありがとうございました。」
落ち着いた口調のマスターの声が、前刀の背中に浴びせられた。

さて、どうしようかな

時計を見ると、12時半を指していた。
まだ、昼休みの時間が30分ある。

昼休みとも言えども、東京の人の動きは激しい。
喫茶店を出ると、何度も人にぶつけられながらも前刀は思案した。

会社に戻るか、それとも公園で時間を潰すか、ぶらぶらするか・・・・


続・・・・