山下雅司さんが作っておられる小学校低学年と保護者向けの俳句入門です。
  第1回〜74回、75〜86回、87〜91回、92〜98回、99〜103回、104〜110回、110〜115回、116〜122回、123〜127回、128〜134回、135〜139回は入門のページのリンクからどうぞ。



おやこの俳句教室(140)
9月:秋風の吹きわたり

 秋はものさびしい季節です。夏の暑さから少し解放されて吹く風も季節の移ろいを感じさせてくれます。四季は人生にもたとえられ多くの俳句にも残されてきました。  桜島の月読神社のうらてに高濱虚子の句碑が建っています。昭和3年の秋、桜島での作品です。

 熔岩に秋風の吹きわたりけり 虚子


 先日、俳人の若松陵月さんがお亡くなりなりました。「湾」の吟行にお伴しましたが、いつも明るく吟行地への道中、バスの中でも常に17音の俳句を作り続けるお姿が思い出として残ります。俳句があって若い人とも交わることができる幸せを最後まで口にされておられました。  3月のツル吟行が同行の最後になろうとは。寂しく思うばかりです。涼しくなったらまたご一緒するつもりでした。昨年はタカの渡りの吟行で金御岳に行きました。 来月はその金御岳の吟行です。もうすぐツルも出水に飛来します。

 鶴の棹仰ぐ先師の句碑越しに 陵月

 先師の句碑は「やまなみは空への渚鶴引けり」。水一路先生と陵月さんの在りし日が偲ばれます。おやこの俳句教室の例句や選句にもご協力いただきました。合掌


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

灘風や群を率ゐて雄鹿立つ 若松陵月
(なだかぜやむれをひきいておじかたつ わかまつりょうげつ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも9月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

白萩の風をはらみて湧くごとし 中間秀幸
(しらはぎのかぜをはらみてわくごとし なかまひでゆき)



[おやこの歳時記]

季語59:くずのはな(葛の花)植物・秋
秋の七草の1つです。紅紫色の穂状の花で香りがいい。

葛の花むかしの恋は山河越え 鷹羽狩行

季語60:さんま(秋刀魚)動物・秋
30センチほどの刀身に似た細長い魚。

遠方の雲に暑を置き青さんま 飯田龍太


【投句コーナー】

夏の俳句

草の名を百覚えゆく夏やすみ イムさん

八方の青空ひろうとんぼの目 イムさん

金魚の尾なびかせ愛の刻つなぐ イムさん

避雷針通過の火星熱帯夜 まさじ

肉眼で火星の動き夏惜しむ まさじ

真夏夜の火星ひときは輝けり まさじ

おじぎ草の一枝が未だ寝そびれし 真帆

子供らの起きて来ぬ間に麦湯煮る 真帆

鳳仙花掴み損ねしもの生えて 真帆


夏の作品から各投句者ごとに一句を選び寸評をお願いします。 こちらのフォームからどうぞ。

クイズの答はこちらからどうぞ!



おやこの俳句教室(141)
10月:俳句の題材を選ぶ

 俳句は題材を選ぶことから始まります。ではその題材を選ぶにはどうしたらよいでしょうか。自分が感動したものだけに題材をしぼることがよい俳句作るのに大切なことだと先人は教えています。
 料理にたとえて、材料がよければ新鮮なおいしいものができるのと同じ。よい材料だけを選び、悪い材料は捨てる。そのように俳句も作るのだというわけです。
 しかし、そう簡単にはいきません。まずは先生といっしょに季語をさがすことから始めたらよいでしょう。学校の周りには自然がいっぱいです。校外体験も絶好のチャンスです。感動は人を動かすと言われます。作品からその感動は他の人にも伝わるはずです。


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

模写進み壁画うするる秋の風 大岳水一路
(もしゃすすみへきがうするるあきのかぜ おおたけすいいちろ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも10月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

舟の音すぐそこを行く草紅葉 竹下白陽
(ふねのおとすぐそこをゆくくさもみぢ たけしたはくよう)



[おやこの歳時記]

季語61:あきのこえ(秋の声)天文・秋
風の音、雨の音など秋を感じる。そのひびきに心打たれる。

秋声を聴けり古曲に似たりけり 相生垣瓜人

季語62:しゅうし(秋思)生活・秋
秋のころのもの思い。

山々の藍かさねたる秋思かな 廣瀬直人


【選句コーナー】

夏の俳句

イムさん選

避雷針通過の火星熱帯夜 まさじ

十五年ごとに地球に近くなる火星。今年の夏はひと際大きく見える。避雷針があることで火星の動きがはっきり分かり、太く熱々と輝いている火星は、熱帯夜の熱気などものともしない勢いが感じられます。

鳳仙花掴み損ねしもの生えて 真帆

爪紅花の別名を持つ鳳仙花は爪を染めて楽しむことがあり、指先を連想させてしまう鳳仙花を掴もうとするけれど、掴みそこねる何か分からないものの抒情がすばらしいですね。

まさじ選

草の名を百覚えゆく夏やすみ イムさん

植物の名前は知っているようで知らない。
長い夏休みだ。たくさんの草の名前を覚えているのです。

鳳仙花掴み損ねしもの生えて 真帆

鳳仙花の種を掴み損ねた。そしてそのものが生えたのです。その時間の経過が作品になっています。

真帆選

八方の青空ひろうとんぼの目 イムさん

蜻蛉のぎょろっとした複眼の動きを青空をひろっているととらえたのが面白いです。「八方の」で視線の鋭さも感じます。「拾う」は漢字でもよかったかもしれません。

避雷針通過の火星熱帯夜 まさじ

暫く見続けていたのですね。避雷針を目印にしたので火星の動きがハッキリとしました。熱帯夜のうだるような空気を火星の「火」の文字が増幅しています。

クイズの答はこちらからどうぞ!



おやこの俳句教室(142)
11月:俳句クイズ

二十四節気(にじゅうしせっき)の一つの立冬は11月7日ごろです。暦の上では冬に入ります。次に挙げた花の中に1つだけ春の花が混じっています。さてその花はどれでしょうか。

 ヒント…年中あるものですが旬は冬の野菜で漬物や煮物、(  )おろしになります。

1.さざんか(山茶花) 
2.ちゃのはな(茶の花) 
3.ひひらぎのはな(柊の花) 
4.やつでのはな(八手の花) 
5.つはのはな(石蕗の花) 
6.さとうきびのはな(砂糖黍の花) 
7.だいこんのはな(大根の花)     解答は末尾に掲載。




では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

今日となり明日となりゆく石蕗の花 松本たかし
(きょうとなりあすとなりゆくつはのはな まつもとたかし)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも11月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

鷹匠の指さしこみし鷹の胸 橋本鶏二
(たかじょうのゆびさしこみしたかのむね はしもとけいじ)



[おやこの歳時記]

季語63:ふゆうらら(冬麗)天文・冬
小春日のうららかな晴れ。風もない穏やかなようすです。

冬うらら海賊船は壜の中 中村苑子

季語64:たか(鷹)動物・冬
鷲(わし)につぐ大型の猛禽(もうきん)です。サシバが南へ帰る「鷹渡る」は秋の季語です。

鷹消ゆる伊良湖の沖の潮曇 小笠原里子


【投句コーナー】

秋の俳句


甘薯堀の背に青空の熱くなる  イムさん
鰯雲ひつじ雲入日こぼしあふ  イムさん
重くなる学童かばん露ふかし  イムさん

捨て舟を風の素通り海桐の実  まさじ
秋晴のソーラーパネル上を鷹  まさじ
秋晴や熔岩散策の異国人  まさじ

色変へぬ松変はりゆく街の底  真帆
無花果をほめて始まる立ち話  真帆
富士を探し我が家を探し登高す  真帆


〈俳句クイズの答〉

答7.だいこんのはな(大根の花)

 種を採るために残しておいた大根が年を越して花を開きます。4月の季語にあります。
季節により春(三月大根)、秋(大根蒔く)、冬(大根)(大根引き)と使われます。
クイズ(季語分類)の答はこちらからどうぞ!



おやこの俳句教室(143)
12月:「甑島のトシドン」俳句募集

 11月29日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、日本の8県10件の行事で構成する「来訪神 仮面・仮装の神々」を無形文化遺産に登録すると決定しました。
 2009年に単独登録された「甑島のトシドン」を含む「拡張」ということになり、登録年、名称も変わりました。
 単独登録から10年、「甑島のトシドン」俳句は下甑島の行事と共に歩み続けてきました。今年は平成最後という大晦日です。今回もご投稿をよろしくお願いします。
 締切は平成31年1月11日(金)、作品は一人三句までとします。
 投句は こちらのフォームからどうぞ。


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

祖父の地に闇のしづまる大晦日 飯田蛇笏
(そふのちにやみのしづまるおおみそか いいだだこつ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも12月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

神よりも鬼のよろしき神楽かな 野見山ひふみ
(かみよりもおにのよろしきかぐらかな のみやまひふみ)



[おやこの歳時記]

季語65:すみび(炭火)生活・冬
木炭の火。火鉢や炉に真っ赤な炭火は郷愁をさそう。今では炭火そのものが特別なものになった。

己れもの言はねば炭火に呟かる 林 翔

季語66:みずとり(水鳥)動物・冬
冬の水上にいる鳥の総称。鴨(かも)、鳰(にお)など。水に浮いたまま眠っている鳥は浮寝鳥。

水鳥に人とどまれば夕日あり 中村汀女


【選句コーナー】
秋の俳句

イムさん選評

捨て舟を風の素通り海桐の実  まさじ

 海岸に置き捨てられた廃れ舟を風は幾度となく素通りするのですが、海桐の実がかたくなに見守っている。遠い時間の経過を現実に留めてくれている。素晴らしい情景ですね。

色変へぬ松変はりゆく街の底  真帆

 色変えぬ松とはいえ、高層ビルの増える街並みの発展の中、巷の底に沈んでゆくのですね。これも刻の移り変わりの中に、なおも留まろうとする真実の命の美しさが見られ素晴らしい作品ですね。

まさじ選評

甘薯堀の背に青空の熱くなる  イムさん

 甘薯掘は大変な労働だ。大規模な農業は機械化されているが、作品は昔ながらの収穫。鍬を入れて次々に掘る。青空の熱くなるとは何と詩的な表現だろうか。

富士を探し我が家を探し登高す 真帆

重陽の日に丘など高いところに登られたのですね。富士を探し、我が家を探し、と叙されて広々とした感じや目を凝らす作者が見えてきます。

真帆選評

甘薯堀の背に青空の熱くなる  イムさん

まさじさんの評の通り甘藷の収穫の様子なのだが、私は身近な風景に引き寄せて、児童の体験授業を思い出した。泥だらけになりながら懸命に掘るうちに、背中がポカポカしてきて汗をかくほど。良いお天気に恵まれて、きっとおいしい芋だろうなとワクワクした。

秋晴や熔岩散策の異国人  まさじ

観光もグローバル化?して、日本全国の風光明媚なところには必ず外国人がいる。そして大概は真剣な表情で、あたりの日本人にあれこれと尋ねてくる。改めて自分の棲む所に関心を持つ機会となることもあるかもしれない。

クイズの答はこちらからどうぞ!



おやこの俳句教室(144)
1月:第10回「甑島のトシドン」俳句発表

 「甑島のトシドン」の俳句は当初、母校の児童たちにも作ってもらいました。それぞれの作品には今でもその人の思いが浮かんできます。元日の南日本新聞には下甑島の3地区であったトシドンの写真が掲載されました。
 

トシドンの俳句

年の晩亡き母伝授鮨まぜる 金剛

トシドンを知らない胸も躍り出す イムさん
トシドンの良い子になってみようかな イムさん
トシドンを慕って村へもどりゆく イムさん

受け継がん来訪神の小集落 まさじ
トシドンと約束のあり復唱す まさじ
トシドンに諭さるる子よ島育ち まさじ

トシドンを語り年夜の杯重ね 真帆
トシドンとの誓いを生きて年送る 真帆

新年の一句鑑賞

年明けてドラマの主は西郷ドンに 金剛

NHK大河ドラマ「西郷どん」は一年間放映された。五十年の生涯は新しい日本を築くため私欲などなかった。掲句の年明けてにはその年の思いが込められている。人事を尽くして天命を待った西郷は「敬天愛人」の姿勢を貫き通した。(まさじ)

トシドンは小さき島の小さき村 イムさん

「小さき」島の「小さき」村と書かれているが、それだからこそ守り継がれてきたのであろう。作者もその事実を大事に思い、誇らしくも感じているのが、言外から伝わってくる。(真帆)  次回より「トシドンの俳句」は、トシドンを含む新年詠とします。今後ともご投稿をよろしくお願いいたします。


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。


日本がここに集まる初詣 山口誓子
(にっぽんがここにあつまるはつもうで やまぐちせいし)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも1月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

さざなみは光をはこび機始 鍵和田 ゆう子(ゆうの字は、禾編に由)
(さざなみはひかりをはこびはたはじめ かぎわだゆうこ)

< [おやこの歳時記]

季語67:とうかえびす(十日戎)行事・冬
一月十日の初恵比須で商売繁盛を願う行事です。

福笹の影揺れづめの操舵室 石鍋みさ代


季語68:かんつばき(寒椿)植物・冬
冬の間に早咲きする椿のことです。

寒椿たかしの墓に鳶の笛 中島絵美



【バレンタイン俳句募集】

例年通りバレンタイン俳句を募集します。締切は2月16日(土曜)。一人3句以内でお願いします。

(募集要項)
季語:バレンタイン
投句:一人3作品まで
締切:平成31年2月16日(土)
発表:平成31年3月中旬
※投句はペンネームも可。


クイズの答はこちらからどうぞ!



おやこの俳句教室(145)
2月:バレンタインの俳句発表

告ぐるのみ愛は片道求愛日 イムさん
彷徨ひてバレンタインの巷ゆく イムさん
感謝のみバレンタインのチョコ送る イムさん
自分への褒美もバレンタインかな まさじ
ケーキ屋に並ぶ男女やバレンタイン まさじ
すべてみな売り物バレンタインデー まさじ
休日のやうな人波バレンタインデー 真帆
バレンタインデー新種のチョコを旧友に 真帆
バレンタインすぐに焦げ付くチョコレート 真帆

では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。


春浅し空また月をそだてそめ 久保田万太郎
(はるあさしそらまたつきをそだてそめ くぼたまんたろう)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも2月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

雪虫のとぶころとなる山の色 山下雅司
(ゆきむしのとぶころとなるやまのいろ やましたまさじ)


[おやこの歳時記]

季語69:よかん(余寒)時候・春
寒が明けて、なお残る寒さのこと。寒さは冬の季語。

鎌倉を驚かしたる余寒あり 高浜虚子


季語70:ねこやなぎ(猫柳)植物・春
早春にねずみ色の花の穂をつける。

山里の春はようやく猫柳 高浜虚子



【冬・新年の俳句】

沈みたる水の中にも餅のかび イムさん
華やかに刃先に咲かす餅の黴 イムさん
天の声聞き留めむと凧手繰る イムさん

冬晴れや甲突川に潮の香も まさじ
相続の登記簿届く十二月 まさじ
鶴啼くや終にもどらぬ母の声 まさじ

冬天のピントが心霊写真めく 真帆
熱燗や世は腑に落ちぬことばかり 真帆
何もかも捨てたきなどと煤逃げす 真帆

★次回は〈バレンタインの俳句〉と〈冬・新年の俳句〉の各人の作品に一句選と寸評を掲載します。よろしくお願いします。
  こちらのメールフォームからどうぞ。(真帆)

クイズの答はこちらからどうぞ!



おやこの俳句教室(146)
3月:選句と寸評

冬,新年の俳句とバレンタインの俳句から一人一句の選と寸評です。

【冬・新年の俳句】

イムさん選
鶴啼くや終にもどらぬ母の声 まさじ
細い喉の奥から力の限り啼く鶴の声、そしてついに戻らない母の声を手繰り聴こうとする作者の切ない心底が伝わって来ます。

何もかも捨てたきなどと煤逃げす 真帆
こもごもと煤塗れのような事柄の数々から逃げ出そうと払っても払いきれない思いは願いのみに終わってしまう。

まさじ選
沈みたる水の中にも餅のかび イムさん
水につけて餅にかびやひび割れができないように毎日水をかえる。生活の知恵。その沈んだ水餅にもかびをみつけた。

熱燗や世は腑に落ちぬことばかり 真帆
熱燗は熱目に燗をつけること。熱燗をつけながら、最近の世の出来事は納得のいかないことが多いと嘆く作者なのだ。

真帆選
天の声聞き留めむと凧手繰る イムさん
凧が天と地を一本の糸で繋いでいる様子はさながら糸電話の様だ。どのような天啓がもたらされるのだろうか。墜落せぬよう巧みに糸を操る臨場感。

鶴啼くや終にもどらぬ母の声 まさじ
荒涼とした大地、轟々と吹きすさぶ風。絞り出すように啼く鶴声の切なさ。様々な要素が重層的に響き合う母恋の詩だ。

【バレンタインの俳句】

イムさん選
すべてみな売り物バレンタインデー まさじ
愛がデパートに山積みにされたチョコレートととして売り物になっている。不思議な光景ですね。

バレンタインすぐに焦げ付くチョコレート 真帆
愛の想いを育てるチョコがすぐに焦げ付いてしまって、なかなか上手に伝えられない。愛てもどかしいものですね。

まさじ選
感謝のみバレンタインのチョコ送る イムさん
義理ではない。感謝である。バレンタインのチョコに日頃の感謝が込められている。感謝のみに人柄が出て素直な気持ちのいい作品。

休日のやうな人波バレンタインデー 真帆
今年のバレンタインデーは平日だった。休日と思うほどの人波として、その当日が作品となった。季語を詠む俳句のお手本となる作品だ。

真帆選
感謝のみバレンタインのチョコ送る イムさん
「のみ」と謙遜しているけれど、「感謝」は熱に浮かれた恋愛よりも、もっと懐の広い半永続的な愛なのだ。貰ったらさぞかしうれしいだろう。

すべてみな売り物バレンタインデー まさじ
ちょっとニヒルで、ダンディーな視点。大切なのはお金で買えるものだけではないけれど、気持ちもことばも、そのままではうまく伝わらなかったりするので、つい、モノに頼ってしまう。


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。


集中力分散力やめだかの子 緑川美世子
(しゅうちゅうりょくぶんさんりょくやめだかのこ みどりかわみせこ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも3月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

正門の桜吹雪を走り過ぐ 古崎真帆
(せいもんのさくらふぶきをはしりすぐ ふるさきまほ)


[おやこの歳時記]

季語71:つばき(椿)植物・春
温暖な土地に自生し五弁の花をひらく。
紅、白、一重、八重と種類も多い。

犇めきて椿が椿落としけり 岡本 眸


季語72:のあそび(野遊び)生活・春
野に出て遊ぶこと。陽気もよく最高です。

野遊や肘つく草の日の匂ひ 大須賀乙字



【ご案内】

〜春のミニ吟行〜
今年も4月29日に春のミニ吟行を開催します。平成最後のミニ吟行です。

日時…平成31年4月29日(月)昭和の日    8時30分〜10時
場所…甲突川左岸緑地一帯 春の木市
     (大久保利通像前に集合)

クイズの答はこちらからどうぞ!