山下雅司さんが作っておられる小学校低学年と保護者向けの俳句入門です。
第1回〜74回、75〜86回、87〜91回、92〜98回、99〜103回、104〜110回、110〜115回、116〜122回、123〜134回は入門のページのリンクからどうぞ。

4月:バレンタインの俳句選
バレンタインの俳句は各人の3作品より一句を選び、寸評をつけてもらいました。
○は作品、( )は選者です。
○義理チョコの取り止め突如上司より フラガールさん
義理チョコも上司が取り決めて下さる。愛より義理なのか、義理より愛なのか、渡る世間の難しさも見えますね。(イムさん)
突然のこと。義理チョコに気を使うのをやめて…というところでしょう。17音のあとに、短歌的な14音を想像させる作品です。(まさじ)
それもまた、いい決断かもしれませんね。義理チョコのお返しはたいてい奥様が準備なさるのですから。でも、それでもチョコをくれる部下がいたらどうするんでしょう・・・。(厳密に言えば、義理チョコは、まだ季語になっていないかもしれません。)(真帆)
○求愛日チョコどこか欠け父さんへ イムさん
なんだか!わかるなぁと!余ったチョコ!?渡しそびれたチョコ!?父親行きに決まったチョコ(フラガールさん)
○黙深くチョコを掻き混ぜ求愛日 イムさん
手作りチョコですね。滑らかになるまでゆっくりと、魔法をかけるようにかき混ぜるのですね。「黙深く」で真剣さも伝わってきます。(真帆)
○綴り消ゆバレンタインのチョコの文字 イムさん
チョコの文字が消えているところに気づきました。発見です。バレンタインのチョコであるのが作品の味噌ですね。(まさじ)
○アリーナに車輌ぎつしり愛の日よ まさじ
愛の日のために集まって来るのか、車輛がぎっしりである。きっと愛をぎっしり運んで来たのでしょう。(イムさん)
○バレンタイン包む真つ赤な包装紙 まさじ
思いの詰まったチョコを外見も勝負の赤い紙で包む!ドキドキした気持ちまで伝わってきました。(フラガールさん)
「包装紙は何色になさいますか?」と店員に尋ねられ、勧められるままに真っ赤な包装紙に。手際よく折り畳まれていく様子をケース越しに見ているのだろうか。それとも真っ赤な包装紙を作者が受け取ったのだろうか。チョコと言わず赤という鮮烈な色で表現している。(真帆)
○バレンタイン特設会場にて迷子 真帆
求愛のために設けられた特別の会で、迷子になってしまった。愛を求めつつ迷子になってしまう。かなしくも美しい光景ですね。(イムさん)
○愛の日の切符握りし手の湿り 真帆
手の湿り!これぞバレンタインですね。バレンタインは、愛の告白の日でしたね。
(フラガールさん)
切符握りし手とあるから、どこかへ行くための切符だ。今日ははからずもバレンタインデー。湿りは汗ばむほどだろう。青春の若さが読み手にも伝わる。(まさじ)
では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。
雀の子そこのけそこのけ御馬が通る 小林一茶
(すずめのこそこのけそこのけおんまがとおる こばやしいっさ)
@時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事
みなさんも4月の一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
時計屋の時計春の夜どれがほんと 久保田万太郎
(とけいやのとけいはるのよどれがほんと くぼたまんたろう)
[おやこの歳時記]
季語49:つばめのす(燕の巣)動物・春
南からきた燕が軒先や梁(はり)などに作った巣。
今つけし泥濡れてをり燕の巣 棚山波朗
季語50:しゃぼんだま(石鹸玉)生活・春
石鹸水を溶いた液をストローに浸して吹くと生まれる泡の玉。
しゃぼん玉相寄る二つはじけたり 林 野州花
【選句コーナー】
冬・新年の俳句
イムさん選
耕二の句と自作持ち寄り納め句座 雅司
年中を作句の日々とはいえ、いざ年を納めようとするとつい欲張ってしまいたくなる句座。 何とか詩心をとらえて年を納める。作句生活の楽しさと厳しさが見えて来るようですね。
平成の青を湛えて初御空 真帆
平成30年、平成の初御空は、振り返る日々の青さをたっぷりと湛えているのですね。来るべき元号の日々を前に、過ぎゆく刻が彩濃く伝わってきます。
雅司選
凧揚げのスマホの空は狭すぎる イムさん
スマホで凧揚げを撮影しようとするもそのスペースは小さい。眼前に広がる視界は大きいのに、スマホの空は狭いと感じた作者だ。
油絵の如き艶なる冬木立つ 真帆
冬木の艶を油絵のようだと作者は感じている。冬木立のさまがこのように喩えられるのは俳句の醍醐味だろう。
真帆選
凧揚げのスマホの空は狭すぎる イムさん
凧を撮ろうとスマホを構えて、作者はその先の青空に気付いたのですね。どのように撮影したらインスタ映えするでしょうか。スマホより俳句の方が印象をしっかり留められたのでは。
初夢に故郷の山野犬の碑 雅司
懐かしく、ちょっと切ない初夢でしたね。下五に意外性があって、でも風景に馴染んでいる様子が伝わってきました。
------ご案内-------------------------------
〜春のミニ吟行〜
日時…平成30年4月29日(日)昭和の日 8時〜10時
場所…甲突川左岸緑地一帯 春の木市
(大久保利通像前8時集合)
〜春の俳句募集〜
春の俳句は5月4日が締切です。今回から3句でお願いします。
こちらのフォームをご利用ください。
5月:春のミニ吟行
俳句はスケッチ
スケッチブックと鉛筆をもって絵を描いた日を思い出してみましょう。まずは描く何かをさがすことからはじめたはずです。
俳句もまったく同じです。作品にする対象をみつけるわけです。それには、その場所に行って歩くことからはじめたらどうでしょう。答えは自然が教えてくれます。
スケッチも俳句も、まずは対象物さがしからスタートですね。限られた時間に作品を完成させるためには何回も体験するしかありません。
今年もミニ吟行は春の木市会場周辺、4年続けて同じ場所。はじめて甲突川の水辺におりてみました。ハトやスズメが気持ち良さそうに遊んでいました。近づいてもおどろきません。川をのぞくと、小さな魚の群れも見つけました。お天気もよく、あっという間の楽しい2時間でした。
春光や甲突川の仔魚の群れ まさじ
では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。
ぼうたんの百のゆるるは湯のやうに 森澄雄
(ぼうたんのひゃくのゆるるはゆのやうに もりすみお)
@時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事
みなさんも5月の一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
五月闇ホテルのオートロック音 淵脇護
(さつきやみほてるのおーとろっくおん ふちわきまもる)
[おやこの歳時記]
季語51:しんちゃ(新茶)生活・夏
今年初めて摘んで製造したお茶のこと。製茶は作ること。
新茶匂ひ雨の音して伊豆明ける 横山仁子
季語52:はざくら(葉桜)植物・夏
桜の花が終わると若葉が美しい。緑に心がいやされます。
葉桜や墨痕匂ふ朱印帳 武田孝子
【投句コーナー】
春の俳句
土筆出る光のはしる道しるべ イムさん
桜蕊読めない文字を地に描く イムさん
木々の間を抜けて緑の風になる イムさん
犬連れて維新ロードや花の昼 まさじ
海鳥もわれも揉まるる春北風 まさじ
春潮や鯖のとびたす袋より まさじ
浪費癖なだめつつ往く花の宵 真帆
春雨や笑顔ばかりの追悼号 真帆
日の暮るるまで蒲公英を道標に 真帆
春の作品から各投句者ごとに一句を選び寸評をお願いします。
こちらのフォームからどうぞ。
6月:俳句エッセイ
福永耕二先生と「青の俳句」
福永耕二先生は国語の先生でした。1938年に鹿児島県川辺町生まれで今年は生誕80年となります。1980年に若くして亡くなられたのが残念ですが、65年には上京されて俳句雑誌の編集長も務めながら、若手俳人の指導に努力されています。
先生のエッセイの中で「俳句は姿勢と考える。俳句はそれを生きて行ずる人の姿勢である」と言っておられます。
人間には楽しいことも苦しいことも辛いこともあるかもしれませんが、自分自身が美しく明るい生き方をしなければなりません。先生は古典から多くのことを学び俳句に情熱を注がれました。
今年は南九州市かわなべ青の俳句大会が20回目となります。福永耕二先生は高校生から俳句を始め、大学生の時には中央俳壇の雑誌で巻頭を飾りました。故郷の川辺に句碑を作って先生の功績を称えたいと多くの募金が集まり、その募金で少年少女の俳句大会は生まれました。9月中旬ごろに作品の締切がありますが今年も多くの作品が全国から寄せられることでしょう。
では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。
さなぶりを終へ啄木の村しづか 角川春樹
(さなぶりをおへたくぼくのむらしづか かどかわはるき)
@時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事
みなさんも6月の一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
トランジスタラジオから吹く青嵐 緑川美世子
(とらんじすたらじおからふくあおあらし みどりかわみせこ)
[おやこの歳時記]
季語53:かに(蟹)動物・夏
山や川などにいる小さなカニ。
腹の子をこぼして蟹の崖登る 北村 保
くわのみ(桑の実)植物・夏
木苺に似ている赤い実は紫色になり甘酸っぱい。
山の辺の寝釈迦に供ふ桑苺 峯 高子
【選句コーナー】春の俳句
イムさん選
海鳥もわれも揉まるる春北風 まさじ
春とは言え冷たく残る風に命あるもの同士揉まれながら活き抜いて行くのですね。
日の暮るるまで蒲公英を道標に 真帆
夕暮が少しずつ遅くなり、蒲公英の明るさをたどりつづける楽しさも春ならではの大切な1句ですね。
まさじ選
桜蕊読めない文字を地に描く イムさん
桜蕊は、さくらしべと読むが「読めない文字を地に描く」と言われてみると、その雰囲気が伝わってくるようだ。
春雨や笑顔ばかりの追悼号 真帆
外はしとしと降る春の雨。俳句雑誌だろうか。明るく笑顔の写真が満載だった追悼号になった。幸せな人生を送られたのだ。
真帆選
木々の間を抜けて緑の風になる イムさん
風には色はないけれど、初夏の初々しい緑の中を抜けてきた風は肌に清々しい。新緑、若葉風と言わなかったのが手柄。
海鳥もわれも揉まるる春北風 まさじ
春北風の荒ら荒しさと、風にもまれながら飛んでゆく海鳥の逞しさ。そして力強く立つ作者の姿も見えるようだ。
7月:ジュニア俳句の視点
「第19回南九州市かわなべ青の俳句大会」の青の大賞作品より、小学生の俳句3作品を転載します。作者名は割愛し、学年のみ記載しています。
俳句は季節、感動、想像などが読む人に伝わらなければなりません。焦点を何にしぼったのかわからない作品は選に入りません。3作品をみてみましょう。
目をとじてブランコこぐとぼくは鳥 小学校2年
海ガメといっしょに母もないている 小学校3年
せ泳ぎで入道雲を真っ二つ 小学校4年
ブランコの作品。目をとじた作者が表現されています。「ぼくは鳥」とまとめています。鳥になった気分がよくできています。季語はブランコ。(生活、春)
海ガメの作品はどうでしょう。「いっしょに母もないている」と、ある砂浜での産卵の場面をよく伝えています。季語は海ガメ。(動物、夏)
せ泳ぎの作品。プールに映る「入道雲を真っ二つ」と、その発想がみごとです。せ泳ぎのようすが目に浮かびます。季語は泳ぎ。(生活、夏)
3作品の「と」「も」「を」の1字がいかされています。
俳句の約束ごとの5、7、5がまもられています。
だれもが一度読んだら心に残る俳句です。
優秀作品はこのように、読む人にもその情景が想像できるものですね。
では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。
名を呼べば近づく牛の涼しさよ 関こまち
(なをよべばちかづくうしのすずしさよ せきこまち)
@時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事
みなさんも7月の一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
日に耐へて帰り待つ花鹿の子百合 山下雅司
(ひにたへてかえりまつはなかのこゆり やましたまさじ)
[おやこの歳時記]
季語55:やまびらき(山開)行事・夏
夏山登山開始の日です。富士山の山開きは7月1日。毎年、ニュースで紹介されます。
神官の背を雲這へり山開き 岡田日郎
季語56:なつのほし(夏の星)天文・夏
星だけでは季語になく、夏の星とか星涼し、梅雨の星などと使います。
火の島は夏オリオンを暁の星 中村草田男
【第20回南九州市かわなべ青の俳句大会】
鹿児島県南九州市のホームページに募集要項が掲載されています。今回は第20回の記念大会です。小学生から高校生までのみなさんの力作が楽しみです。詳細は同大会の案内をご覧ください。
8月:セミの俳句
8月は7日が立秋です。暦のうえでは秋となり、夏から秋の季語へと移ります。
たとえばセミ。蝉は7月の季語になっています。鳴くのはオス。クマゼミ、アブラゼミ、ミンミンゼミなどです。夏以外を季語では春の蝉、秋の蝉と区別しています。
秋の蝉は少しずつ減りながら鳴いている蝉のことですが寂しく感じますね。
ヒグラシ(蜩)やツクツクボウシ(法師蝉)は8月の季語になっています。俳句を作っている人は、蜩や法師蝉の作品は必ずあるでしょう。蜩はカナカナ、カナカナと澄んだ声。法師蝉はツクツクホーシ、ツクツクホーシと同じセミでも違う鳴き声です。
作り方もさまざまですが、俳句を作った場所や作者の思いが伝わってきます。
蜩や山の水引く坊の風呂 加古宗也
夏休みは家族で出かけることも多いでしょう。セミの俳句を待ってます!!
では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。
蜩のなき代りしははるかかな 中村草田男
(ひぐらしのなきかわりしははるかかな なかむらくさたお)
@時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事
みなさんも8月の一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
水引草を口にくはへて牛をひく 石原八束
(みずひきをくちにくわえてうしをひく いしはらやつか)
[おやこの歳時記]
季語57:しんりょう(新涼)時候・秋
秋になってから感じる涼しさです。
新涼や和紙に透けたる菓子の紅 阿部悦子
むくげ(木槿)植物・秋
朝咲いて夕方しぼむ葵に似た花です。
白木槿嬰児も空を見ることあり 細見綾子
【第20回南九州市かわなべ青の俳句大会】
鹿児島県南九州市のホームページに募集要項が掲載されています。今回は第20回の記念大会です。小学生から高校生までのみなさんの力作が楽しみです。詳細は同大会の案内をご覧ください。