山下雅司さんが作っておられる小学校低学年と保護者向けの俳句入門です。
  第1回〜74回、75〜86回、87〜91回、92〜98回、99〜103回、104〜110回、110〜115回、116〜122回は入門のページのリンクからどうぞ。



おやこの俳句教室(123)
4月:バレンタイン俳句発表(選句)

 バレンタイン俳句は、投句と選句を分けています。今回は投句者ごとの作品から各人が一句を選び寸評を付けています。
 バレンタイン俳句大賞は選句をお願いした選者7人の各人3句選の集計で、得点が一番多かった作品です。なお、投句者の選は、作者名を前回の作品発表で掲載したため大賞の選からは除きました。  

☆バレンタイン俳句大賞
バレンタインチョコ選る少女二人連れ 真帆


☆投句者の一句選と選評

(フラガールさん選)

お返しのこと考えるバレンタイン こうじさん
そうみたいですね!ホワイトデーのお返しが困る…そんな声が聞こえそうです。

バレンタインなのはな号のホーム出づ まさじ
急いで帰りたいのに、トラブルがぁ…愛の告白も何が起こるか分からないと教えて下さってる気がします。

チョコレート一粒添えてバレンタイン 真帆
一粒に色々な意味が込められてる感じがします。

(こうじさん選)

古き良き義理と人情バレンタイン フラガールさん
義理と人情は今もかたちを変えながら繋がっています。
 
熱すぎるチョコ崩れゆく求愛日 イムさん
熱さにも温度差あるかと思いますが、いつまでも熱い思いはいいですね。

朝日いま雲間をバレンタインデー まさじ
二月の朝日、思春期の思いは特に新鮮でしょう。

バレンタインチョコ選る少女二人連れ 真帆
少女二人の思いはどうでしょう。よい思い出のひとつになるのでしょうか。 

(イムさん選)

バレンタインチョコ山盛りの巷かな こうじさん
巷に求愛のチョコレートが山盛りになっている景、どこでも見られる景ながら、言われてみれば楽しい世界ですね。

人生はチョコではないとバレンタイン フラガールさん
人生はチョコで甘くまとめられて良いものか?何となく笑いながらチョコを食む抵抗感。そんなものがあってもよいですね。

朝日いま雲間をバレンタインデー まさじ
雲間を見え隠れする朝日。期待しながらもどことなく不安な求愛日の感じがよく出ています。

鳥影の見えぬ荒天バレンタイン 真帆
自然界の求愛は、バレンタインデーといえど許されるものではない。荒天をひそかに鳥たちはどこで耐えているのでしょうか?求愛は時として厳しいものですね。

(まさじ選)

デパ地下のお祭り騒ぎバレンタイン フラガールさん
デパートの地下の食品売り場。バレンタインチョコを買いに来た女性に声をかけられた思い出がある。普段でも活気のある売り場だが、特にお祭り騒ぎの賑わいだった。

お返しのこと考えるバレンタイン こうじさん
バレンタインのチョコをもらった作者はホワイトデーのお返しを何にしようかと考える。そのことを素直に俳句にしたところがいい。センスのよさも相手に伝える絶好機だろう。

熱すぎるチョコ崩れゆく求愛日 イムさん
胸ポケットにチョコを入れていたら熱でやわらかくなっていた。食べるのに困ったことを思い出した。作品は、正直熱すぎる思いかも。求愛日の一コマだ。

バレンタインチョコ選る少女二人連れ 真帆
あれにしようか、これにしようかとバレンタインチョコを選ぶ少女がいる。二人連れで仲のよさに会話もはずむ。形や大きさ、パッケージも様々。最終的にはお値段だろうか。

(真帆選)

人生はチョコではないとバレンタイン フラガールさん
句に描かれているのとは反対に、チョコレートのような人生って(あるいはチョコから始まる人生って)どんなだろうと想像した。肯定派も否定派も良き人生を!

お返しのこと考えるバレンタイン こうじさん
義理堅い作者の人柄がわかる。チョコを手渡す側もいろいろと迷いながら決めたのに違いない。返礼を選ぶ間、自分のことを考えてくれるのだから、それだけでもあげた甲斐があるというものだ。

求愛日端に息子の名をえがく イムさん
「もちろん、世界で一番好きなのは息子よ」というママ友が身の回りにもたくさんいる。本当に、無条件に愛おしい。「名」なので、「書きぬ」「書けり」くらいでいいのでは。

バレンタインなのはな号のホーム出づ まさじ
あまり、因果関係を考えず、取り合わせの句としていただいた。バレンタインの頃はまだ春寒の頃だが「なのはな号」というネーミングがこれからの明るい季節を感じさせる。


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

ゆるやかな風が漕ぎ手の花筏 吉村久佐
(ゆるやかなかぜがこぎてのはないかだ よしむらひさ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも4月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

まだ吾子に見えぬ蝶さへ来て祝す 福永耕二
(まだあこにみえぬちょうさへきてしゅくす ふくながこうじ)



[おやこの歳時記]

季語25:かぜひかる(風光る)天文・春
春の日に風さえもうらうらと光る感じです。風のまぶしさや輝きが満ちあふれています。

風光る鳩と子供のゐる広場 山下雅司

季語26:ももちどり(百千鳥)動物・春
春の野山には小鳥たちの楽しい鳴き交わしが聞こえます。百は多くを意味することばです。

百千鳥山遠くあり近くあり 星野麦丘人

------ご案内-------------------------------

【春のミニ吟行】
日時/4月29日(土)昭和の日 8:00〜10:00
場所/甲突川左岸緑地帯 春の木市(大久保利通像前集合)

【春の俳句募集】
春の俳句の締切は5月4日です。お一人5句以内でよろしくお願いします。
こちらのフォームをご利用ください。


クイズの答はこちらからどうぞ!



おやこの俳句教室(124)
5月:春のミニ吟行

 鹿児島中央駅近く甲突川左岸広場での木市は毎年、春と秋に開催されています。木市には様々の花苗木が所狭しと並び鹿児島の風物詩です。
 3回目のミニ吟行はお天気にもめぐまれました。以下、当日の作品です。来月は「この一句」と題して観賞します。一句を選んでご投稿ください。(詳細は、今月末尾をごらんください 真帆)

春のミニ吟行

日時/4月29日(土)昭和の日 8:00〜10:00
場所/甲突川左岸緑地帯 春の木市周辺

  @若葉風古き一枝をまた落とす
Aスケッチの入選展示春の木市
B春の川ビルを逆さに映し出す
C自転車の風の生まるる昭和の日
Dしばらくはベンチに仰ぐ楠若葉
E風生まれ地に走りたる残花かな
F木洩れ日や落花ひとひら身に纏ひ
Gここちよき朝の川岸楠若葉
H木洩れ日にゆるる葉の影昭和の日
Iなごりかな花びら音もなく川へ
Jジョギングや桜蘂ふる維新道
K犬連れて朝の散歩や若葉風
L風光る子らのスケッチ張り出され
M甘夏の花の香りを親しめり
N昭和の日国旗掲げる家一つ
O深呼吸して公園の躑躅燃ゆ
P藤棚に風のささやき春惜しむ
Q石橋のきしむ音せり昭和の日
R春の木市子らのスケッチみごとなる
S水をやる眼差し優し苗木市


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

飛ぶ鳥を絶やさざる空更衣 大岳水一路
(とぶとりをたやさざるそらころもがえ おおたけすいいちろ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも5月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

ひとの恋あはれにをはる卯波かな 安住敦
(ひとのこいあはれにをはるうなみかな あずみあつし)



[おやこの歳時記]

季語27:ころもがえ(更衣)生活・夏
春の衣服を夏物に替えることです。最近はクールビズで夏物もカラフルなものが目立ちます。

水色に更衣して立行司 大櫛静波

季語28:ははのひ(母の日)行事・夏
五月の第二日曜日、お母さんへ感謝する日となっています。父の日は六月の第三日曜日。

母の日のもとより父もすこやかに 高橋悦男

【投句コーナー】

春の俳句

春雷雨やみより朝の影ひろう イムさん
地虫らの雨の止み間を頭出す イムさん
曇り空みがき若葉の育ちゆく イムさん
耳もとを光のあふれ蜂さわぐ イムさん
明かりゆく雷雨の過ぎし花の塵 イムさん

満開の桜の下の昼餉かな 雅司
復元のすすむ櫓や花の雨 雅司
朝日さす竹百幹の春山家 雅司
桜咲く風にささやきありさうな 雅司
山路ゆく今を盛りの岩躑躅 雅司

春暑し川上り来る海の風 真帆
胴吹の花も残らず葉となりぬ 真帆
あめつちにみづのひかるやむつごろう 真帆
進級す金の背文字の古書抱いて 真帆
面影に寄り添ひて生く花の昼 真帆


------ご案内-------------------------------

【春の俳句選】 春の作品から各投句者ごとに一句を選び寸評をお願いします。 【春のミニ吟行】一句鑑賞も こちらのフォームをご利用ください。


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おやこの俳句教室(125)
6月:吟行「この一句」

 感動の一句をまとめることは大変です。季語は一つ、感動はすっきりした表現が大切です。俳句は説明しないことです。春の吟行20作品は、どの俳句が「この一句」になったでしょうか。(  )は選者名です。

(芳泉選)
P藤棚に風のささやき春惜しむ

(こうじさん選)
L風光る子らのスケッチ張り出され
こども達のいきいきとしたスケッチが風光ると張り出されで相互に感じます。

(イムさん選)
C自転車の風の生まるる昭和の日
 移動には自転車が主流だった昭和の風が自転車を漕ぐと入り混じって生まれてくるのですね。

(まさじ選)
S水をやる眼差し優し苗木市
 苗木市の準備は容易ではない。作者は、木市会場で水まきしている人に遭遇した。その眼差しは優しい。

(真帆選)
Dしばらくはベンチに仰ぐ楠若葉
 散策中一息つこうとベンチに座ったのですね。木漏れ日の美しさにふと見上げれば、楠若葉が透けるよう。


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

木下闇教科書で切る指の腹   緑川美世子
(こしたやみきょうかしょできるゆびのはら  みどりかわみせこ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも6月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

忘らるることの涼しさ陶の椅子 春田千歳
(わすらるることのすずしさとうのいす はるたちとせ)



[おやこの歳時記]

季語29:しろた(代田)地理・夏
田植えの準備ができた田んぼのことです。この代田で「せっぺとべ」という田植え前の行事もあります。

幣たれてよき雨のふる代田かな 篠田悌二郎

季語30:はすのうきは(蓮の浮葉)植物・夏
画家モネの睡蓮の絵が目に浮かびます。水面の蓮の丸い浮き葉は小さく動きません。種類も多いそうです。

飛石のごとくに蓮の浮葉かな 檜紀代

【選句コーナー】

春の俳句

イムさん選

桜咲く風にささやきありさうな 雅司
櫓も竹百幹もすばらしく思いましたけれど、桜がささやくように咲いているという発見いいですね。

進級す金の背文字の古書抱いて 真帆
最近は手軽になってしまった出版技術、それだけに金の背文字の古書の重さを抱いて進級する大切さがしみじみ感じられました。

雅司選

曇り空みがき若葉の育ちゆく イムさん
曇り空をみがくとは発想がいい。若葉は日増しに緑を盛んにする。その勢いは曇天までにも達するか。

面影に寄り添ひて生く花の昼 真帆
切ない思いを作品で表現したのでしょうか。面影に寄り添うとは生きること。花の昼が効果的。

真帆選

曇り空みがき若葉の育ちゆく イムさん
若葉のつややかな質感、風に揺れる枝の動きが目に見える様で、おもわず大きく伸びをしたくなります。曇り空といっても明るさを感じます。

復元のすすむ櫓や花の雨 雅司
「復元」から、その櫓の失われた歴史をあれこれ想像しました。花の雨が情景を落ち着いたものにしています。


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おやこの俳句教室(126)
7月:夏の季語集

今回は夏の季語をあげてみます。みなさんはいくつ知ってますか?暑さがきびしい季節です。食べ物や飲み物が多くなったかもしれません。もうすぐ夏休みです。夏の俳句にチャレンジしてみましょう。

〔問題〕季語の中に秋の季語が1つ混じっています。どの季語かわかりますか?解答は次回に。

たなばた(七夕)みなづき(水無月)なつ(夏)あせ(汗)はんかちいふ(ハンカチーフ)すずし(涼し)ひよけ(日除)あいすくりいむ(アイスクリーム)なつりょうり(夏料理)ひやざけ(冷酒)びいる(ビール)ゆかた(浴衣)らべんだあ(ラベンダー)えぞぎく(蝦夷菊)やましたたる(山滴る)にじ(虹)かみなり(雷)ゆうだち(夕立)ねむのはな(合歓の花)ゆり(百合)たき(滝)うすもの(羅)なつしゃつ(夏シャツ)うちみず(打水)しゃわあ(シャワー)めろん(メロン)よみせ(夜店)かたかげ(片蔭)ひしょ(避暑)とうもろこし(玉蜀黍)きゅうり(胡瓜)しょうちゅう(焼酎)せっけい(雪渓)うめぼし(梅干)


では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

逢ふことの愉しき浴衣着たりけり 草間時彦
(あふことのたのしきゆかたきたりけり くさまときひこ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも7月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

睡蓮や鯉の分けゆく花二つ 松本たかし
(すいれんやこいのわけゆくはなふたつ まつもとたかし)



[おやこの歳時記]

季語31:ゆり(百合)植物・夏
山野に自生の百合。鬼百合、鉄砲百合、鹿の子百合など種類も多い。

かのこゆり小さき港を眼下にし 西村 数


季語32:なつのやま(夏の山)地理・夏
夏季の山は濃い緑色になります。夏嶺、青嶺には壮観さがあります。

夏山と熔岩(ラバ)の色とはわかれけり 藤後左右


【夏の俳句募集】


夏の俳句の締切は8月6日です。お一人5句以内でよろしくお願いします。(締め切りました)

クイズの答はこちらからどうぞ!



おやこの俳句教室(127)
8月:日記から俳句を作ってみよう!

 日記は、その日の出来事を記すことですね。どこに行ったとか、こんなことがあったなど、思うままに自由に書きます。字数も決まっていません。
 では俳句はどうでしょう。暖い、暑い、涼しい、寒いなど四季の季語(季節のことば)と17音(5・7・5)で作る約束ごとがあります。日記から俳句を考えてみましょう。

 さいとうしくんの日記と俳句です。
(日記)
 きょうはきょうりゅうてんにいきました。なつやすみでたくさんのひとでいっぱいでした。○○かんにはいるのに30ぷんもかかりました。とてもあつかったです。
(俳句)
 なつやすみきょうりゅうてんへながいれつ

 日記には「ながいれつ」という言葉はでてきません。○○かんに入るのに30分もかかったことから長い行列が想像できますね。


   前回の〔問題〕です。
 季語の中に秋の季語が1つ混じっています。どの季語かわかりますか?  →(正解)とうもろこし(玉蜀黍)。とうもろこしは秋の季語です。夏の季語だと、とうもろこしの花。



では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

海よりも山のまぶしき墓参かな 竹下白陽
(うみよりもやまのまぶしきぼさんかな たけしたはくよう)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも8月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

魚から人に戻りて日焼せり 緑川美世子
(さかなからひとにもどりてひやけせり みどりかわみせこ)



[おやこの歳時記]

おしろいばな(白粉花)植物・秋
夕方から咲きはじめ朝しぼむラッパ状の花。紅、黄、白などの色です。実の中には白い粉があります。

白粉花にまたしづかなる宵の来し 坂本碧水


ぼんおどり(盆踊)生活・秋
踊りといえば盆踊りのことです。櫓を囲んで踊りの輪が広がります。日本各地でさまざまな踊りがあります。

手を上げて足を運べば阿波踊 岸風三楼


【投句コーナー】

夏の俳句

雲の上に雲のかがやく夏の空 イムさん
入道雲みるみる崩れひかる雨 イムさん
瞳のなか蜻蛉の群の胸を張る イムさん
油虫飛宙を抜け出し肩つかむ イムさん
砂利の間を松葉牡丹の色を分く イムさん

ひめますの群れ黒々と夏の湖 まさじ
夏草に覆はれてゐるヌポロかな まさじ
雪渓を遠目に砂と違へけり まさじ
大空をパラセーリング朝涼し まさじ
パン工房のフレンチ美味や緑さす まさじ

夕凪の島膨らますおけさ節 真帆
熱帯夜湯舟に浸かりゐるやうな 真帆
枯節の木目見定むる油照 真帆
手を振りぬ流行(はやり)の丈の浴衣着て 真帆
夏季休暇大人の塗絵子の論語 真帆


夏の作品から各投句者ごとに一句を選び寸評をお願いします。 こちらのフォームからどうぞ。


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