山下雅司さんが作っておられる小学校低学年と保護者向けの俳句入門です。
  第1回〜74回、75〜86回、87〜91回、92〜98回、99〜103回、104〜110回、110〜115回は入門のページのリンクからどうぞ。



おやこの俳句教室(116)
9月:作句のポイント

 俳句を作ってみようと言われても、はじめての人は何を何からしたらよいか分かりません。ここで、作句のポイントを3つあげてみましょう。
(1)5・7・5で成り立っている
 俳句のかたちです。17音にすることでリズムが生まれます。
  (2)その内容に季語が入っている
 何を言いたいのかです。そのため季節のことばを使います。
  (3)自分のことばで作られている
 自分のことばで作っているかです。人まねはすぐわかります。

 前月掲載の「青の俳句」の中から一句あげてみます。「さかあがり見てくれていたあきの空」小学2年生の作品です。
 3つのポイントが作品に入っていますね。
(1)「さかあがり/見てくれていた/あきの空」
(2)あきの空で大きな作品となりました
(3)鉄棒の練習を見てくれていた感動

 はじめて俳句を作ったら3つのことを再確認してみてください。声に出して読むとリズムが分かります。うっかりすると季語が入っていない場合もあります。作者の体験や日常にも作品の題材がいっぱいです。


 では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

つきぬけて天上の紺曼珠沙華 山口誓子
(つきぬけててんじょうのこんまんじゅしゃげ やまぐちせいし)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも9月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

窯変の皿に野分の雲激つ 緑川美世子
(ようへんのさらにのわきのくもたぎつ みどりかわみせこ)

[おやこの歳時記]

季語11:あきしお(秋潮)地理・秋
秋の潮は春の潮と同じように干満の差が大きくなります。陰暦8月15日の満月の大潮が初潮。澄み渡る空の下の秋の潮は美しい。台風が過ぎると、海は急に深い色になります。

秋の潮速くて船の翳乗らず 佐野まもる

季語12:むし(虫)動物・秋
むしは虫の総称です。蝉が鳴きおわると虫の季節となります。耳をすましてみましょう。さわやかな朝の空気に鳴いています。夜になると多くの虫が合唱するように鳴いています。

母と寝る一夜ゆたかに虫の声 栗生純夫


【選句コーナー】

イムさん選

夕焼に塗り込められて道昏し 真帆
空一面を夕焼けが描き塗り込めてゆく鮮やかさを視線は捉えながら、身は夕闇に包まれてゆく。内面の輝きが明日への日々を活き立たせているのですね。

火の島はレベル2のまま緑立つ 雅司
燃えたぎるマグマの息吹はレベル2に閉じ込めたまま、豊な緑を保っている火の島。自然の力強さがひしひしと身に感じられます。

雅司選

夏の空サッカーボール逸れてゆく イムさん
サッカーボールを蹴るが大きい弧を描いて逸れた。夏空の下、観客席からその試合に声援をおくる人がいる。

山の日は考を恋ふ日や天気雨 真帆
今年から制定された「山の日」。あいにくの雨にしずかにお父様を懐かしむ作者だろう。山が好きでおられたか。

真帆選

鯉のぼり風の形をつくりつぐ イムさん
鯉のぼりの、膨らんだり萎えたりしながら刻々と姿を変えている様子を「風の形」と言い切っています。「つくりつぐ」という言葉の余韻に負けない力強さを感じます。

梅雨兆す雲の中なる桜島 雅司
桜島の実際の姿だけでなく心理的な存在感も伝わってきます。雲に隠れていても桜島はそこにあり、時折は降灰や噴火もあるのでしょう。連山ではなく孤高の山ならではの写生の確かさ。


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おやこの俳句教室(117)
10月:暮らしに俳句を残そう!

 日々の暮らしは、毎年同じように同じことの繰り返しで進みますが、その暮らしは季節に影響されます。猛暑の夏もあれば、暖冬もあります。
 俳句を作っていると、四季の移り変わりを強く感じます。自然の中に常に身を置いて、自分をみつけることを訓練しているからでしょう。
 五感に何かを感じて毎日を過ごしているのに、何も残らないのは残念です。17音の俳句はその意味で財産です。  嬉しいことに、俳句は形で残ります。また、その季節になると好きな俳句が頭に浮かんできます。暮らしの中に俳句を残してみましょう。


 では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

くちびるを出て朝寒のこゑとなる 能村登四郎
(くちびるをでてあさざむのこえとなる のむらとしろう)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも10月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

渡り鳥みるみるわれの小さくなり 上田五千石
(わたりどりみるみるわれのちさくなり うえだごせんごく)


[おやこの歳時記]

季語13:うんどうかい(運動会)生活・秋
スポーツの秋。学校をはじめ職場でも運動会が行われます。特に小学生の競技はかけっこ、リレーや玉入れ、綱引き、踊りなど盛りだくさんです。最近は春の運動会もあるようです。

運動会足並揃ふ大百足 堀口かね子

季語14:あきのそら(秋の空)天文・秋
秋の澄みわたる空です。天高し、秋高しといわれるように空が高く、四季の中でも秋天の美しさはことのほかです。音も澄んで感じます。一方で秋の空は変わりやすいこともあります。

草山に馬放ちけり秋の空 夏目漱石


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おやこの俳句教室(118)
11月:作句のヒント

歳時記には俳句作りのヒントが詰まっています。春、夏、秋、冬、新年の季別に、さらには月別になっています。季語は時候、天文、生活、地理、植物、動物、行事などに分類され、例句が掲載されています。
 今回は、季語を探しに教室から外に出てみましょう。十一月は冬に入る月です。立冬(11月7日ごろ)から暦では冬になります。
 作句はその日の天気で使う季語も変わります。冬初めて降る時雨は「初時雨」、風の冷たさなどに冬らしくなってきた感じは「冬めく」、ぽかぽか陽気の「小春日和」もあります。
 俳句は「何をどう詠むか」です。まずは対象を探すことから始めます。絵を描く、写真を撮るにも対象を絞ります。俳句も何を言いたいかです。

 [作句の心得]
 *情景を切り取る…ここぞという場所でじっくりと。
 *平常心で作品に…うまく作ろうとすれば失敗する。
 *言葉メモをとる…句帳に思ったままのメモをとる。
 *十七音に仕上げ…5・7・5にまとまっているか。
 *歳時記で確認を…季語は誤りなく使われているか。

 俳句は、季語で5音ほど占めるため、あとの音数をひとくくりにして、言いたいことを表現します。平成28年11月の俳句カレンダー(俳人協会)より一句引用します。

 人声の空へ抜けたる返り花 瀬戸清子

 構成は5・7+5(季語:返り花)。季節はずれの花を見つけた感動です。人声(音)でその喜びが表され、その声は空へ抜けたと捉えました。葉が落ちて枝ごしの空があるだけ。写真や絵画では表現できない音を活かした作品です。


 では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

息荒く浅間颪にまむかへる 相馬遷子
(いきあらくあさまおろしにまむかへる そうませんし)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも11月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


◇おやこの俳句鑑賞

次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

冬の水一枝の影も欺かず 中村草田男
(ふゆのみずいっしのかげもあざむかず なかむらくさたお)


[おやこの歳時記]

季語15:しょとう(初冬)時候・冬
立冬(11月7日ごろ)後の冬の初め、三冬の初めをさしています。冬になったばかりで冬らしくなってきます。

浪々とふるさとみちも初冬かな 前田普羅

季語16:ばしょうき(芭蕉忌)行事・冬
俳人、松尾芭蕉の忌日。元禄7年(1694年)陰暦10月12日没。51歳の生涯でした。時雨忌、桃青忌、翁忌。

芭蕉忌の行火たまはる瑞巌寺 沢木欣一


【投句コーナー】

秋の俳句

空いっぱい運動会の音の占む イムさん
予定表見つめ書き込む神無月 イムさん
石階の窪みに木の実光りあふ イムさん
秋の声木の葉の化石地層なす イムさん
秋の潮引きぎわ入日くだきつぐ イムさん

渋柿をたもとに点し里の橋 真帆
内側のほのかにぬくし虚栗 真帆
ひよんの実を鳴らせねど手に包みこむ 真帆
大振りの器に盛りて今年米 真帆
月夜茸薄暗がりの真ん中に 真帆

円やかな庭園の道秋惜しむ 雅司
茶が咲いて倉敷美観めぐりの日 雅司
蔦紅葉煉瓦づたひの夕日影 雅司
秋深し日のまだらなる千光寺 雅司
枝ごしの鋏の音や松手入 雅司

※次回は、作者ごとに一句を選び寸評を付けてご投稿ください。

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おやこの俳句教室(119)
おやこの俳句教室(119)
12月:中学校の俳句教室

 11月にある中学校の俳句教室に参加しました。小学校の経験はありましたが中学生は初めてのことでした。以下「朝日新聞・声欄(平成28年11月30日掲載)」よりの転載です。来年もよろしくお願いします。

(新聞投稿)
中学生たちに俳句を教え元気に

 県内の中学校であった俳句教室に講師として出向いた。私の亡き俳句の師が長年続けてきた教室で、師が主宰していた雑誌の編集部から依頼された。
 先師の跡を継いだ新主宰始め、講師は7人。生徒は各学年3クラスで、総計約300人。体育館の周辺や校庭で、生徒に交じり、作句のアドバイスをした。
 桜の木の下に座っている男子に声をかけると、なかなか季語が決まらないようだ。小春日和の空を見上げると、すっかり葉を落とした桜に季節外れの花(帰り花)が咲いていた。この季語を説明したら、自分でも納得できるような写生句ができたようだ。
 締め切り時間が迫るのに、なかなかできない生徒もいて、教師に「アドバイスを」と請われた。得意なことを彼に聞いてみると、剣道に打ち込んでおり、選抜大会も近いという。それで行こう、となって何とか一句。
 初めは私たち、講師陣に声をかけてくる生徒は少なかったのだが、作句の終わりごろには多くの生徒が話しかけてきた。この日を機会に俳句が好きになってくれたらと思う。私たちも俳句教室のおかげで元気をもらった。


 では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。
人波をすり抜けて来る聖樹の星   緑川美世子
(ひとなみをすりぬけてくるせいじゅのほし みどりかわみせこ)
 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事

 みなさんも12月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )

◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

冬薔薇無邪気ならざる舌出して 緑川美世子
(ふゆそうびむじゃきならざるしただして みどりかわみせこ )

【おやこの歳時記】

季語17:ふゆもや(冬靄)天文・冬
冬のおだやかな日に空気中に立ちこめる水滴です。現象としては霧と同じですが、気象用語で1km以上10km未満を靄と呼ぶそうです。

朝日さす冬靄中の火の蕊に 飯田龍太

季語18:つる(鶴)動物・冬
日本で越冬する鶴は、出水市が有名です。ナベヅル、マナヅルが毎季飛来して一万羽を超えています。北海道にはタンチョウヅルも。

鶴の数かぞへ出水の子ら育つ 大串章

【選句コーナー】
秋の俳句
イムさん選

ひよんの実を鳴らせねど手に包みこむ 真帆
吹けば鳴る天然の作った笛を手にしたが、ただ手の中に包み込み天然の音を握りしめて体内に温めているのですね。吹いて一音にするまでにはそれはあまりにも尊いものなのかもしれない。

秋深し日のまだらなる千光寺 雅司
山頂の石に宝玉の奪い取られた跡という穴があり、時折輝くこともあるという千光寺。瀬戸内海を見下ろせる四季折々の景色の美しさもさることながら。まだらな日差の千光寺の光は、多彩な思いを呼び起こし秋を深めているのですね。
真帆選

石階の窪みに木の実光りあふ イムさん

誰もがその情景に出会ったことがあるので、鮮明に思い浮かべることができる。石の階段に窪みがあり、そこに木の実がある。よく見て作っていて過不足がない。さらに「光りあ」っているととらえたのがイムさんの発見。

蔦紅葉煉瓦づたひの夕日影 雅司
蔦紅葉の鮮やかさを見ながら、同時にその影が夕日に染まっているのを定型の5・7・5にうまく表現された。煉瓦づたいに連なる影が葉そのものよりも存在感がある。

雅司選

空いつぱい運動会の音の占む イムさん

近くの幼稚園で同じような雰囲気を覚えたことがあります。親御さんが運動場を取り囲んでいて幼児の姿は見えない状態。運動会の声援だけの世界です。

渋柿をたもとに点し里の橋 真帆

渋柿が橋の袂に実をつけている映像が浮かびます。里の橋をクローズアップさせる渋柿の存在と「たもとに点し」と言う把握が郷愁を誘います。


【第8回トシドンの俳句募集】
 鹿児島県下甑島に伝わるトシドン行事は健やかな子どもの成長を願った先人の遺産です。平成21年9月、ユネスコの無形文化遺産に登録されたのを記念して始めた俳句募集ですが、今回も多くの作品を期待しています。

募集要項
季語:トシドン
投句:一人3作品まで
締切:平成29年1月8日
発表:平成29年1月中旬
※投句はペンネームも可。
※一句鑑賞は110字数程度でお願いします。
投句投稿は締切ました。
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おやこの俳句教室(120)
おやこの俳句教室(120)
1月:第8回「甑島のトシドン」俳句発表

 トシドンは国の重要無形民族文化財に指定されています。平成21年9月にはユネスコの無形文化遺産に登録されました。「おやこの俳句教室」では毎年、トシドンの俳句と一句鑑賞を募集しています。

◇トシドンの俳句
トシドンにぼくは良い子とつたえてね まさはる(小1)
トシドンの来る夜未来を語りたし 美卯
  夜神楽にかさなる姿年の神 金剛
とうさんを盾にトシドン覗き見る イムさん
大晦日トシドンさまに遭へぬまま 雅司
トシドンはどの辺りかと座して待つ 真帆

◇トシドンの一句鑑賞
過疎の島年どんだけは年取らず 金剛
この半世紀で下甑島も過疎化が進み、高齢者が増えるばかりだ。人は年を取っても、年どんだけは年を取らないと詠んだ作者の発想に詩情がある。永久に子どもの成長を見守るトシドンを明るく描き出した。下甑島はトシドンのふるさとである。(雅司)

餅抱へトシドン来る去年今年  邦英
トシドンを知らぬ地域の方々にも、その風習がわかる句。事実だけを明確に伝えているように見えて、家々に配る餅を大切に抱えて去年今年の年を跨いでやってくるトシドンの情景には郷愁を掻き立てられる。(真帆)

 では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。
ふるさとの居間より仰ぐ初山河 山下雅司
(ふるさとのいまよりあおぐはつさんが やましたまさじ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも1月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )

◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

初旅の青年ひとり甑島 山下雅司
(はつたびのせいねんひとりこしきじま やましたまさじ)

【おやこの歳時記】

季語19:はつひので(初日の出)天文・新年
元日の日の出です。初日の光で明るくなってくることを「初明り」といい、そして日の出を迎えます。おだやかな新年の初日です。

大濤(おおなみ)にをどり現れ初日の出 高浜虚子

季語20:ねんがじょう(年賀状)生活・新年
新しい年のお祝いを年賀はがきで伝えます。初めてもらった年賀状は新しい友達がふえたようです。手書きの年賀状はうれしいですね。

賀状見てあれば彼の山かの人等 上村占魚

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ご案内

【四季の俳句募集】
冬・新年の俳句のご投句を待っています。締切は2月3日です。お一人5句以内。掲載は2月中旬の予定です。

投句投稿は、こちらのフォームからどうぞ。

【バレンタインの俳句募集】

募集要項

季語:バレンタイン
投句:一人3作品まで
締切:平成29年2月20日
発表:平成29年3月中旬

※投句はペンネームも可。

バレンタイン俳句の投句は、こちらのフォームからどうぞ。
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おやこの俳句教室(121)
おやこの俳句教室(121)
2月:おやこの俳句募集

 おやこの俳句教室は、年に2回の行事俳句を募集して来ました。1月は「甑島のトシドン俳句」、3月には「バレンタイン俳句」を発表しています。皆さんの投句で続いています。
 地方風土の行事であるトシドンは、トシドンを知らないと俳句はできません。地元の方々や島を訪ねた皆さまに作品をお願いするしかありません。
 バレンタイン俳句は、募集の締切に時間的余裕がありますので、できるだけその年の作品をお願いします。投句は3句までとなっています。
 四季の投句は一人5句以内。締切は立春、立夏、立秋、立冬の前日までになっています。

 では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

大甕の水くろぐろと余寒かな 大川畑光詳
(おおがめのみずくろぐろとよかんかな おおかわばたみつひろ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも2月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )

◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

あめつちの凍ゆるみつつ海荒るる 野見山朱鳥
(あめつちのいてゆるみつつうみあるる のみやまあすか)

【おやこの歳時記】

季語21かんあけ:(寒明)時候・春
約30日の寒中が終わり立春になります。節分の翌日が寒明けです。暦の上では春ですが、寒さはまだ続きます。

寒明けや雨が濡らせる小松原  安住 敦

季語22:うめ(梅)植物・春
梅の花はバラ科の落葉樹。花期が長く万木に先がけ開花するので春告草の別名があります。万葉の昔は梅が花だったようです。紅梅、白梅など。探梅、早梅は冬の季語。

夕月や納屋も厩も梅の影 内藤鳴雪



【投句コーナー】

冬・新年の俳句

 洗いたて着るを喜び年あらた イムさん
 顔々をたどる胸元餅ふくらむ イムさん
 描かれて刻のけじめの松飾り イムさん
 冬あお空心ゆくまで雲の刷毛 イムさん
 ひと月を過ぎて今年に浸りゆく イムさん

  花石蕗の香やふる里の甑島 雅司
 朝刊に「青」の授与式耕二の忌 雅司
 ゆく年や父の形見の腕時計 雅司
 賀状くるトシドン俳句筆書きに 雅司
 元日の夕暮れはやし遠汽笛 雅司

 届かずに崩れてしまふ雪つぶて 真帆
 口々に晴れしを祝ぎてどんと焼 真帆
 竹踏みをしてをり三寒四温なり 真帆
  煮魚をこがさぬやうに春を待つ 真帆
 終点は片瀬江ノ島春隣 真帆
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ご案内

【四季の俳句 選句募集】
冬・新年の俳句の選句を待っています。投句者ごとに一句選をお願いします。

選句投稿は、こちらのフォームからどうぞ。

【バレンタインの俳句募集】

募集要項

季語:バレンタイン
投句:一人3作品まで
締切:平成29年2月20日
発表:平成29年3月中旬

※投句はペンネームも可。

本年のバレンタイン俳句の投句は締め切りました。ご協力有難うございました。

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おやこの俳句教室(122)
おやこの俳句教室(122)
3月:バレンタイン俳句発表

デパ地下のお祭り騒ぎバレンタイン フラガールさん
古き良き義理と人情バレンタイン フラガールさん
人生はチョコではないとバレンタイン フラガールさん

はにかむやバレンタインのチョコレート こうじさん
バレンタインチョコ山盛りの巷かな こうじさん
お返しのこと考えるバレンタイン こうじさん

求愛日端に息子の名をえがく イムさん
熱すぎるチョコ崩れゆく求愛日 イムさん
固くなるバレンタインのチョコの熱 イムさん

朝日いま雲間をバレンタインデー まさじ
心根のバレンタインのチョコふたつ まさじ
バレンタインなのはな号のホーム出づ まさじ

バレンタインチョコ選る少女二人連れ 真帆
チョコレート一粒添えてバレンタイン 真帆
鳥影の見えぬ荒天バレンタイン 真帆


 では、ここでクイズです。次の俳句はどの分類に入るでしょうか。@〜Fの番号から選んでください。

草摘の負へる子石になりにけり 川端茅舎
(くさつみのおへるこいしになりにけり かわばたぼうしゃ)

 @時候A天文B生活C地理D植物E動物F行事


 みなさんも3月の一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )

◇おやこの俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

砂川の蜷に静かな日ざしかな 村上鬼城
(すながわのになにしずかなひざしかな むらかみきじょう)

【おやこの歳時記】

季語23:しじみじる(蜆汁)生活・春
蜆は小粒の二枚貝。その蜆を入れた味噌汁。湖沼や内海で採れた蜆はカルシウム、鉄分、ビタミンB1などが多く含まれる。
子供らと世帯をわかち蜆汁 宮下翠舟

季語24:たがやし(耕し)生活・春
春種まきや苗おろし前に田畑をすき返すこと。畑の土、田の土の打ち返しを畑打、田打という。
天耕の峰に達して峰を越す 山口誓子


【選句コーナー】

冬・新年の俳句


イムさん選
朝刊に「青」の授与式耕二の忌 雅司
南九州市と合併の折少年少女が消えてしまって分かりにくいという不安をさておき、耕二の忌の寒空を「青」の深さが鮮やか浮かび上がって見えます。

届かずに崩れてしまふ雪つぶて 真帆
想いを固め届けようと丸める雪のつぶて、届かないまま崩れてしまった思いは天空へ吸いとられてしまったのでしょうか。
 

雅司選
洗いたて着るを喜び年あらた イムさん
 「着るを喜び」と衣類で表現された新年の心持ちです。生活感がよく作品に込められたと思います。日常の洗濯物ではない新しいものの洗いたてなのです。身の引き締まる幸福を感じます。

煮魚をこがさぬやうに春を待つ 真帆
 掲句は食を題材にして待春の気持ちを表現しています。台所俳句を思い出す。「煮魚をこがさぬやうに」とみごとな措辞です。

真帆選

冬あお空心ゆくまで雲の刷毛 イムさん
凛と晴れ渡った空に、刷毛で引いたように掠れた雲が「心ゆくまで」伸びている。気持ちのいい句。「あお」は漢字でもよいだろうか。のびのびとした明るさは平仮名の効果だろうか。

ゆく年や父の形見の腕時計 雅司
作者の腕で静かに時を刻み続けているお父様の時計。その時計にしみじみと去る一年を思い返している。形見の時計は来る年もきっと、作者と同じ時を過ごし見守り続けてくれるのだろう。
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ご案内

バレンタイン俳句の一句選募集!

バレンタイン俳句は四季の俳句と同じように、各人ごとに一句を選び選評を付ける参加型にします。4月掲載予定です。ご投稿をよろしくお願いします。
選句投稿は、こちらのフォームからどうぞ。

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