山下雅司さんの俳句入門「ジュニアの俳句教室」です。2022年度後半となります。
今までの入門講座は入門のページのリンクからどうぞ。



ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(36)
10月:ハガキを書いてみませんか

俳句雑誌に会員紹介の連載が始まったことがきっかけで句友にハガキを出しています。毎月2人づつの紹介です。その文章を読んで心に残った一行を書き添えています。
メールが便利で手書きの便りは少なくなりましたが肉筆は心温まるものがあります。
ジュニアの俳句教室で俳句を勉強している皆さん、ハガキをお友達に出してみましょう。

〜8月のハガキから〜

四十三様
令和4年8月

暑中お見舞い申し上げます
会員紹介を拝読しました。
「見たものを感じたように、感じたものをみたように」の一行に感動しています。
四十三さんの御句を「俳句の情景」(737)に書かせていただきました。

俳句の情景(737)
碧天のまま夜になる原爆忌 籏先四十三
原子爆弾が広島、長崎に投下されたのは昭和20年8月。「長崎の鐘」の詩にもあるように晴れた青空だった。碧天のままと叙されて夜になっても昼間の空が続いている。



【今月の例句】
天空へ風がいざなふ鷹柱 西郷重則
(てんくうへかぜがいざなふたかばしら さいごうしげのり)

 
【季語の分類】
季語集から10月の季語を転載しました。どの分類 (@時候 A天文 B生活 C地理 D植物 E動物 F行事) になるでしょうか。季語に番号を付けてみましょう。答は[おやこの歳時記]【俳句歳時記】で確かめてください。

10月
運動会、秋の空、にしき木、鷹渡る、秋の声、秋思、小鳥来る、初紅葉、そてつの実、菊人形、黄落、刈田


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句歳時記】

季語157:かかし(案山子)生活・秋
田畑の農作物の被害に鳥獣をおどすため藁(わら)などで作った人形です。

 山の雨降るたび案山子細りけり 塚越志津枝

季語158:むらさきしきぶ(紫式部)植物・秋
紫色に熟した小さな球形の実です。

 をみならの山旅の荷に実むらさき 有働 享


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

石垣の上の兄より石榴受く 廣瀬直人
(いしがきのうえのあによりざくろうく ひろせなおと)


【お知らせとお願い】 ○「ジュニアの俳句教室」は児童、生徒の皆さんの作品を待っています。




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11月:俳句吟行

今回は少し吟行(ぎんこう)について話します。

野外に出かけてスケッチをするように、吟行は俳句の材料を求めて歩くのです。出かけたその場所で見つけたもの、植物、動物は特に感動します。
また、その場所の景色はその日でしか得られません。晴れた日も雨の日も風の強い日もあります。同じものを見ても一人ひとり違う作品が生まれます。その日その場所で俳句にならなくても、目にしたものを書きとめておきましょう。
ここに10月の俳句鍛練会の未完成作品を掲載します。思いのままの17音です。その日の様子を想像してみてください。

桜島作品
秋雨の激し埋没鳥居の辺 雅司
わが一句川柳箱へ秋の闇 〃
知覧作品
秋日濃し献燈の影走り根に 雅司
念願の鍛練会や秋思の歩 〃


【今月の例句】
靴紐をゆるめることも冬支度  緑川美世子
(くつひもをゆるめることもふゆじたく みどりかわみせこ)

 
【季語の分類】
季語集から11月の季語を転載しました。どの分類 (@時候 A天文 B生活 C地理 D植物 E動物 F行事) になるでしょうか。季語に番号を付けてみましょう。答は[おやこの歳時記]【俳句歳時記】で確かめてください。

11月
初冬、芭蕉忌、石蕗の花、冬耕、冬麗、鷹、切干、落葉、大根引、立冬、冬紅葉、時雨


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句歳時記】

季語159:かみありまつり(神在祭)行事・冬
11月11日から17日、出雲大社で行われる。

 神集ひ来て大山に雨降らす 鈴木鷹夫

季語156:かきおちば(柿落葉)植物・冬
紫色に熟した小さな球形の実です。

 落柿舎の落葉はなべて柿ばかり 大岳水一路


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

山眠るまばゆき鳥を放ちては  山田みづえ
(やまねむるまばゆきとりをはなちては やまだみづえ)


【お知らせとお願い】 ○「ジュニアの俳句教室」は児童、生徒の皆さんの作品を待っています。




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12月:「青の俳句」作句の喜び

「南九州市かわなべ青の俳句大会」の作品が発表されました。1999年に始まって24回目の今年です。
福永耕二賞には小学校一年生の次の作品が選ばれました。

いつもよりほしがかがやくきゃんぷのよ

一年生ですから平仮名ばかりです。17文字がならぶと作者のその日の喜びがわかります。だれにでもキャンプの経験はあるでしょう。ただ楽しいだけでなくキャンプの夜に見上げた星に感動したのです。内容がむりなくすなおな作品ですね。「いつもより」に自然な作句の喜びもあふれています。

高校三年生で鹿児島県俳人協会賞を受賞した次の作品にも感動しました。

明暗を分ける一点蝉しぐれ

作者は小学生からずっと「青の俳句」に応募していました。最後の応募作品でもみごとな成果をおさめました。スポーツの俳句は難しいのに「蝉時雨」の季語をうまく使いました。 「青の俳句」は卒業ですが、これからも俳句を作り続けてもらいたいとエールを送ります。


【今月の例句】
霜柱はがねのこゑをはなちけり 石原八束
(しもばしらはがねのこえをはなちけり いしはらやつか)

 
【季語の分類】
季語集から12月の季語を転載しました。どの分類 (@時候 A天文 B生活 C地理 D植物 E動物 F行事) になるでしょうか。季語に番号を付けてみましょう。答は[おやこの歳時記]【俳句歳時記】で確かめてください。

12月
冬もや、鶴、冬木立、蒲団、炭火、水鳥、冬ひばり、冬の山、里神楽、初雪、トシドン、焚火、炬燵


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句歳時記】

季語161:じゅうにがつ(十二月)時候・冬
日が短く寒さがます一年最後の月です。

 鯉運ぶ水美しき十二月 皆川盤水

季語162:かれふよう(枯芙蓉)植物・冬
葉が落ちて毛につつまれた実がついています。

 日溜りの犬は夢みる枯芙蓉 鍵和田ゆう子(ゆうは禾へんに由)


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

いくたびも水に皺寄せ紙を漉く 野崎ゆり香
(いくたびもみずにしわよせかみをすく のざきゆりか)


【お知らせとお願い】 ○「ジュニアの俳句教室」は児童、生徒の皆さんの作品を待っています。

※トシドンと新春の俳句募集
一月は「トシドンと新春の俳句」を掲載予定です。皆様の作品を待っています。
こちらのフォームからどうぞ。



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1月:トシドンと新春の俳句

本年の干支(えと)はウサギです。しっかりと地に足つけて飛躍の年にしましょう。トシドンと新春の俳句で今年もスタートです。

年ドンの気配なくても年の晩 金剛

トシドンはきっと来るよねきっと来る 星子

トシドンは知っているんだボクのこと 星子

トシドンの大きな背なに登りたい 星子

トシドンへ年ごと変わる心向く  イムさん

新年の心踏みしむ波の音  イムさん

年新た潮洗ひつぐ甑島  イムさん

トシドンに乞ふ息災と平和の世  真帆

初刷りや郷土自慢の西ひがし 真帆

トシドンや我がふるさとの守り神 まさじ

トシドンの教へこの身に古稀迎ふ まさじ


※※※※※※※※

鹿児島歳時記(14)
トシドン
山下雅司(湾)
トシドンは年神さまで、子どものしつけの伝承行事。歴史民俗文化財である。
甑島のトシドンは現在、薩摩川内市下甑島(旧下甑村)の手打、片野浦、瀬々野浦、青瀬に保存会があり、12月31日の夜に行われる。その起源は明確ではないが、各集落で伝わる幼児のしつけを目的に受け継がれてきた。 昭和52年5月17日国指定重要無形民俗文化財の指定を受け、ユネスコの無形文化遺産(註)にも登録された。
トシドンは首無馬で天上から降りて来るという。夜6時頃から2時間ほどの短時間に家々を回る。幼児が多かった時代は複数のトシドンさまの出現があった。大晦日の夜、幼児(3歳から8歳ぐらいまで)のいる家にトシドンは鬼の面に長い三角鼻、藁の簑、棕梠簑などの出立ちで訪れる。その家の近くに来たら空缶、拍子木などの鳴物で演出する。「トシドン餅」なる年餅を事前に家族から預かる役もあり二、三人一組体制。

ドドッと家の中に入るや、「どの子どもか、親の言うことをきかんのは・・・」とトシドンの大きな声。子どもは正座して言うことを聞く。その年のよいことも、悪いこともトシドンはよく知っていた。トシドンは子どもに踊りや歌もうたわせた。しっかりとした子どもとなるようにとの思いがこめられる。家の手伝いもすると約束した子ども。最後にトシドン餅が渡される。約束したことは来年も聞きに来ると言い残して立ち去る。

トシドンは過疎化で昔のように大きな行事ではなくなったが、子どもの成長を願い、立派な人になってほしいという祖先の知恵と親の愛情で今日も伝承され続けられている。

トシドンに泣きべそかきし吾を思ふ 雅司

(註)ユネスコの無形文化遺産について
「甑島のトシドン」は2009(平成21)年9月30日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に単独登録されたが、「甑島のトシドン」を含む「拡張」ということになり、登録年、名称も変わり、2018(平成30)年11月29日、日本の8県10件の行事で構成する「来訪神 仮面・仮装の神々」として無形文化遺産に登録された。
令和4年(2022年)4月15日発行 俳人協会鹿児島県支部会報 第16号 に掲載。


【今月の例句】
一月や正座して見る杉の位置   能村登四郎
(いちがつやせいざしてみるすぎのいち  のむらとしろう)

 
【季語の分類】
季語集から1月の季語を転載しました。どの分類 (@時候 A天文 B生活 C地理 D植物 E動物 F行事) になるでしょうか。季語に番号を付けてみましょう。答は[おやこの歳時記]【俳句歳時記】で確かめてください。

1月
初日の出、お飾、初便、年賀状、初景色、松納、十日戎、寒椿、雪晴、寒卵、去年今年、水仙


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句歳時記】

季語163:かんぎく(寒菊)植物・冬
冬に咲く菊。冬菊。

 冬菊のまとふはおのがひかりのみ 水原秋櫻子

季語164:まんりょう(万両)植物・冬
千両より実が大きく深紅色。

 雪染めて万両の紅あらはるゝ 鈴木宗石


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

よく光る高嶺の星や寒の入り   村上鬼城
(よくひかるたかねのほしやかんのいり  むらかみきじょう)


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2月:バレンタインの俳句募集

2月14日はバレンタインの日。みなさんはどんな一日になるのでしょうか。休日ではないのでゆっくりとした時間はないかもしれませんが今年もバレンタインの作品を募集します。

季語:バレンタイン(バレンタインデー)
投句:一人3作品まで
締切:令和5年2月28日(火)
発表:令和5年3月中旬   投句は締め切りました。
※投句はペンネームも可


*思い出の作品鑑賞*

おやこの俳句教室(98)
第9回バレンタインの俳句発表より一部転載です。

滞るバレンタインの愛の列 イムさん

○長い列が遅々として進まない。ちょっとイライラしたり、どうしようかと迷ったり。でも、バレンタインだから愛を伝えることを諦めないで並んでいる。
▽とどこおる愛の列。バレンタインの列だから、恋人に贈り物を買い求めるための人の列だろう。あなたの思いだけは滞ることなし。


【今月の例句】
オリオンの真下春立つ雪の宿 前田普羅
(おりおんのましたはるたつゆきのやど まえだふら)

 
【季語の分類】
季語集から2月の季語を転載しました。どの分類 (@時候 A天文 B生活 C地理 D植物 E動物 F行事) になるでしょうか。季語に番号を付けてみましょう。答は[おやこの歳時記]【俳句歳時記】で確かめてください。

2月
立春、春一番、寒明け、梅、梅見、冴返る、バレンタインデー、余寒、猫柳、春、春祭、豆撒、春めく


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句歳時記】

季語165:やまやき(山焼)生活・春
早春、山の雑草や木を焼き払うこと。

 山焼の終れば阿蘇に牛放つ 三崎悦子

季語166:わかめ(若布)植物・春
コンブ科の海藻で各地の沿岸で生育する。

 子も孫も都に住むと若布干す 茨木和生


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

久闊の手を挙げバレンタインデー 瀬戸清子
(きゅうかつのてをあげばれんたいんでー せとせいこ)


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3月:思いを伝える

俳句で思いを伝える。それは今も昔も変わりません。
中でもバレンタインの俳句は愛のメッセージです。穏やかに幸せにと誰もが願っています。

☆バレンタインの俳句

ゆるやかに流るる大河バレンタインデー 星子

チョコ配る男の肩に触れゐたる イムさん

的なき矢胸に納めぬ求愛日 イムさん

麦酒とチョコ届くやバレンタインデー まさじ

多羅葉に一句刻みし愛の日よ まさじ

愛の日やフェアトレードのチョコレート 真帆

赤ワイン注ぎ古き良き愛の日よ 真帆


☆山下雅司の「俳句の情景(800)」より

俳句の情景(800)

門出なる春の日差しに鳥の声 山下雅司
門出の目出度い春の暖かな日差しに鳥が鳴いている。ホッとするひとときだ。弟から娘の結婚のことを聞いた。仕事で出席できなくて残念だが和やかな結婚披露宴になることだろう。


【今月の例句】
交換日記少し余して卒業す 黛まどか
(こうかんにっきすこしあましてそつぎょうす まゆずみまどか)

 
【季語の分類】
季語集から3月の季語を転載しました。どの分類 (@時候 A天文 B生活 C地理 D植物 E動物 F行事) になるでしょうか。季語に番号を付けてみましょう。答は[おやこの歳時記]【俳句歳時記】で確かめてください。

3月
蜆汁、耕し、摘草、すいば、椿、野遊び、雛祭、草の芽、春の野、浅利、蓬


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句歳時記】

季語167:とりかへる(鳥帰る)動物・春
越冬した渡り鳥が北方の繁殖地へと帰る。

 帰る雁雲にも深き峡のあり 岡田貞峰

季語168:ひがん(彼岸)時候・春
春分の日を中に前後三日の一週間をいう。

 人界のともしび赤き彼岸かな 相馬遷子


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

如月や身を切る風に身を切らせ 鈴木真砂女
(きさらぎやみをきるかぜにみをきらせ すずきまさじょ)


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