山下雅司さんの小学校低学年と保護者向けの俳句入門は、「あすなろ俳句教室」「おやこの俳句教室」として当サイトに長年連載してきました。
十五周年を記念して、タイトルを含めてリニューアルしました。2020年度もよろしくお願いします。
今までの入門講座は入門のページのリンクからどうぞ。

4月:植物の季語
「学校俳句歳時記・学芸みらい社」より小学生の俳句。
弟にちょっとにているねぎぼうず(小三)
弟に似ているとユーモアがあります。
ねぎは冬の季語ですが、ねぎぼうずはねぎのはなのことで春の季語です。茎の先にたくさんの花が集まり球状をなして坊主頭に似ています。
植物の季語はまだまだたくさんあります。四月の植物をあげてみましょう。
わさびのはな、なしのはな、あんずのはな、すもものはな、りんごのはな、ちんちょうげ、こぶし、ぼけのはな、やなぎ、すぎのはな、さくら、いちりんそう、にりんそう、ひとりしづか、ふたりしづか、おきなぐさ、さくらそう、チューリップ、ヒヤシンス、パンジー、スイートピーなど。
【今月の例句】
葱坊主子を育てては嫁にやり 成瀬櫻桃子
(ねぎぼうずこをそだててはよめにやり なるせおうとうし)
【四月の季語】
@時候 しがつ(四月)うららか(麗か)のどか(長閑)
A天文 しゅんこう(春光)はるひ(春日)はるのほし(春の星)おぼろづき(朧月)
B生活 にゅうがく(入学)うぐいすもち(鶯餅)くさもち(草餅)
C地理 しゅんちょう(春潮)はるのうみ(春の海)はるのなみ(春の波)
D植物 はつざくら(初桜)もものはな(桃の花)はるだいこん(春大根)
E動物 ちょう(蝶)はち(蜂)はるのはえ(春の蝿)こねこ(仔猫)
F行事 みどりのしゅうかん(緑の週間)しょうわのひ(昭和の日)れんにょき(蓮如忌)
ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
春の木市軍鶏堂々と籠の中 山下雅司
(はるのきいちしゃもどうどうとかごのなか やましたまさじ)
【俳句歳時記】
季語97:もくれん(木蓮)植物・春
葉よりも先に六弁花を上向きに開く。白もくれん、紫もくれん。
小鳥立つて木蓮しばしゆれやまず 伊東月草
季語98:たけのあき(竹の秋)植物・春
春は植物が青くなるのとは反対に竹の葉は黄ばんでくる。
夕風の吹くともなしに竹の秋 永井荷風
【選句コーナー】
イムさん選
委任状記すやバレンタインデー まさじ
思えば委任状というのはおもしろいものですね。役目を人に委任して愛の日を守ったのか・・。愛の答えを誰かに委任してしまったのか・・
バレンタインデーの小さな紙袋 真帆
そうですね。チョコレートですから小さな袋になってしまいますけれど、愛の重さが感じられます。
まさじ選
チョコの香を幾重に包む包装紙 イムさん
チョコの香りを包むその包装紙とあえて同じ文字を重ねて印象的な作品です。簡易な包装ではなく心のこもった贈り物。包装紙の色合いも想像させるような仕上がりです。
バレンタインデーの小さな紙袋 真帆
紙袋がいい。それも小さな紙袋です。バレンタインデーであれば殊更に作者の目に止まったのです。作品は想像させるものがあって只の17音ではない。季語の使い方に感服。
真帆選
チョコの香を幾重に包む包装紙 イムさん
チョコレートの香りは、どんなに包装をかさねても隠せないけれど、一枚解くたびにさらに強く濃くなってワクワクします。綺麗で凝っていて剥がすのがもったいないほど。
委任状記すやバレンタインデー まさじ
取り合わせの句と読みました。作者は委任状を書いていて、世の中はバレンタインデーで。恋愛を契約と言い切るわけではないですが、委任状で済ませることのできるものとできないものの差など、つらつら深読みを楽しみました。
【投句コーナー】
野へ出づるのみのを許され土筆萌 イムさん
文筆の籠もり居のとき幸としぬ イムさん
ウイルスへ見するのみなり花吹雪 イムさん
島と島つながる晴や海猫渡る まさじ
晴れ渡る春分の日の水の音 まさじ
ホワイトデー風の冷たき日和にて まさじ
風止んで梅の円周上に散る 真帆
花影にほてりを冷ます嬰の頬 真帆
踏切の開いて再び花吹雪 真帆
【春のミニ吟行】の中止
令和2年4月29日(水)昭和の日に予定の春のミニ吟行は中止します。各人の作品は投句コーナーにお寄せください。5月に掲載します。(まさじ)
5月:特集 ジュニアの俳句作品
今回はジュニアの俳句作品を掲載します。
薩摩川内市教育委員会の主催で小・中学生を対象とした俳句教室「はいくであそぼう」の作品です。寸評をつけましたので読んでみてください。
(小学2年生の作品)
○こけがある冬のこけでもやわらかい
冬のこけによくきづきました。やわらかいという感動です。目でみて手のかんしょくでうまれた作品です。
○パンジーは二つの色やさきほこる
パンジーは小さな花です。かだんにうえてある二色。二つの色のさきほこるとうまいですね。
○かれざくら春をまつてじゅんびちゅう
さくらと言えば花です。花がさくまでにはじゅんびがあります。春をまってる桜の木です。(中七は6音?)
○まんりょうの白い実つけてめずらしさ
まんりょうをよく見ています。ふつうは赤い実をつけています。めずらしいことに白い実だったのです。
○くちずさむサザンカの花みつけたよ
サザンカサザンカさいたみちとくちずさむ。サザンカの花をみつけて歌もでてきました。
○朝どりの大こしんせんおいしいな
おいしい朝どりのだいこん。みずみずしくやわらかいだいこん。だいこんのきせつですね。
○はくさいのおいしいしょうこ白い虫
はくさいもおいしい。そのはくさいに白い虫をみつけたよ。おいしいしょうこになっとくです。
(中学1年生の作品)
○はつもうで天神様に健康を
初詣が季語。一年間の健康を祈りました。天神さまですから学業までもアップすることでしょう。
○よもぎもちたくさん食べてプルプルだ
よもぎもちは健康にいいですね。もち大好き。筆者も今年最初に食べたのはよもぎもちです。プルプルかは?。
○赤い君こいよみのれよ冬そまる
赤い君はアカイくんのこい?。冬そらを見上げているようなそんな情景を想像しました。あかね色の西空です。
○へびいちご明るくさいて笑顔だな
じっさいにへびいちごを見た描写です。明るくさいてと言って笑顔でまとめました。
○木のツタは冬の証拠見つけたよ
ツタが色づいて木々にからみついています。その感動をみつけたよと表現?まさに俳句教室での冬の証拠なのです。(中七は字足らず?)
ジュニアの俳句教室はネットでつながっています。これまでの俳句教室をすべて見ることができます。見るだけでなく作品を投稿できます。ゴールデンウィークに俳句を作ってみませんか。
【今月の例句】
一番茶摘みて畑小屋水もなし 石川桂郎
(いちばんちゃつみてはたこやみずもなし いしかわけいろう)
【五月の季語】
@時候 時候 ごがつ(五月)りっか(立夏)しょか(初夏)うづき(卯月)
A天文 うのはなくたし(卯の花腐し)あおあらし(青嵐)たけのこづゆ(筍梅雨)むぎのかぜ(麦の風)
B生活 ころもがへ(更衣)こどものひ(こどもの日)ははのひ(母の日)あいちょうしゅうかん(愛鳥週間)
C地理 うなみ(卯浪)あおばじお(青葉潮)しろた(代田)
D植物 はざくら(葉桜)さくらのみ(桜の実)ばら(薔薇)ぼたん(牡丹)みかんのはな(蜜柑の花)かきわかば(柿若葉)
E動物 とびうお(飛魚)すだちどり(巣立鳥)はつがつお(初鰹)いさき めだか(目高)
F行事 五月には神社や寺社で夏祭りを行うところが多いので、地元の名所を調べてみましょう。
ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
抽斗に雲形定規目借時 緑川美世子
(ひきだしにくもがたじょうぎめかりどき みどりかわみせこ)
【俳句歳時記】
季語99:ちゃつみ(茶摘)生活・夏
茶摘みは茶の若芽を摘むこと。一番茶、二番茶、三番茶と進んで行きます。
夕づきて励み仕舞ひの茶摘歌 宮津昭彦
季語100:しんじゅ(新樹)植物・夏
みずみずしい若葉の樹木のこと。
夜の雲に噴煙うつる新樹かな 水原秋櫻子
【選句コーナー】
イムさん選
ホワイトデー風の冷たき日和にて まさじ
バレンタインデーは義理チョコまで入れて楽しく愛をばらまいていますけれど、受けた立場としては何としたものかと、日和の中にも風の冷たさを感じるのかもしれませんね。
踏切の開いて再び花吹雪 真帆
花吹雪に身をまかせ夢ごこちに進むひとときを、踏切という現実にふと呼びもどされながら、再び夢の世界へ溶け入る天女になった想いですね。
まさじ選
野へ出づるのみを許され土筆萌 イムさん
土筆は野に出ることのみ許されたと捉えた作者。そういうふうに言われたら他の植物とは違うと納得した。何かメッセージがあるような土筆です。
花影にほてりを冷ます嬰の頬 真帆
春の日差しに嬰の頬がほてっています。お母さんは花影に移動してそのほてりを冷ますのです。愛情溢れる情景の作品で女性ならではの眼差しです。
真帆選
文筆の籠もり居のとき幸としぬ イムさん
新型コロナウイルスの感染予防対策として、STAY HOME(家にいましょう)が推奨されています。改めて机に向かい筆を執る幸せを感じる事も多いですね。今は、この春のことと判りますが、後から読み返す時の手掛りとして、季語を入れるとよいかと思います。
晴れ渡る春分の日の水の音 まさじ
ああ、良い天気だ!と春分の日を満喫しています。ふと気づいた水の音も春らしく感じたのですね。この情報だけでいくつかの俳句が作れそうです。
【投句コーナー】
いつまでも追い越せないの鯉のぼり イムさん
花菜漬け家族と晩酌もう深夜 たくろう
猫と遍路次目指す寺にじゆうはち たくろう
人通り少なくなりし残花かな まさじ
リラ薫る監査了へたる庭先に まさじ
こでまりの揺れ通しなる監査の日 まさじ
しやぼんだま明るき空をさかしまに 真帆
春昼のまだまだ歌い足りぬ鳥 真帆
うつぶせに眠る悪癖抱卵期 真帆
【トピックス】
2006年の工事からして難工事の藺牟田瀬戸架橋がいよいよ完成です。4月21日更新の鹿児島県ホームページで名称と開通日が公表されました。「甑大橋」、8月29日(土)です。国定公園に指定されている甑島。
「南九州吟行案内」俳人協会編に甑島列島の案内があります。ぜひお読みください。(まさじ)
6月:俳句の誕生
俳句は、結論から言うと連句の初めの一句、発句を独立させた正岡子規から連句と区別して俳句となったようですね。松尾芭蕉も中心は連句だったとか。
ではその連句、連歌とはどんな形でしょうか。
連歌は上の句を付けた人の後に下の句を他の人がつけます。その一句目が*発句。発句は必ずその座の主人に対しての季節の挨拶から始めるとなっていました。
連歌(れんが)は、
*575/77
575/77
575/77
その繰り返し!
連歌の以前には長歌があります。
奈良時代の万葉集にある長歌は57を3回以上続けて最後を577でまとめたもので、長さはまちまちですが一人で作ります。長歌には返歌が添えられました。その返歌は57577。→それが和歌(短歌)になりました。
室町時代に盛んになった連歌から始まり俳諧の連歌、連句になって行きます。江戸時代、俳諧というこっけいな、おかしな遊びを芭蕉は芸術にまで高めました。芭蕉と子規が今日の俳句を成立させたのです。
整理すると、長歌→返歌→和歌(短歌)→連歌(連句)→俳句という流れです。
【今月の例句】
藻の花のぱちつと水を弾きゐつ 長谷川 櫂
(ものはなのばちつとみずをはじきいつ はせがわ かい)
【六月の季語】
@時候 ろくがつ(六月)にゅうばい(入梅)つゆさむ(梅雨寒)げし(夏至)あつし(暑し)
A天文 つゆ(梅雨)さつきやみ(五月闇)あおあらし(青嵐)かぜかおる(風薫る)
B生活 なつのれん(夏暖簾)なつぶとん(夏布団)なつぼうし(夏帽子)
C地理 でみず(出水)なつの(夏野)なつのかわ(夏の川)
D植物 あじさい(紫陽花)かび(黴)ものはな(藻の花)あおあし(青芦)あおすすき(青芒)
E動物 うなぎ(鰻)かめのこ(亀の子)なめくじ(蛞蝓)かたつむり(蝸牛)めだか(目高)
F行事 ちちのひ(父の日)なりひらき(業平忌)かたしろ(形代)ちのわ(茅の輪)
ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
消えやすきころの螢を見はじめに 能村登四郎
(きえやすきころのほたるをみはじめに のむらとしろう)
【俳句歳時記】
季語101:こばんそう(小判草)植物・夏
砂地や、荒地に生える茎の頭に小判形の花穂を垂れて咲く。
日曜の少女の握る小判草 是枝南草
季語102:かたしろ(形代)行事・夏
夏越の神事、御祓(みそぎ)のための白紙の人形(ひとがた)。
形代にかけたる息の余りけり 綾部仁喜
【選句コーナー】
イムさん選
〇花菜漬け家族と晩酌もう深夜 たくろう
〇こでまりの揺れ通しなる監査の日 まさじ
〇春昼のまだまだ歌い足りぬ鳥 真帆
まさじ選
いつまでも追い越せないの鯉のぼり イムさん
風の中で泳ぐ鯉のぼりです。話しかけている。追い越せないのはなんででしょうか。鯉のぼりが風に先んじているかのようです。竿につながれて同じ位置で泳ぐのでそんな感じかな。
猫と遍路次目指す寺にじゆうはち たくろう
ドラマのある作品です。よく二十八番札所を知っていますね。お遍路さんもびっくりです。連句ならば、こんな感じかな?
春遍路よくもここまできたものよ/
次なる札所猫が教える/
うつぶせに眠る悪癖抱卵期 真帆
卵を抱えるように枕に顔を埋めるのでしょうか?私は仰向けが楽なんです。横向きも最近はないようで。どちらが良いか分かりません。いずれにしても季語の抱卵期に面白味がある作品です。
真帆選
いつまでも追い越せないの鯉のぼり イムさん
「追い越せないの」という口語が、鯉幟への言葉にも作者の呟きの様にも読めて、じんと心に沁みました。風に煽られて様々な方を向いても風が止むと元の位置に収まってしまう。鯉幟も切ないかもしれません。
人通り少なくなりし残花かな まさじ
桜の時期は道いっぱいの見物客で賑わうけれど、シーズンも終わりの頃になると用事のある人だけが通るいつもの静かな道に戻るのでしょう。淋しいような、ほっとするような感じが出ています。
花菜漬け家族と晩酌もう深夜 たくろう
あえて「家族と」晩酌と表現したのは、ちょっと特別な感じがしたからでしょうか。「花菜漬」の季節なので新年度のことなどの話も弾んで、いつの間にか夜も更けていました。
【投句コーナー】
万緑の万分の一切り落とす イムさん
緑分け入りて覗きぬ夕茜 イムさん
姿なく虫の刺したる跡残す イムさん
捩花やむかしがたりの古今集 まさじ
コロナ禍の外出自粛五月憂し まさじ
葉桜や朝より鳥の声すがし まさじ
豆御飯召しませ皺の寄る前に 真帆
みづすましものおもはねば沈むかに 真帆
どくだみの八重はこころを癒すため 真帆
7月:俳句クイズ
今回は俳句作品の穴埋めクイズです。( )に入る言葉を考えてみましょう。
俳句作品は2019(令和元)年7月「俳句の情景」から転載しています。コメントがヒントです。答は末尾にあります。
俳句の情景(28)
雲青嶺母あるかぎりわが( ) 福永耕二
福永耕二先生は川辺町出身です。遠く千葉県市川学園で教鞭をとられた。母はあるかぎりと詠まれて胸にしみる。千貫平に純心学園の有志が建立した句碑がある。
俳句の情景(31)
滴りの湾流となる( )かな 瀬戸清子
湾7月号に創刊五十年目に当りと前書きのある作品。誠に一滴が大河になる例えの如く、俳句雑誌「湾」の流れもまた気の遠くなるほどの( )なのです。
俳句の情景(32)
六月灯火の山へ( )わたるなり 浅田巌
旧暦の六月、新暦の七月は毎日、どこかの神社、お寺で六月灯が行われます。15日16日は照国神社の六月灯。多くの人出で参道は溢れます。
俳句の情景(36)
( )に降る火山灰をさびしむ大暑かな 大岳水一路
場所は鹿児島湾(錦江湾)。桜島の火山灰(よな)が( )に降っている。俳句会へ行かれる日が大暑だったのだろう。先生の心象風景が火山灰でもって表現された。
俳句の情景(38)
ゆかた着る( )にくさとうれしさと 今関璃乃
浴衣が季語。小学六年生の作品です。すなおに浴衣を着た思いが俳句になりました。学芸みらい社「先生と子どもたちの学校俳句歳時記」に掲載作品です。
俳句の情景(39)
大いなる( )より遠泳子 山下雅司
磯海岸を目指して小学生の遠泳が今年も達成した。離島の子どもなら泳ぐことは当たり前のことかもしれないが。学校の伝統行事としてすごいことだ。
【今月の例句】
夏の月開聞岳を照らしけり 東口耕二
(なつのつきかいもんだけをてらしけり ひがしぐちこうじ)
【七月の季語】
@時候 しちがつ(七月)みなづき(水無月)なつのよ(夏の夜)すずし(涼し)
A天文 かみなり(雷)ゆうだち(夕立)にじ(虹)なつのつき(夏の月)なつのそら(夏の空)
B生活 はなび(花火)ゆかた(浴衣)うすもの(羅)あせ(汗)ふんすい(噴水)なつしゃつ(夏シャツ)
C地理 なつのやま(夏の山)なつのうみ(夏の海)なつのしお(夏の潮)たき(滝)いずみ(泉)
D植物 さるすべり(百日紅)ひまはり(向日葵)かいこうづ(海紅豆)なつはぎ(夏萩)たけにぐさ(竹煮草)とまと(トマト)なす(茄子)
E動物 なつのむし(夏の虫)てんたうむし(天道虫)こがねむし(黄金虫)かぶとむし(兜虫)
F行事 しゅうおうしき(秋櫻子忌)ぼうしゃき(茅舎忌)ぎおんまつり(祗園祭)
ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
ゆくもまたかへるも祗園囃子の中 橋本多佳子
(ゆくもまたかへるもぎおんばやしのなか はしもとたかこ)
【俳句歳時記】
季語103:あいすくりいむ(アイスクリーム)生活・夏
夏の代表的な食べものです。冷たくておいしい。
アイスクリーム無言で舐めて反抗期 満田春日
季語104:きゅうりもみ(胡瓜もみ)生活・夏
胡瓜を薄くきざんで塩もみし酢のものにした菜食。
鼻唄のきのうと同じ胡瓜揉み 黛 まどか
【選句コーナー】
イムさん選
葉桜や朝より鳥の声すがし まさじ
葉桜になってしまって、でもこの緑厚く新鮮な大気を鳥たちはすがすがしい声で鳴いているのですね。鳥たちにとっては葉桜もすばらしい季節ななのですね。
みづすましものおもはねば沈むかに 真帆
みずすましはただぼんやり浮いているのかと思いそうですけれど、一生懸命足を水中で動かしているのですね。何も考えないでいるとふと沈んでしまいそう。何も考えない中でも心が沈んでゆくこともあるんですね。
まさじ選
万緑の万分の一切り落とす イムさん
万緑の万分の一。その発想と切り落とす。断定が気持ちいい作品です。俳句は遊び心も大切です。楽しく作るのです。まさに唇に歌を、心に太陽ですね。
どくだみの八重はこころを癒すため 真帆
どくだみの花。八重はこころを癒すためと叙されています。道端の白い花に作者の心は解放されたのです。「こころ」を平仮名にしてその気持ちが伝わります。
真帆選
万緑の万分の一切り落とす イムさん
万緑の万分の一を切り落としたら、切り落とされたのは万分の一でも、残りはまた一万に戻ってしまうのではないか、そんな豊かな緑を感じさせる句です。大らかで気持ちがいいです。
コロナ禍の外出自粛五月憂し まさじ
時事俳句として記録しておきたい句です。緊急事態宣言の発令と解除、その後も予断を許さぬ状況が続いていますね。外出自粛は、あくまでも「自粛」で強制ではありませんが、野に山に海にと心ときめく五月なのに、俳人も子ども達も、物憂い日々を過ごしました。
【投句コーナー】
ごううほうけいたいでんわのかずをなる イムさん
あおばへとコロナごもりのあめごもり イムさん
つゆへだてとなりはいかがすごてる イムさん
一ところ小さき田圃の余り苗 まさじ
田の神が見守る田植日和かな まさじ
石積みの棚田一景田植どき まさじ
立葵咲き昇り師に届かずや 真帆
滝壺に日の斑を溜めて作り滝 真帆
風止みて雨の降り出す半夏生 真帆
【俳句募集】
第25回トンボロ芸術村コンテスト作品募集には俳句部門があります。鹿児島県薩摩川内市のホームページに応募要領が掲載されました。今年は8月29日開通予定の「甑大橋」を記念して「甑大橋賞」が新たに設けられています。
*クイズの答*
俳句の情景(28)
雲青嶺母あるかぎりわが(故郷) 福永耕二
俳句の情景(31)
滴りの湾流となる(月日)かな 瀬戸清子
俳句の情景(32)
六月灯火の山へ(風)わたるなり 浅田巌
俳句の情景(36)
(海)に降る火山灰をさびしむ大暑かな 大岳水一路
俳句の情景(38)
ゆかた着る(歩き)にくさとうれしさと 今関璃乃
俳句の情景(39)
大いなる(桜島)より遠泳子 山下雅司
8月:鍵和田ゆう子(ゆうは禾編に由)先生を偲ぶ
鶴啼くやわが身のこゑと思ふまで 鍵和田ゆう子(ゆうは禾編に由)
俳句雑誌「未来図」主宰の鍵和田ゆう子(ゆうは禾編に由)先生が6月11日の夕刻にお亡くなりになりました。享年89歳。まことに寂しく在りし日が思い出されます。生前、私は先生の句碑除幕式に参列しました。鹿児島県出水市(当時;出水郡高尾野町)に建立された句碑です。
除幕式、直会のあと荒崎に移動して吟行がありました。先生は思い出の同じ場所だったか?句帳を手にじっと佇まれておられました。私はその日の思いを伝える瞬間を待ちました。
鶴啼くや一期一会の除幕の日 雅司
名刺に添えて先生にご挨拶した一句です。先生は私も何かと言われ名刺に句碑の作品を書いてくださいました。ただただ俳句のご縁に感謝するばかりでした。
最後に先生の作品を二句。昨年八月、俳句グループライン「俳句の情景」に書いたものです。先生を偲びここに掲載させていただきます。
俳句の情景(54)
誰の背も闇が濃くなる地蔵盆 鍵和田?子
今日は地蔵菩薩の縁日。旧暦の7月24日です。子どもの守り神としてお地蔵さんと親しまれています。誰の背も闇が濃くなるとその情景が見えるようです。
俳句の情景(56)
朝顔が日ごとに小さし父母訪はな 鍵和田(ゆうは禾編に由)子
暑い日がまだまだ続き父母を案じる作者です。朝顔が日ごとに小さくなるのを見て父母が気がかりです。父母が高齢になればことさらです。
【今月の例句】
炎天こそすなはち永遠の草田男忌 鍵和田ゆう子
(えんてんこそすなはちとはのくさたおき かぎわだゆうこ)
【八月の季語】
@時候 はちがつ(八月)あき(秋)りっしゅう(立秋)あきめく(秋めく)ざんしょ(残暑)
A天文 あきのほし(秋の星)ほしづきよ(星月夜)あまのがわ(天の川)ぼんのつき(盆の月)
B生活 ぼんやすみ(盆休み)すもう(相撲)
C地理 あきのかわ(秋の川)あかのの(秋の野)あきのやま(秋の山)
D植物 かんな(カンナ)いねのはな(稲の花)あかのまんま(赤のまんま)みづひきのはな(水引の花)かぼちゃ(南瓜)すいか(西瓜)
E動物 あきのせみ(秋の蝉)ひぐらし(蜩)あかとんぼ(赤蜻蛉)
F行事 くさたおき(草田男忌)げんばくき(原爆忌)はかまいり(墓参)
ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
嫁ぎても娘は娘草田男忌 山下雅司
(とつぎてもむすめはむすめくさたおき やましたまさじ)
【俳句歳時記】
季語105:かんな(カンナ)植物・夏
真っ赤に燃えるような大きな花。橙や黄色もある。
眼帯のうちにて燃ゆるカンナあり 桂 信子
季語106:いねのはな(稲の花)植物・夏
午前中二、三時間白い花を開く稲の花。
稲の花一村つつむ朝の靄 山本福江
【選句コーナー】
イムさん選
〇石積みの棚田一景田植どき まさじ
〇立葵咲き昇り師に届かずや 真帆
まさじ選
〇ごううほうけいたいでんわのかずをなる イムさん
ことしは長い梅雨でした。豪雨警報の知らせがいっせいになる携帯電話。そこにいる人の携帯電話の数だけと。無季。
〇立葵咲き昇り師に届かずや 真帆
恩師が亡くなられた。作品は立葵が咲き昇るも恩師にはもう届かない。惜別の一句。花の歳時記を遺された師なり。合掌。
真帆選
〇ごううほうけいたいでんわのかずをなる イムさん
関東では豪雨より地震警報のほうが身近ですが、電車などで一斉に鳴ると大げさでなく寿命が縮む思いがします。どちらのケースも、以前の被害の状況が脳裏によみがえるからですね。誤報にほっとすることも。なんとか、季語を入れたいところです。
〇一ところ小さき田圃の余り苗 まさじ
青々と波打つ早苗田の一隅に方形に取り切れずにいびつな小さいスペースが。田植えの時に予備に準備した苗の残りがそよそよと靡いている。余り苗を詠みながら、広い水田が見えてくる句。
【投句コーナー】
朝蝉のいきおい今日も晴れわたる イムさん
祈る手に間隔のあり原爆忌 イムさん
公園の一人体操明け易し イムさん
鹿の子百合一人の闇に香りけり まさじ
初蝉のお経はじむるごと鳴けり まさじ
梅雨明けの秒読みとなる空の色 まさじ
体より頭休めて昼寝覚 真帆
大西日不快指数を塗り替へて 真帆
秋暑し有限の身を案じつつ 真帆
【ジュニア俳句募集】
22回南九州市かわなべ青の俳句大会
(2020-06-26)南日本新聞ホームページ
南九州市川辺出身の俳人・福永耕二をしのび、少年少女が俳句づくりを通じて、四季を愛し日本語の美しさやリズムに対する理解を深めることを趣旨とした大会です。
◇対象 小・中・義務教育・高校・特別支援学校に在学する児童と生徒
◇応募方法 未発表の作品1人2句以内。A4判の指定用紙に学年、氏名を明記、所属学校を通じて郵送(個人応募も可)。要項、応募様式は下記の南九州市ホームページからダウンロードできる ※ファクスでの応募はできません。
◇応募先 〒897−0215、南九州市川辺町平山3234、南九州市教育委員会内「南九州市かわなべ青の俳句大会実行委員会事務局」係=0993(56)1111
◇締め切り 9月4日(金)消印有効、持参の場合は同日午後5時まで
◇表彰 福永耕二賞1点▽県知事賞3点▽青の大賞15点▽特選480点以内▽入選1080点以内▽学校賞20校以内
※新型コロナウイルスの感染拡大状況次第で、表彰式などについては変更になる場合があります
9月:植物の季語と俳句
すすき、なでしこ、ききょう、おみなえし、ふじばかま、くずのはな、はぎ、あいのはな、えだまめ、いも、けいとう、まんじゅしゃげ、らん、つりふねそう、りんどう、あきあざみ、こすもす、われもこう、つゆくさ、そばのはな、かいわりな、もも、なし、ぶどう、、など9月の植物の季語です。よく使う季語もあれば使ったことがない季語もあるかもしれません。
金木犀部屋かへて読む放浪記 鍵和田ゆう子(ゆうは禾に由)
キンモクセイの香りが強いのでしょう。作者は部屋をかえて放浪記の続きを読まれたのです。事実だけをまとめて後は読み手が想像します。「放浪記」としないでも読み手が分かります。お芝居にもなった有名な放浪記です。
【今月の例句】
梨食うてすつぱき芯に至りけり 辻 桃子
(なしくうてすつぱきしんにいたりけり つじ ももこ)
【九月の季語】
@時候 くがつ(九月)あきのあさ(秋の朝)あきのよ(秋の夜)あきのひる(秋の昼)
A天文 みかづき(三日月)あきのゆうやけ(秋の夕焼)あきのひ(秋の日)ゆうづきよ(夕月夜)いわしぐも(鰯雲)
B生活 あきのひ(秋の燈)よなべ(夜なべ)やがく(夜学)やぎょう(夜業)やしょく(夜食)
C地理 はなの(花野)はつしお(初潮)あきのしお(秋の潮)あきのみず(秋の水)
D植物 あきくさ(あきくさ)おもいぐさ(思草)くず(葛)なし(梨)あきなす(秋茄子)しょうが(生姜)
E動物 むし(虫)まつむし(松虫)すずむし(鈴虫)きりぎりす(キリギリス)くつわむし(クツワムシ)さんま(秋刀魚)さけ(鮭)
F行事 しんさいき(震災忌)
ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
作品「 」
作者( )
【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。
食ひかけて葡萄の骨のあをき見ゆ 緑川美世子
(くいかけてぶどうのほねのあおきみゆ みどりかわみせこ)
【俳句歳時記】
季語107:いわし(鰯)動物・秋
鰯は回遊魚で秋が旬でおいしい。
大漁旗鰯の山のてつぺんに 森田 峠
季語108:きりぎりす(螽?)動物・秋
ぎーすちょんと昼間よく鳴く虫。
纜のうづたかく朽ちきりぎりす 能村登四郎
【選句コーナー】
イムさん選
〇鹿の子百合一人の闇に香りけり まさじ
〇秋暑し有限の身を案じつつ 真帆
まさじ選
〇祈る手に間隔のあり原爆忌 イムさん
広島と長崎の原爆忌。今年は戦後75年でした。新型コロナウイルス感染防止で人数も制限、人の間隔も。
〇体より頭休めて昼寝覚 真帆
体もさることながら正に頭休めて。頭もオーバーヒート寸前です。昼寝で頭脳が回復したような目覚めです。
真帆選
〇朝蝉のいきおい今日も晴れわたる イムさん
朝から蝉がしきりに鳴いています。こんな日はきっと猛暑になるに違いありません。日中は、蝉もどこかで暑さをしのいでいるのか、声が聞こえません。
熱中症予防で人々の往来もまばら。空の青さも相まって水底のような静けさです。
〇鹿の子百合一人の闇に香りけり まさじ
どのように鑑賞すればいいか、ちょっと迷った句です。作者が一人(例えば仏間の)闇の中で鹿の子百合の香を感じているのでしょうか。あるいは闇はもっと主観的な比喩でしょうか。一人は鹿の子百合の様子を擬人化したものかもしれません。
いずれにせよ、鹿の子百合の印象を視覚で、その香りを嗅覚で、しっかりととらえているので、なんとなく共感できるのだと思います。
【投句コーナー】
台風の端といへどもうなり出づ イムさん
台風の時刻くるわず進みゆく イムさん
この一夜台風の音と付き合へり イムさん
法師蝉いま最長の声やみぬ まさじ (まさじさんの三句の蝉は旧字です。うまく変換できませんでした。真帆)
突としてまた鳴きはじむ法師蝉 まさじ
この辺りよく鳴くところ法師蝉 まさじ
鯖雲の茜色濃きひとところ 真帆
天網を逃れて鰯雲の穴 真帆
秋の雲一番星を隠し得ず 真帆