山下雅司さんの俳句入門「ジュニアの俳句教室」も、2020年度後半になりました。
今までの入門講座は入門のページのリンクからどうぞ。



ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(12)
10月:感動を表現する

芸術の秋です。今回は水墨画展で感動した水墨画家の芝龍郎(しば・りゅうろう)先生が書かれた文章をご紹介します。俳句づくりにも役立つと思って全文掲載です。

「月刊 水墨画 2014年8月号」より
 読者のみなさんへ贈る言葉

本物を見て感動しよう  芝龍郎

 絵は、特に水墨画は見えたままを描くのではありません。そこに何が見え、何を感じたかを描くのです。
 富士山を例にしてみます。見たことがない人でも描けるのが富士山です。しかしそれは富士山の絵ではなく富士山の図なのです。
 富士山を目前にしてこの富士に何が見え、何を思ったのかなのです。「素晴らしい/登りたい」と思った人は「秀峰」となるでしょう。 そして「信仰の山。神々しくて近寄り難い」と思った人は「霊峰」となり、「秀峰」と見た人と「霊峰」と見た人の心情は異なるのです。 絵はその思いを作品にするのです。富士山を描き終わってから「秀峰」にするか「霊峰」にするかではないのです。どういう思いで表現したかなのです。
 私は雪舟(せっしゅう)と鉄斎(てっさい)の生き方に感銘を受けています。この二人はそこへ出掛けて行って実景を見て、イメージを深めています。 歩いて行くのですから目的地に着いた時の感動は大きかったことと思います。
 芸術はイメージが大切です。そのイメージは本物を見ることです。感動することです。感動はみる(・・)ことです。目だけでなく、五感でみるのです。 材質感の表現は感触で、美味しい果物は味覚で、牡丹の香りは嗅覚で、滝の表現は聴覚でみることも大切です。
 水墨画の表現に正解はありません。どう表現してもいいのです。ただし、その作品を見てくれる人がどう評価してくれるかです。
 まずは自分が感動することです。その感動を表現するのです。そのためには、本物を見ることです。見たいと思って見ることです。

    注; 文中の(  )はルビです。



【今月の例句】
画家去りて白樺のこる秋深し 大島民郎
(がかさりてしらかばのこるあきふかし おおしまたみろう)

 
【十月の季語】
@時候 じゅうがつ(十月)あきのくれ(秋の暮)
A天文 あきばれ(秋晴)あきのそら(秋の空)あきかぜ(秋風)あきのこえ(秋の声)
B生活 しゅうし(秋思)うんどうかい(運動会)かかし(案山子)しんまい(新米)きくにんぎょう(菊人形)
C地理 あきのやま(秋の山)おとしみず(落し水)あきのかわ(秋の川)あきのた(秋の田)
D植物 はつもみじ(初紅葉)いね(稲)きのこ(茸)かき(柿)りんご(林檎)あおみかん(青蜜柑)やまぶどう(山葡萄)きく(菊)
E動物 いなすずめ(稲雀)もず(鵙)ことりくる(小鳥来る)きつつき(啄木鳥)わたりどり(渡り鳥)
F行事 (すじゅうき)素十忌きょらいき(去来忌)あきまつり(秋祭)


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

 切り過ぎし髪の中まで秋の風 朝倉和江
 (きりすぎしかみのなかまであきのかぜ あさくらかずえ)


【俳句歳時記】

季語109:そてつのみ(蘇鉄の実)植物・秋
雌花が熟すと外皮が朱紅色の実を結ぶ。

 水軍の島にころがる蘇鉄の実 林 晴美

季語110:きくにんぎょう(菊人形)生活・秋
菊の花や葉を使った人形です。武士などその細工にみとれます。

 菊人形莟ばかりの青ごろも 能村登四郎


【選句コーナー】

フラガールさん選

〇台風の時刻くるわず進みゆく  イムさん
〇突としてまた鳴きはじむ法師蝉  まさじ
〇秋の雲一番星を隠し得ず  真帆

  イムさん選

〇法師蝉いま最長の声やみぬ  まさじ
〇天網を逃れて鰯雲の穴  真帆

まさじ選

〇この一夜台風の音と付き合へり イムさん
一人暮らしであればことのほかです。夜通過する台風の音に不安がつのります。

〇天網を逃れて鰯雲の穴  真帆
鰯雲の穴とは空に広がった鰯雲のなかに鰯雲が途切れた部分が。天網を逃れてと捉えて妙。

真帆選

〇台風の端といへどもうなり出づ  イムさん
台風が来るのは困りものですが、被害を避けるためにも、ついついテレビに見入ってしまいます。天気図ではまだ端がかかっただけなのに、風のうなりが不気味に聞こえ始めています。

〇この辺りよく鳴くところ法師蝉  まさじ
毎日通る道ですが、条件はあまり変わらなそうなのに何故かそこだけ蝉の声が濃く強く聞こえるスポットがあるのですね。確かにそんな場所があって、そろそろかなとソワソワしたりします。


【投句コーナー】

望月の裸眼に収め得て遠し   イムさん
脳裏より月の兎の影消ゆる   イムさん
こころまだ月の兎の餅供ゆ   イムさん

実り田の畦の直線曼珠沙華 まさじ
秋風やこの一瞬の牧に立つ まさじ
乳牛の荒き鼻息秋の風 まさじ

読みかけの本を閉じれば秋の風 真帆
惜しむ如テンポの弛む虫の声 真帆
栗おこは午前の競技終へし子に 真帆




解答&今月の俳句はこちらからどうぞ
ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(13)
11月:季語の話 (時雨/天文)

 時雨(しぐれ)は天文に分類され冬の季語で初冬のころに降る雨です。初時雨と言えばその冬初めて降る時雨のこと。朝時雨、夕時雨、小夜時雨、北時雨、村時雨、片時雨など。時間や場所などで使い分けるのですね。
 冬以外ではどうでしょうか?春は春時雨、秋は秋時雨として使います。では夏はどうでしょうか?夕立がありました。雨であっても季節で違う雨の呼び名です。日本語は美しいですね。


【今月の例句】
冬の旅薄き紅茶にレモン浮く 栗田やすし
(ふゆのたびうすきこうちゃにれもんうく くりたやすし)

 
【十一月の季語】
@時候 じゅういちがつ(十一月)かんなづき(神無月)ふゆめく(冬めく)
A天文 はつしぐれ(初時雨)ふゆうらら(冬麗)
B生活 だいこんあらふ(大根洗ふ)だいこんひき(大根引)だいこんほす(大根干す)
C地理 かれの(枯野)はつしも(初霜)ふゆた(冬田)
D植物 さざんか(山茶花)ちゃのはな(茶の花)だいこん(大根)おちば(落葉)
E動物 たか(鷹)わたむし(綿虫)わし(鷲)
F行事 ぶんかのひ(文化の日)とりのいち(酉の市)


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

 青竹を磨いて阿蘇の冬構 能村登四郎
 (あおだけをみがいてあそのふゆがまへ のむらとしろう)


【俳句歳時記】

季語111:だいこんひき(大根引)生活・冬
大根をひきぬき収穫すること。

 大根引き大根で道を教へけり 小林一茶

季語112:りっとう(立冬)時候・冬
二十四節気の一つ。11月7日頃。

 捨て難き書に表紙無く冬迎ふ 林 翔


【選句コーナー】

フラガールさん選

○こころまだ月の兎の餅供ゆ イムさん
○実り田の畦の直線曼珠沙華 まさじ
○読みかけの本を閉じれば秋の風 真帆

  イムさん選

○実り田の畦の直線曼珠沙華 まさじ
○惜しむ如テンポの弛む虫の声 真帆

まさじ選

〇望月の裸眼に収め得て遠し   イムさん
望月は十五夜。今年はお天気にめぐまれて美しいお月様でした。作品はその月を仰いで月に見とれたことを「裸眼に収め得て」と表現。人は望月に心寄せるも切なく遠い存在なのですね。

〇栗おこは午前の競技終へし子に 真帆
季節の栗おこは。昼食に準備され午前の競技が終わると早速食事です。運動の後で美味しさも格別だろうなあと思います。子どもさんは何年生でしょうか?お母さんの笑顔も想像してしまいます♪

真帆選

〇望月の裸眼に収め得て遠し   イムさん
「裸眼」とあえて表現されているので、ひょっとしたら普段は眼鏡などで矯正しているのかもしれません。月が美しくて輪郭もはっきりと見ることができたのですね。見えるのに遠いというところに作者の思いが込められています。

〇乳牛の荒き鼻息秋の風 まさじ
きっちりとした写生の句だと思いました。季語の斡旋により、対象がぐっと生き生きと読み手に引き付けられています。

【投句コーナー】は今回はお休みします。

「ジュニアの俳句教室」は児童、生徒の皆さんの作品を待っています。初めて作った俳句大歓迎です。 
    秋桜少年少女何を詠む まさじ




解答&今月の俳句はこちらからどうぞ
ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(14)
12月:季語の話 (鶴/動物)

鹿児島県出水市には毎年10月中旬にツルが飛来して翌年1月下旬から北帰行が始まる。今季もナベヅル1羽の初飛来が10月17日観測され、24季連続の万羽ヅルとなった。県ツル保護会ほか地元の学校のツルクラブ総勢100名が朝の塒(ねぐら)を飛び立つツルをカウントする。11月21日の2回目の調査で15390羽。ナベヅルが全体の96%、マナヅルが3%、ほかクロヅル、カナダヅル、アネハヅル、ナベクロヅルだ。  「鶴来る」は秋の季語、「鶴」は冬の季語、「鶴帰る」は春の季語。出水で越冬するツルはシベリアの繁殖地へ帰る3月までの約5ヶ月以上を観察できる。北海道で見る丹頂ヅルとは違う数の多さに驚く。
舞ひ降りし力余りて鶴跳べり 下山宏子


【今月の例句】
銀河澄み夜渡る鶴を野に下ろす 橋本鶏二
(ぎんがすみよわたるつるをのにおろす はしもとけいじ)

 
【十二月の季語】
@時候 じゅうにがつ(十二月)かんぱ(寒波)たんじつ(短日)ふゆのひ(冬の日)さむし(寒し)
A天文 ふゆのくも(冬の雲)ふゆのそら(冬の空)ふゆのらい(冬の雷)
B生活 かじ(火事)いきしろし(息白し)せいたあ(セーター)きぶくれ(着ぶくれ)
C地理 ふゆのみず(冬の水)ふゆのかわ(冬の川)ふゆのうみ(冬の海)ふゆのなみ(冬の波)
D植物 ふゆがれ(冬枯)ふゆき(冬木)ぽいんせちあ(ポインセチア)
E動物 ふゆのとり(冬の鳥)ふくろう(梟)つる(鶴)おしどり(鴛鴦)かも(鴨)
F行事 かぐら(神楽)としどん(トシドン)


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

恵方とす畦の直線上に鶴 大岳水一路
 (えほうとすあぜのちょくせんじょうにつる おおたけすいいちろ)


【俳句歳時記】

季語113:さとかぐら(里神楽)行事・冬
宮廷以外の諸社で奉納する神楽です。

 四つ脚の大蛇出てきし里神楽 田淵定人

季語114:はつゆき(初雪)天文・冬
冬になって初めて降る雪のこと。

 はじめての雪闇に降り闇にやむ 野澤節子


【トシドンと新春の俳句募集】

「トシドン」と「新春」の俳句を募集します!

新しい年に多くの作品を待っています。 作品の締切は1月3日、投句は一人3作品まで。よろしくお願いします。 窓口を開設します。 こちらのフォームからどうぞ。

 
「ジュニアの俳句教室」は児童、生徒の皆さんの作品を待っています。初めて作った俳句大歓迎です。 
  




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ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(15)
1月:季語の話 (トシドン/行事)

トシドンは鹿児島県の下甑島に伝承の大晦日の行事です。幼い子どもの成長を願い各集落で行われます。私もトシドンの来訪を受けました。 1960(昭和35)年は6歳。家族揃って囲炉裏端でトシドンの来るのを待ったのです。記憶はうすれていますが「親の言うことは聞いているか、手伝いはしているか」などとその一年間の行いを聞かれたと思います。 トシドンさまはよく日頃の行いを知っていました。悪いところは直すことを約束して最後にトシドン餅をもらいました。(まさじ)

俳句の情景(375)より

トシドンに泣きべそかきし吾を思ふ 山下雅司

下甑島で伝承の「トシドン」。大晦日の行事。夜、幼い子どもの家に来てその年の行いを問いただす。掲句はユネスコの無形文化遺産に登録された2009年のもの。


【トシドンの俳句】

コロナ禍でトシドンさまも影うすく 金剛
トシドンに会いに帰ってゆくならむ イムさん
トシドンの子に泣かれてはひるみ入る イムさん
トシドンの潮音の闇に吠えてみる イムさん
トシドンのおらるる島へ初渡船 まさじ
トシドンは島の子のため去年今年 まさじ
トシドンに背中押されてコロナ禍も まさじ
トシドンを待つや動かぬ星を見て 真帆
トシドンに諭されし癖今もなほ 真帆
トシドンのいはれを吾子に話す夜 真帆


【新春の俳句】

新聞受け常の音してお元日 くみこさん
神木の根方に猫や初日影 くみこさん
初日さす最前線に夫送る くみこさん
どつと来てどつと飛び去る冬の鳥 まもるさん
元日や幾度誓ひをたてたかな まもるさん
せせらぎの声も明るし春隣 まもるさん
コロナ禍も普段のこころ来訪神 まさじ
島の子の新聞手書き去年今年 まさじ
元日のネット犇めくネットの輪 まさじ
初夢や厨にははの我を呼ぶ 真帆
オウムカフェより初声のかまびすし 真帆
声出して百まで数ふ初湯かな 真帆


【今月の例句】
かの歌は譲れじと待つ歌留多取り 緑川美世子
(かのうたはゆずれじとまつかるたとり みどりかわみせこ)

 
【一月の季語】
@時候 いちがつ(一月)こおる(凍る)ふゆふかし(冬深し)さんかんしおん(三寒四温)
A天文 はつひ(初日)ふぶき(吹雪)あられ(霰)ゆきばれ(雪晴)
B生活 がじょう(賀状)はがため(歯固)はつしゃしん(初写真)はつりょう(初漁)かじかむ(悴む)しもやけ(霜焼)
C地理 はつげしき(初景色)かんのみず(寒の水)いてだき(凍滝)
D植物 ゆづりは(楪)ふくじゅそう(福寿草)せんりょう(千両)まんりょう(万両)ふゆすみれ(冬菫)すいせん(水仙)そうばい(早梅)
E動物 はつとり(初鶏)かんぶり(寒鰤)かんごい(寒鯉)
F行事 はつもうで(初詣)とうかえびす(十日戎)


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

お元日誰も歩かぬ空がある 大元祐子
(おがんじつだれもあるかぬそらがある おおもとゆうこ)


【俳句歳時記】

季語115:ゆきばれ(雪晴)天文・冬
雪の降った翌朝のまばゆいほどの快晴です。

雪晴の空に浅間の煙かな 高浜虚子

季語116:かんたまご(寒卵)生活・冬
寒中の鶏卵。この季節は滋養にとんでいる。

寒卵二つ置きたり相寄らず 細見綾子


【バレンタインの俳句募集】

今年もバレンタインの俳句を募集します。ご投稿をよろしくお願いします!

季語:バレンタイン(バレンタインデー)
投句:一人3作品まで
締切:令和3年2月16日(火)
発表:令和3年3月中旬
※投句はペンネームも可。

窓口を開設します。 こちらのフォームからどうぞ。

 
「ジュニアの俳句教室」は児童、生徒の皆さんの作品を待っています。 
  




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ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(16)
2月:季語の話 (野焼/生活)

野焼きは春先に行われる。阿蘇の野焼きは壮大だそうだ。歳時記には害虫や草の生育をよくするために野の枯草を焼くとある。 わが故郷でも昔見たことがあったが近年はない。野山に咲く草花の肥料にもなったであろう。農業林業が衰退しては日本の国土は痩せたものになる。この季語の重さを噛みしめたい。野焼は生活だが焼野は地理。

草千里野焼きはじまる旅ゆくよ 佐々木母屋
野火消えてなほ落着かぬ牧の牛 小野寺よしお



【トシドンと新春の俳句選】

《トシドンの俳句》

イムさん選

コロナ禍でトシドンさまも影うすく 金剛
トシドンは島の子のため去年今年 まさじ
トシドンを待つや動かぬ星を見て 真帆

まさじ選

コロナ禍でトシドンさまも影うすく 金剛
コロナ禍は生活に大きな変化をもたらしました。これまで人に接触することは親しみを表す手段でした。現状は近づき過ぎたらいけないと遠巻きに歩く人もいます。そんな中でトシドンの行事も影響を受けて出来なかったことを「影うすく」とされたのでしょう。自然と共存する人間社会であります。一人一人がルールを守り生活してゆくことがトシドンさまの教えでもあります。

トシドンの子に泣かれてはひるみ入る イムさん
トシドンさまも子どもになかれてはこまりました。「子になかれては」の通りですね。ひるみ入るという言葉に感動しています。子どもがひるむばかりではありません。トシドンさまもひるむのです。温かい交流がみえてきます。

トシドンのいはれを吾子に話す夜 真帆
トシドンさまは大晦日の夜にやって来ます。今日のように車もない時代、家族みんなで囲炉裏を囲んでの島の生活でした。時代は変化しても子どもへの愛情は変わりません。親心を代弁するトシドンさまは地域の結いの証です。

真帆選

コロナ禍でトシドンさまも影うすく 金剛
感染症対策による日常生活や経済活動への影響は色濃い。行事そのものにも様々な制限があり大変なことだろう。それでも伝統は絶やすことなく受け継いでいきたい。神様を応援したくなる一句。

トシドンの子に泣かれてはひるみ入る イムさん
トシドンのちょっと困った様子がユーモラス。それと同時に子どもたちの姿に愛しさを感じる。昨今では、子どもを出来るだけ泣かないように育てているのか泣き声を聞く機会は日常から消えつつある。育児中の親は周囲から「子どもは泣くのが仕事」などと慰められたものだが。

トシドンは島の子のため去年今年 まさじ
トシドンに叱られることも、トシドンの慣習を守るのも、島の子のため。去年今年という一年の節目であると同時に次の年との懸け橋でもある季語の特長がよく生かされていると思った。


《新春の俳句》
各投句者ごと3作品からの一句選です

くみこさん選

どつと来てどつと飛び去る冬の鳥 まもるさん
島の子の新聞手書き去年今年 まさじ
声出して百まで数ふ初湯かな 真帆

まもるさん選

新聞受け常の音してお元日 くみこさん
島の子の新聞手書き去年今年 まさじ
声出して百まで数ふ初湯かな 真帆

イムさん選

新聞受け常の音してお元日 くみこさん
どつと来てどつと飛び去る冬の鳥 まもるさん
元日のネット犇めくネットの輪 まさじ
初夢や厨にははの我を呼ぶ 真帆

まさじ選

新聞受け常の音してお元日 くみこさん
どつと来てどつと飛び去る冬の鳥 まもるさん
声出して百まで数ふ初湯かな 真帆

真帆選

神木の根方に猫や初日影 くみこさん
どつと来てどつと飛び去る冬の鳥 まもるさん
コロナ禍も普段のこころ来訪神 まさじ


【今月の例句】
凍返りがらんと夜の古本屋 石塚友二
(いてかえりがらんとよるのふるほんや いしづかともじ)

 
【二月の季語】
@時候 にがつ(二月)りっしゅん(立春)はるめく(春めく)はるさむ(春寒)
A天文 はるしぐれ(春時雨)
B生活 このみうう(木の実植う)
C地理 やけの(焼野)
D植物 すぐろのすすき(末黒野の芒)ねこやなぎ(猫柳)かたくりのはな(片栗の花)ひなぎく(雛菊)しゅんぎく(春菊)うめ(梅)
E動物 うぐいす(鶯)
F行事 はるまつり(春祭)


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

阿蘇の天野焼の業火立てりけり 中間秀幸
(あそのてんのやきのごうかたてりけり なかまひでゆき)


【俳句歳時記】

季語117:りっしゅん(立春)時候・春
節分の翌日が立春です。厳しい冬から暖かい春の到来。

春立つや静かに鶴の一歩より 黒柳召波

季語118:はるいちばん(春一番)天文・春
春になって最初に吹く強い南風です。

春一番染屋に乾く大漁旗 柴田寛石


【バレンタインの俳句募集】

今年もバレンタインの俳句を募集します。ご投稿をよろしくお願いします!

季語:バレンタイン(バレンタインデー)
投句:一人3作品まで
締切:令和3年2月16日(火)
発表:令和3年3月中旬
※投句はペンネームも可。

窓口を開設します。 こちらのフォームからどうぞ。

 
「ジュニアの俳句教室」は児童、生徒の皆さんの作品を待っています。 
  




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ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(17)
3月:季語の話 (バレンタインデー/行事)

バレンタインはキリスト教司祭の名前「ヴァレンティヌス」のことです。2月14日は殉教を記念する日となっています。バレンタインデーは愛の日と言われるように愛する人や家族のことを思い愛を誓う日となりました。戦争のない平和な世界を願うのはどこの国も同じです。日本ではバレンタインチョコを贈り、三月にはホワイトデーのお返しが定着しています。



【バレンタインの俳句発表】

味噌を買ひバレンタインのチョコを買ふ   くみこさん
春の雪ワッフルにチョコたつぷりと     くみこさん
捨てがたき箱のあれこれバレンタイン    くみこさん

愛の日や父の机にチョコレート       まもるさん
ぎこちなく手渡すチョコやバレンタイン   まもるさん
バレンタインデーチョコを携ふ八十路かな  まもるさん

バレンタインチョコの焦げ目にハート書く  イムさん
言葉には出来ない愛を求愛日        イムさん
バレンタイン忘れた愛を思い出す      イムさん

挨拶に勝るものなしバレンタイン      まさじ
バレンタイン一晩にして開く花       まさじ
愛の日や愛のハガキと贈り物        まさじ

メールてふ距離感バレンタインの日     真帆
バレンタインチョコ届くや空は荒模様    真帆
愛の日や布張りの箱華やかに        真帆


【今月の例句】
春障子引けば明るき海ありぬ 山崎ひさを
(はるしょうじひけばあかるきうみありぬ やまざきひさを)

 
【三月の季語】
@時候 さんがつ(三月)けいちつ(啓蟄)
A天文 こち(東風)はるあらし(春嵐)とりぐもり(鳥曇)
B生活 はるのふく(春の服)しじみじる(蜆汁)そつぎょう(卒業)
C地理 はるのやま(春の山)やまわらう(山笑う)みずぬるむ(水温む)はるのかわ(春の川)
D植物 しだれざくら(枝垂桜)くさのめ(草の芽)つくし(土筆)わらび(蕨)ぜんまい(薇)
E動物 はつちょう(初蝶)つばめ(燕)ひばり(雲雀)とりかえる(鳥帰る)
F行事 ひなまつり(雛祭)ひがんえ(彼岸会)


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )


【俳句鑑賞】
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

野遊や肘つく草の日の匂ひ 大須賀乙字
(のあそびやひじつくくさのひのにおひ おおすがおつじ)


【俳句歳時記】

季語119:はるのの(春の野)地理・春
春の野原は草が萌え出し気持ちいい。

春の野の水とろとろと沼に入る 今井杏太郎

季語120:あさり(浅蜊)動物・春
淡水の少し混じった浅海の砂に棲息する。

浅蜊に水いつぱい張つて熟睡す 菖蒲あや


【お知らせとお願い】

次回はバレンタインの俳句選を掲載予定です。作者ごとに一句を選んでください。出来れば寸評もお願いします。


「ジュニアの俳句教室」は児童、生徒の皆さんの作品を待っています。 

   ※コロナ禍につき春のミニ吟行は中止します。





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