山下雅司さんの小学校低学年と保護者向けの俳句入門は、「あすなろ俳句教室」「おやこの俳句教室」として当サイトに長年連載してきました。
このたび十五周年を記念して、タイトルを含めてリニューアルします。今まで通り、小学生の皆さんに俳句を楽しんでもらいたいのと同時に、これから俳句を始めるおとなの皆さんにも読んでいただけたら嬉しいです。
今までの入門講座は入門のページのリンクからどうぞ。



ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(1)
11月:俳句歳時記に学ぶ

 作句は歳時記にある例句に学ぶことが大切です。どんな場面をどんなふうに俳句にしているか。俳句歳時記には作句のヒントがいっぱいです。

しぐるるや駅に西口東口 安住 敦
(しぐるるやえきににしぐちひがしぐち あずみあつし)

 この作品の季語は時雨(しぐれ)です。一度聞いただけで誰もが覚えるでしょう。難しい言葉はありません。俳句の切字の「や」で強調されています。あわただしい駅の人の動きも見えてくるようです。「しぐるる」で季節感が読み手に伝わってきます。


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )
 
十一月の季語
@時候 じゅういちがつ(十一月)かんなづき(神無月)ふゆめく(冬めく)こはる(小春)
A天文 はつしぐれ(初時雨)こがらし(凩)
B生活 しちごさん(七五三)しんのり(新海苔)だいこんあらう(大根洗ふ)
C地理 かれの(枯野)はつしも(初霜)ふゆた(冬田)
D植物 ちゃのはな(茶の花)さざんか(山茶花)だいこん(大根)ふゆもみぢ(冬紅葉)
E動物 たか(鷹)はやぶさ(隼)いたち(鼬)わし(鷲)わたむし(綿虫)ふゆいなご(冬蝗)
F行事 おはらまつり(おはら祭)だるまき(達磨忌)ばしょうき(芭蕉忌)

大根は植物。大根洗ふ、大根引き、大根干すは生活。大根そのものと人為的な違いで分かります。例句を挙げてみましょう。

流れ行く大根の葉の早さかな  高浜虚子
大根負ふ腰入れ直し荒磯道   岸田稚魚

富士見ゆる日和続きて大根引く 津田美代子
夕月に大根洗ふ流しかな    正岡子規


◇俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

末枯れて鶴の塒のはじまれり 山下雅司
(うらがれてつるのねぐらのはじまれり やましたまさじ)



[俳句歳時記]

季語87:きりぼし(切干)生活・冬
大根を細く薄く切って乾燥したもの。棚や筵に広げて天日に干します。

不揃ひの切干母のぬくみあり 武内和子

季語88:おちば(落葉)植物・冬
落葉樹は晩秋から冬に葉を落とします。その落ち葉です。枯葉は木の枯れた葉。

落葉積む竪穴式の住居跡 上山和子
解答&今月の俳句はこちらからどうぞ



ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(2)
12月:クリスマス

12月が近くなると街中にクリスマスツリーの飾りがいっぱいです。皆さんの家でも小さな飾りがあるかもしれません。
今回は、「先生と子どもたちの学校俳句歳時記」学芸みらい社より小学生のクリスマスの俳句を取り上げてみます。氏名は省略し学年のみ掲載します。
@クリスマスサンタは誰か確かめたい(小4)
A弟はサンタが親と気づかない(小6)
Bクリスマスすこしまぶしい家の中(小6)

作品Aは弟は気づかないとありますから女の子と分かります。お姉さんが弟を思う気持ちです。サンタさんが夢を運んできてくれます。
作品@とBは男の子の作品です。力強い気持ちが言葉に表れています。Bは家の中が少しだけまぶしいと、クリスマスの雰囲気が出ています。
学年ごとにとても好感が持てる作品です。俳句は自分らしさが大事。今年のクリスマスに世界に一つだけの俳句を作ってみましょう!


♪今月の例句♪

塔の上の鐘動き鳴るクリスマス 松本たかし
(とうのえのかねうごきなるくりすます まつもとたかし)


ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )
 
◇十二月の季語

@時候 じゅうにがつ(十二月)ふゆのひ(冬の日)ふゆのくれ(冬の暮)くれはやし(暮早し)
A天文 ふゆぎり(冬霧)ふゆのくも(冬の雲)ふゆのつき(冬の月)ふゆのほし(冬の星)ゆきもよい(雪催)きたかぜ(北風)
B生活 ふろふき(風呂吹)ふとん(蒲団)ふところで(懐手)たきび(焚火)すとおぶ(ストーブ)かぜ(風邪)せき(咳)もうふ(毛布)
C地理 ふゆた(冬田)ふゆのうみ(冬の海)ふゆのなみ(冬の波)やまねむる(山眠る)ふゆの(冬野)
D植物 かれき(枯木)ふゆき(冬木)かれぎく(枯菊)みかん(蜜柑)ねぎ(葱)ふゆな(冬菜)
E動物 つる(鶴)かも(鴨)はくちょう(白鳥)みずとり(水鳥)ちどり(千鳥)
F行事 かぐら(神楽)せいそんき(青邨忌)くりすます(クリスマス)としどん(トシドン)


◇俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

冬籠はばたくやうに書物落つ 緑川美世子
(ふゆごもりはばたくようにしょもつおつ みどりかわみせこ)


【俳句歳時記】

季語89:ふゆひばり(冬雲雀)動物・冬
野原の草むらに巣を作り冬を越すひばり。冬の暖かい日に見ることがあります。

冬ひばり子等が汐木を拾ひ溜む 山田桃晃

季語90:ふゆのやま(冬の山)地理・冬
冬の山は枯れはてて眠るようです。

めぐり来る雨に音なし冬の山 与謝蕪村


【トシドンと新春の俳句募集】
 一月はトシドンと新春の俳句を掲載します。新しい年に多くの作品を待っています。
作品の締切は1月5日、一人3作品をご投稿ください。よろしくお願いします。
窓口を開設します。←締め切りました。



解答&今月の俳句はこちらからどうぞ
ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(3)
1月:トシドンの俳句 新春の俳句

【トシドンの俳句】
果てしない宇宙空間ひと晩で 金剛

トシドンを運んでくるよ波頭 イムさん
トシドンに謝ってくれるお父さん イムさん
トシドンが怖くなくなるいつの日か イムさん

トシドンのその一言の低き声 まさじ
トシドンや吾れも幼き日のありて まさじ
トシドンはどの家に来る子を探す まさじ

トシドンに告ぐべきあまた我が身にも 真帆
トシドンを待つ家々に灯の明し 真帆

【新春の俳句】
海光に遠く晴れ着の姿立つ イムさん
潮鳴を越え来し顔の成人す イムさん
藤壺の洗われつぎて年新 イムさん

竜宮の海がつながる初日の出 まさじ
初鴉自在の羽根を使ひとぶ まさじ
元日や鳥のこゑさへ清々し まさじ

陽の当る場所に移りて年用意 真帆
石蹴りて影を転がす恵方道 真帆
初富士をかなたに泛かべ古戦址 真帆


♪トシドンの一句鑑賞♪

トシドンは親の代弁子を諭す 山下邦英
(としどんはおやのだいべんこをさとす やましたほうえい)

 トシドンは下甑島の行事で12月31日夜、3〜8歳までの家を回って親の代わりに一年間の行いを聞きます。まさに子を諭すの通りです。親になって知る親のありがたさ。トシドンは時代をこえて生き続けています。第一回トシドンの俳句より。(まさじ)

ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )

 
◇一月の季語

@時候 いちがつ(一月)がんじつ(元日)がんたん(元旦)
A天文 はつひ(初日)はつあかり(初明り)はつぞら(初空)
B生活 はつにっき(初日記)かどまつ(門松)はがため(歯固)こま(独楽)
C地理 はつげしき(初景色)
D植物 せんりょう(千両)まんりょう(万両)かんつばき(寒椿)わかな(若菜)ふゆきく(冬菊)
E動物 はつがらす(初鴉)かんすずめ(寒雀)
F行事 でぞめしき(出初め式)


◇俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

バレまいとトシドンさまの後ずさり 宮野金剛
(ばれまいととしどんさまのあとずさり みやのかねのり)


【俳句歳時記】

季語91:おかざり(お飾)生活・新年
注連(しめ)飾りなど新年の飾り物のことです。

輪飾りにしめきってある小門かな 正岡子規

季語92:はつだより(初便)生活・新年
新年の発信も受信もうれしいものです。

初便り朱欒その他の荷の遅れ 福永耕二





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ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(4)
2月:トシドンと新春俳句の選評


(イムさん選評)

トシドンのその一言の低き声 まさじ
声の低さは揺るぎない大人の威力。子供たちにとって未来からの完熟の声は重厚と畏敬・脅威を覚えさせることでしょう。

竜宮の海がつながる初日の出 まさじ
竜宮の海を初日の出がつないでくれたのですね。そんな時間と空間を越えてつなぐ初日の出がすばらしいですね。

石蹴りて影を転がす恵方道 真帆
物は影を持っていることことをあらためて認識させ、時にはその影自体が主役になって受け止められ、蹴とばしても払えない心の影として面白いですね。


(まさじ選評)

果てしない宇宙空間ひと晩で 金剛
作者からの葉書には下野敏見先生の「宇宙神」の新説にちなんで作ったとあります。トシドンは正にひと晩。果てしない宇宙空間。

トシドンに謝ってくれるお父さん イムさん
お父さんが子に代わり、もう悪いことはしませんと言ったのだろうか。はじめてのトシドンにこわばる子供。次はしっかりと返事できるようにと。

トシドンを待つ家々に灯の明し 真帆
トシドンの来る晩は暗闇に包まれています。トシドンさまがもうすぐ来ます。浦里の家々の灯りがひときわ明るい。

潮鳴を越え来し顔の成人す イムさん
成人の日を迎えます。その顔は凛として立派です。潮鳴を越え来し顔と表現されて想像がふくらみます。

石蹴りて影を転がす恵方道 真帆
足下の石を蹴る。その石の影を転がす。その連続を描写しての恵方道。影を転がして前に進むのです。よき年になりますように、人間の祈りです。


(真帆選評)

果てしない宇宙空間ひと晩で 金剛
この「ひと晩」が年越しの一夜であることがはっきりするとトシドンとの関連も読み手にわかりやすくなるかと思いますので、是非季語を工夫してみてください。宇宙空間と伝承の行事との取り合わせが哲学的と思いました。

トシドンに謝ってくれるお父さん イムさん
お父さんは、私の良いところもわかってくれていますから、トシドンを前に恐縮して(ひょっとしたら泣いて)いる子をつい、かばいたくなってしまうのですね。優しく頼もしいお父様です。

トシドンや吾れも幼き日のありて まさじ
いざ諭す側になってみると、子供達の様子にかつての自分を重ねあわせて愛おしく思えるのでしょう。どんな少年時代を過ごされたのか想像が膨らみます。

潮鳴を越え来し顔の成人す イムさん
我が家にも、今年成人を迎えた息子がいます。この句の主人公は逞しい表情をしていますが、我が子は都市近郊でのほほんとこの齢を迎えた様に見えます。それでも彼なりに色々な出来事を乗り越えてきたのでしょうね。

竜宮の海がつながる初日の出 まさじ
キラキラと初日を受けて輝く波の底に竜宮を見ている作者。不思議なひろがりのある句です。



♪今月の例句♪

受験期の梅がよそよそしく匂ふ   瀧 春一
(じゅけんきのうめがよそよそしくにおう  たきしゅんいち)



ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )

 
◇二月の季語

@時候 にがつ(二月)せつぶん(節分)はる(春)はるさむ(春寒)
A天文 はるいちばん(春一番)はるかぜ(春風)
B生活 はるのかぜ(春の風邪)のやき(野焼)
C地理 やけやま(焼山)りゅうひょう(流氷)ゆきどけ(雪解)
D植物 のり(海苔)うめ(梅)したもえ(下萌)
E動物 ねこのこい(猫の恋)ゆきむし(雪虫)うぐいす(鶯)
F行事 ばれんたいのひ(バレンタインの日)はつうま(初午)ふきおき(不器男忌)もきちひ(茂吉忌)はるまつり(春祭)


◇俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

眠い目をこする貝母の咲くやうに  守屋明俊
(ねむいめをこするばいものさくように もりやあきとし)


【俳句歳時記】

季語93:はる(春)時候・春
立春から立夏の前日までをいう。

春ひとり槍投げて槍に歩み寄る 能村登四郎

季語94:はるまつり(春祭)行事・春
各地の神社で行われる祭の総称。五穀豊穣を祈願します。

陸奥の海くらく濤たち春祭 柴田白葉女


【バレンタインの俳句募集】

今年もバレンタインの俳句を募集します。募集要項は例年の通りです。よろしくお願いします。

(募集要項)

季語:バレンタイン(バレンタインデー)
投句:一人3作品まで
締切:令和2年2月16日(日)
発表:令和2年3月中旬
※投句はペンネームも可。
ご投句有難うございました。



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ジュニアの俳句教室〜俳句と親しむ四季〜(5)
3月:バレンタインの俳句発表


濃く深く香りたちゆく愛のチョコ イムさん

指先にバレンタインのチョコ熱し イムさん

チョコの香を幾重に包む包装紙 イムさん

委任状記すやバレンタインデー まさじ

メッセージカードはハート愛の日よ まさじ

バレンタインのチョコもらひ報酬も まさじ

社交辞令中止計画バレンタインデー 真帆

バレンタインデーの小さな紙袋 真帆

バレンタインデー憂し小雨など降りだして 真帆



♪今月の例句♪

男来て鍵開けてゐる雛の店 鈴木鷹夫
(おとこきてかぎあけているひなのみせ すずきたかお)



ではここで、今月の季語を使って一句を作ってみましょう。
 作品「                 」
 作者(      )

 
◇三月の季語

@時候 さんがつ(三月)けいちつ(啓蟄)あたたか(暖か)
A天文 しゅんらい(春雷)こち(東風)はるあらし(春嵐)
B生活 たうち(田打)はたうち(畑打)なえきいち(苗木市)いそあそび(磯遊び)
C地理 はるのやま(春の山)みずぬるむ(水温む)やまわらう(山笑う)はるのみず(春の水)
D植物 あぜあおむ(畦青む)くさのめ(草の芽)つくし(土筆)たんぽぽ(蒲公英)
E動物 ひきづる(引鶴)つばめ(燕)ひばり(雲雀)
F行事 ひなまつり(雛祭)さいぎょうき(西行忌)しゅんぶんのひ(春分の日)


◇俳句鑑賞
次の俳句を読んで感じたことを110字程度で書いてみましょう。

受験期の夜や突然にジャズ鳴らし 山崎ひさを
(じゅけんきのよやとつぜんにじゃずならし やまざきひさを)


【俳句歳時記】

季語95:ひなまつり(雛祭)行事・春
桃の節句の三月三日、雛人形を飾りお祝いします。

雛飾り豪華客船出航す 高村信子

季語96:くさのめ(草の芽)植物・春
春に萌え出す草の芽のすべてをいいます。

甘草の芽のとびとびのひとならび 高野素十


【お知らせ】

次回より投句・選句コーナーを設けます。投句は3句、選句は作者ごとに1句選び寸評をお願いします。4月の選句はバレンタインの作品から一句選と寸評をお願いします。



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