山下雅司さんからいただいた句稿です。4日間の北海道旅行の間に百句!
その熱意をお伝えしたくて(真帆選でというお話でしたが)全句掲載させていただきました。真帆の小文はこちらからどうぞ!

北海道の旅 “一日目 札幌へ” “二日目 札幌〜小樽〜帯広” “三日目 帯広〜釧路” “四日目 釧路”
北海道の旅   山下雅司  <2005年10月7日〜10日>
  一日目 札幌へ

これよりは旅人となる秋の空
句集ひとつ携へて行く秋の旅
来寄ったといふ言葉あり里も秋
土産とす薩摩芋パイ新焼酎
色鳥や旅はジーンズ身軽にて
搭乗券ポケットに入れ秋の旅

時計台寒々釣瓶落としかな
旅の秋友に電話すなつかしや
ビアホール烏合解け合ふ秋の夜
すすき野や名刺に一句温め酒

  二日目 札幌〜小樽〜帯広

星置といふ駅通る寒露かな
星見駅より直線の秋の雲
銭函駅過ぎて大海秋うらら
瀬に鴎群れて戯れ秋の波
朝里駅またとなき名よ寒露の
日 湖と違へるほどの秋の海
朝日さすここ日本海秋の朝
晴れわたる鴎群れなす旅の秋
秋麗や青き湖さながらに
オルゴール買ふ音確か寒露の日
聴き分ける花のワルツや旅の秋
硝子細工みごと手にする寒露の日
七竈の実小樽運河の風わたる

寒露の日運河に風雨瞬くに
夢の世の音ある街ぞ秋のこゑ
列車待つ南小樽駅寒露の日
寒露の日大荒れ電車不通にも
突風の旅も道連れ寒露の日
かもめ飛ぶ北の岬の冬気配
七竈の実二十八年ぶりの顔
化け物と返答のあり秋あはれ
短くも交はす言葉の身に沁むや
病室に見舞ふ旅人よななかまど

  三日目 帯広〜釧路

帯広の朝爽やかに散策す
ラベンダー植え込みのあり駐
車場 しなの木は太くなる木よ秋の空
しなの木の葉が落ちてゐる秋の朝
ひまわりの花の出迎へ旅の秋
街路樹の名は知らずして秋の朝
朝早きクリーニング屋やや寒や

時知らず遡りては秋深く
秋天やワイン城よりなほ高く
信号は縦長秋の十勝晴れ
広大な道路一直線の秋
旅ゆけば北海道のすすきかな
阿寒湖を遥かに望む花すすき
製糖工場休止色なき風ばかり
ラベンダー通りを埋めて美しや
七竈の実本別の駅美しく
ひまわりの畠の肥料と咲きにけり
丸っこい牛舎の見えて秋うらら
観光のガイド流暢なりし秋
広々と十勝平野の秋の雲
足寄にてチーズ買ふ日の秋澄みぬ
阿寒湖へバスより牧の牛のどか
白樺の木立そびらの初紅葉
秋麗や北の大地のどこまでも
牧牛のすすき道行くバスの旅
ラベンダーとびとびにあり北の秋
日当たりて紅葉さながら貴婦人に

牧場のみどりきはまり旅の秋
日の影と薄紅葉のコントラスト
山の端に秋の雲ゆく旅ごころ
傘ほどの蕗大きくて秋うらら
彩りのはじまってきし豆畑
斑なる山の裾野の黄葉す
蝦夷鹿の出てくるやうな秋の旅
蝦夷松の足寄峠の紅葉す
雪虫のとぶころとなる山の色
イヨマンテ祭の話旅の秋
ビンネシリ眦(まなじり)上げて秋高し
秋麗のマリモまつりの中日かな
毬藻みる木の実落つ頃なりにけり
阿寒湖の水音ここちよき秋ぞ
湖に秋思そこそこなる一句
チュウル島にしばらく遊ぶ秋思かな
山粧ふほどはいたらず阿寒富士
湖畔にて絵筆の葉書旅のひと
マリモ棲む湖底の秋も人の世も
みどりなるマリモのいのち秋さびし

湖はきらめく秋の日を浴びて
秋暑し湖畔の紅葉色薄く
このままで薄紅葉なる湖畔かな
阿寒富士望む船より渡り鳥
悠々と草はむ牛や秋の暮
蝦夷鹿の出て山林の日暮かな
阿寒川より釧路川秋の夕暮
丹頂鶴の人工飼育北の秋
丹頂鶴の雛鶴日誌秋日濃し
丹頂鶴の求愛とはのこゑ三つ
丹頂鶴の餌付けの時刻暮早し
秋の夕暮鮭とる川を渡りけり
秋の夕暮歩道の死魚となりにけり
秋冷の信号待ちの長さかな
釧路港倉庫の屋根に群れ鴎
立ち並ぶ倉庫に秋の風わたる
夕日落つ港に満つるかもめ鳥
舫ひ船軋む音して秋のこゑ
釧路川秋のかもめよ日の沈む
啼く鴎飛び行く鴎秋の港

羽根漂ふ秋の夕暮岸壁に
句作する釧路の釣瓶落としかな
落日や秋夕暮れの釧路川
秋冷の幣舞橋の夕日かな
秋の夕暮屋根に群れたる鴎鳥
曳き船に揺られ釧路の秋の暮
秋冷や幣舞橋の夕日影

  四日目 釧路

北の秋屋根埋めつくす鴎鳥
秋の旅囲ひなき家ばかりかな
湿原の板の階段草紅葉
鹿笛にリス出て来たり秋の朝
末枯の釧路湿原眺望す
秋の蝶ゆらり展望台に着き
秋空やパルプ会社の煙立ち
秋冷の和商市場の時しらず
柳葉魚買ふ二串差しを秋の旅
紅鮭の色よきほどの秋深し

イクラ買ふ風味ひとつもよき秋ぞ
秋うらら「釧路湿原」の歌ながれ
新釧路市明日誕生の秋日濃し
秋うらら丹頂鶴を車窓より
丹頂鶴の立ち姿みし秋思かな
湿原の川の幾筋草紅葉
冷房のバスの中より丹頂鶴
一羽なるもまざと丹頂鶴秋の風
橋の名はいくつ北海道の秋
浦幌の蝦夷松の奥秋深し
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